古今和歌集を読む

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五月来ば鳴きも古りなむほととぎす未だしきほどの声を聞かばや

#伊勢 (いせ) #古今和歌集 138 #jtanka #短歌 #夏 五月が来たならば鳴き声も古びて新鮮味を失ってしまうであろう、ほととぎすよ。そのときになってもまだ未熟で整わず初々しさを持つ歌声を聞きたいものですねえ。 「来ば」は「来(こ)+ば」。「来(こ)」は「来(く)」の未然形。「ば」は仮定の…

人知れぬ思ひのみこそわびしけれわがなげきをば我のみぞ知る

#紀貫之 (きのつらゆき) #古今和歌集 606 #jtanka #短歌 #恋 人知れず燃えるばかりの私の「思ひ」という「火」は本当につらいものです。私の「思ひ」という「火」に投げ込む「投げ木」のような私の嘆きを知っているのはただ私だけなのですよ。 「思ひ」は「火」に掛けています。 「わびしけれ」は…

種しあれば岩にも松は生ひにけり恋をし恋ひば逢はざらめやも

#読人しらず #古今和歌集 512 #jtanka #短歌 #恋 種があるので岩にも松は生えるのです。あなたを恋し続けたならば逢わないなんてことがあるでしょうか。いえ、そんなことはありません。 「種しあれば」の「し」は強意。 「恋をし恋ひば」の「し」は強意。「恋し続ければ」の意味。 「逢はざらめや…

ひと知れず思へばくるし紅のすゑつむ花のいろに出でなむ

#読人しらず #古今和歌集 496 #jtanka #短歌 #恋 人知れず思っているから苦しいのです。紅の末摘花の色のように、私の気持ちも表に出してしまいましょう。 「思へば」は「思へ+ば」。「思へ」はハ行四段活用動詞「思ふ」の已然形。「ば」は接続助詞。ここでは已然形に接続しているので順接の確定条…

行く水に数かくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり

#読人しらず #古今和歌集 522 #jtanka #短歌 #恋 流れていく水に数を書くよりもはかないことは、私のことを思っていないあの人を思うことだなあ。 「数かく」は数を数えるために線を引くこと。 「思ふ」は恋しいと思う気持ち。「人」はわざわざ言わなくてもわかるあの人、恋しい人、思い人のこと。 …

片糸をこなたかなたによりかけてあはずは何を玉の緒にせむ

#読人しらず #古今和歌集 483 #jtanka #短歌 #恋 糸でひもを編むようにあちらこちらに気持ちを動かしてみても、あなたに逢わないとするなら、いったい私は何を命として生きていきましょうか。 「片糸(かたいと)」は、よりあわせる前の細い糸のこと。 「こなた(此方)」は「こちら側」のこと。 …

わが恋を人知るらめやしきたへの枕のみこそ知らば知るらめ

#読人しらず #古今和歌集 504 #jtanka #短歌 #恋 私の恋する気持ちをあの方は知っているでしょうか。いえいえ、知らないでしょう。私の枕だけが、知っているとしたら知っているでしょうね。 「人」はここでは「私が恋しているあの人」の意味。 「知るらめや」は「知る+らめ+や」。「らめ」は推量…

春ごとに花の盛りはありなめど逢ひ見む事はいのちなりけり

題知らず #読人しらず #古今和歌集 07 #jtanka #短歌 #春 春が来るごとに花の盛りはあるだろうけれど、その花に会うというのは自分の命しだいなのだなあ。 花はすぐに散ってしまってはかないとよく言われるものですが、春が来るごとに花のほうはしっかりと見事な花を咲かせます。それに比べて、花を…

春雨の降るは涙か桜花散るを惜しまぬ人しなければ

#大伴黒主 (おおとものくろぬし) #古今和歌集 88 #jtanka #短歌 #春 春の雨が降るのは涙なのでしょうか。桜の花が散るのを惜しまない人などいないのですから。 春の雨が降るのは春が流す涙なのでしょうか。だって、桜の花が散るのを惜しまない人なんていません。誰しもみな、桜の花が散るのを惜し…