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文献を速く読むにはどうするか(学ぶときの心がけ)

質問

数学書やプログラミング言語のドキュメントなどの「ややこしくてすぐには理解できないような文献」をなるべく速く読まないといけないとき、どうするのがよいでしょうか。

結城浩のメールマガジン 2020年1月14日 Vol.407 より

回答

ご質問ありがとうございます。

あなたの質問は「なるべく速く読むにはどうするか」ですけれど、そこには情報がずいぶん欠けています。速く読むこと自体があなたの目的ではないですよね。何かを知るためか、必要な情報を探すためか、何かを書くためか……ともかく本来の目的があるはずです。その目的のために速く読みたい。

また「なるべく速く」とはいいますが、予定した〆切があるはずですよね。多くの場合、時間を掛ければ深くたくさん読めますから、掛けた時間と理解度のあいだにはトレードオフがあります。

品質は、指標が決まらないと評価できません。そのドキュメントを、どんな目的で、いつまでに読む必要があるのかを定めましょう。

大原則として、理解のスピードを上げる方法はありません。ですので、目的を絞るか、時間を稼ぐか、他人を頼ることになるでしょうね。

目的を絞る」というのは具体的には「何のために読むのか」と自問して、その目的にまっしぐらに向かうことです。たとえば、特定の概念を知るために読むとしたら、目次や索引でまっさきにその概念について読む。そしてわからないところがあったら、そこからさかのぼっていくことになります。「ややこしくてすぐには理解できないような文献」の場合には、概要や目次や索引や用語集など、理解を助けるための表現上の工夫があることが多いですから、それも活用しましょう。

ただ、本を読む場合は「急がば回れ」になることもよくあります。むしろ急がない方がよかったという場合も多いですので、ご注意ください。

時間を稼ぐ」というのは具体的には「〆切を延ばす」ということです。あるいは一日でそのドキュメントに向かう物理的な時間を増やすことです。そうすれば日数を稼げます。ただし、せっぱつまっても睡眠時間を削るのはやめた方がいいです。

他人を頼る」というのは具体的には「こういう目的のために、いつまでに○○について知りたい。どこを読めばいい?」と聞くことです。あるいはもっと直接的に「○○ってどういうこと?」と他人に教えてもらうのもいいですね。適切な相手に教えてもらえば、ドキュメントを読む時間を大幅に短縮できます。

私自身の話をします。私の場合、本を急いで読む必要があるときというのは、何かの文章を書く資料にするときが多いですね。その場合「こんな情報が書いてないかな?」という想定のもとで複数の本に当たることが多いです。ですから、最初はあまり深く読まず、期待する情報が書いてあるか否かで本をセレクトし、後から目的の箇所だけをじっくりと読むパターンになります。

あなたも、自分がそのドキュメントを読む目的を明確にすると、方針を立てやすいと思いますよ。

ちなみに、数学書の場合、その内容を深く理解することが目的ならば、あまり速く読むことは望めないと思います。スピードを上げることができない部分、すなわち「理解」の部分がどうしても律速になるからです。

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