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ノートを書く際には、以下を参考にしています。 新日本古典文学大系『古今和歌集』(岩波書店) 新編日本古典文学全集『古今和歌集』(小学館) 『新版 古今和歌集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)』 Kokinshu, A Collection of Poems Ancient and Modern (Cheng & Tsui) 第四版『全訳読解古語辞典』(三省堂) (随時追加します)
読人しらず 古今和歌集660 #jtanka たぎる川の流れのようにあなたへの思いで激しくわきたっている私の心を、どうして人目が堤防のようにせきとめて邪魔をするのだろうか。 「たぎつ瀬」は「たぎつ+瀬」。「たぎつ」はタ行四段活用の動詞「たぎつ」の連体形で「水が激しく沸き立つように流れる」という意味。「心が激しい思いを抱く」意味にも使われる。「たぎつ瀬の」は「早し」の枕詞。 「なにしかも」は「なにしか+も」。「なにしか」は理由を尋ねる疑問を表す連語で「どうして……なのか
読人しらず 古今和歌集659 #jtanka あなたのことをお慕いしてはおりますが、川の堤のように高い人目に気兼ねしてしまい、そこが川であるとわかっていても高い堤のために渡ることができないように、「そこにあなたがいらっしゃる」とわかっていてもとうてい逢いに行く決心がつかないのです。 「思へども」は「思へ+ども」。「思へ」は動詞「思ふ」の已然形。「ども」は逆接の接続助詞。「思へども」は「思うけれども」の意味。 「人目堤」は「川の堤のように人目がある」こと。「人目を包む(
小野小町(おののこまち) 古今和歌集658 #jtanka 夢の通い路では足を休めることなくあなたのところに通っていますけれど、そのような夢の世界での経験は、現実の世界であなたを一目見たときほどすばらしくはありません。 「夢路」はよく恋の歌に出てくる。ここでは「夢」と「現」を対比している。 「通へども」は「通へ+ども」。「通へ」は動詞「通ふ」の已然形。「ども」は活用語の已然形につき逆接確定条件を表す接続助詞で「……だけれども」の意味。「通へども」は「通うけれども」
小野小町(おののこまち) 古今和歌集657 #jtanka 尽きることのない恋の思いのままに、あの人は夜ならきっと来るでしょう。夢の通い路を通って私のところへ逢いに来ることまでは誰も咎めないでしょうから。 「夜も来む」の「も」は強意の係助詞。「来む」は「来+む」。「来(こ)」はカ変動詞「来(く)」の未然形。「む」は推量の助動詞「む」の終止形。「夜も来む」は「あの人は夜ならきっと来るでしょう」の意味。 カ行変格活用動詞「来(く)」は語幹と活用語尾の区別がない。活用は「こ|
題知らず 小野小町 古今和歌集656 #jtanka 現実ではそういうこともあるでしょうけれど、夢の中でさえも人目を避けるあまり私に逢ってくださらないなんて、何という侘しさ。 「現(うつつ)」は「現実」の意味。「夢」と対比している。 「避く(よく)」は本によっては「守る(もる)」。「人目を避けて逢ってくれない」もしくは「逢っている間も人目を気にしてばかり」。 「さもこそあらめ」は「そのようなこともあるだろうけれど」という意味。「こそ……已然形」は係り結びで、ここでは
読人しらず 古今和歌集641 #jtanka ほととぎすよ。あれは夢だったのか、それとも現実だったのか。朝露が降りるころに起きてあの人と別れた朝に聞いた、おまえの鳴き声は。 「夢か現か(ゆめかうつつか)」の「……か……か」は自分に疑いを持つことを表す表現。「夢だろうか、それとも現実だろうか」の意味。 「朝露のおきて別れし」は「朝露+の+おき+て+別れ+し」。「の」は主語を表す格助詞。「おき」は動詞「おく」の連用形で、ここでは「置き」と「起き」の掛詞。「て」は接続助詞。
題しらず #寵 (うつく) #古今和歌集 640 #jtanka #恋 夜明けの別れが惜しいので、明け方に鳴き始める鳥よりも先に、私の方が泣き始めてしまいました。 「東雲(しののめ)」は、夜明け前の頃。 「別れを惜しみ(をしみ)」は「別れ+を+惜し+み」。「惜し」はシク活用の形容詞「惜し」の終止形。「み」は形容詞の語幹(シク活用の場合には終止形)につく接尾語で「……なので」という意味。「別れを惜しみ」は「別れが惜しいので」という意味。 「ぞ……つる」は係り結び。「ぞ」
読人しらず 古今和歌集637 #jtanka 東の空はしらじらと明けてきて、あなたとわたしはそれぞれの服を着て別れていく。それは、ほんとうに悲しい。 「東雲(しののめ)」は「夜明け」の意味。 「朗ら朗ら(ほがらほがら)と」は次第に夜が明けていく様子を表す副詞。 「明けゆけば」は「明けゆけ+ば」。「明けゆけ」は「明けゆく」の已然形。「ば」は接続助詞。「已然形+ば」は順接確定条件。「明けゆけば」は「明けてゆくので」の意味。 「おのがきぬぎぬなる」は「おの+が+きぬぎぬ
大江千里 古今和歌集193 百人一首23 #jtanka 「千々に」は形容動詞「千々なり」の連用形で「いろいろ、さまざまである」の意味。 「ものこそかなしけれ」は「もの+こそ+かなしけれ」。「もの」は「物事」の意味。「こそ」は係助詞で係り結びを作る。「かなしけれ」は形容詞「かなし」の已然形で「こそ」に対する結び。 「あらねど」は「あら+ね+ど」。「あら」はラ変動詞「あり」の未然形。「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形。「ど」は逆接確定条件の接続助詞。「あらねど」は「……
#凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね) #古今和歌集 #636 #jtanka #恋 「秋の夜は長い」なんて決めつけることはできませんよ。昔から、逢う人によって長くも短くも感じられるのが秋の夜なんですから。 「とも」は「と」を和らげたり含みを持たせたりする連語で「……ということも」の意味。 「思ひぞはてぬ」は「思ひ+ぞ+はて+ぬ」。「思ひ」は動詞「思ふ」の連用形。「ぞ」は係助詞で「思ひはつ」の間に入った。「はて」は補助動詞「はつ」の連用形で「すっかり……してしまう」の意
小野小町(おののこまち) 古今和歌集635 #jtanka あーあ、秋の夜は長いというけれど、それも名ばかりだったのね。ようやく逢えることになって、そして、何事もなく夜が明けてしまったよう! 「名のみ」は「名前だけ、名目だけで実質が伴わない」という意味。 「なりけり」は「なり+けり」。「なり」は断定の助動詞「ぬ」の連用形。「けり」は詠嘆の助動詞「けり」の終止形。「なりけり」は「……だったのだなあ」の意味。ここでの「けり」はいわゆる「気付きの《けり》」で「初めてはっと気
読人しらず 古今和歌集634 #jtanka ずっとずっと恋し続けて、今夜ようやく逢うことができた。逢坂の関にいる木綿付け鳥よ、おまえが鳴いたら私は帰らなければならない。夜が明けてもどうか鳴かないでおくれ。 「恋ひ恋ひて」は「恋ひ恋ひ+て」。「恋ひ恋ひ」は動詞「恋ひ恋ふ」の連用形。「恋ふ」という一つの動詞を重ねると「恋し続ける」という継続の意味になる。「て」は接続助詞。「恋ひ恋ひて」は「恋し続けて」の意味。 「稀に」は形容動詞「稀なり」の連用形で「まれに」「めったにな
読人しらず 古今和歌集631 #jtanka 性懲りもなく、あらぬ恋の噂はまたしても立ってしまうでしょうね。あの人のことを憎からず思ってしまうこの世に私は住んでいるわけですから。 「懲りずまに」は副詞で「性懲りもなく何度も」の意味。「懲りることがないままに」 「無き名」は根拠が定かではない恋愛の噂。「浮き名」と同じ。 「立ちぬべし」は「立ち+ぬ+べし」。「立ち」は動詞「立つ」の連用形。「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形。「べし」は推量の助動詞「べし」の終止形で「……