
いつとても恋しからずはあらねども秋の夕べはあやしかりけり
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読人しらず 古今和歌集546 #jtanka
どんな季節どんな時間でも人恋しくないというわけじゃないけど、秋の夕暮れとなるとむやみに人恋しくなるのは不思議なものだなあ。
「いつとても」の「とても」は、格助詞の「とて」と係助詞の「も」で、「いつといっても」「いつだって」の意味。
「あやしかりけり」の「けり」は詠嘆を表す助動詞。いわゆる「気付きの《けり》」である。はっと気付いて「ああ、〜だなあ!」と感じること。
「あやしかりけり」は「不思議だなあ!」だが、「あやしかりき」になると「不思議だった」という単なる過去の叙述になる。
なお「あやしかりけり」の「あやしかり」はシク活用の形容詞「あやし」の連用形。
いつとても こいしからずは あらねども あきのゆうべは あやしかりけり
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本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。