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秋の夜も名のみなりけり逢ふといへばことぞともなく明けぬるものを

小野小町(おののこまち) 古今和歌集635 #jtanka 

あーあ、秋の夜は長いというけれど、それも名ばかりだったのね。ようやく逢えることになって、そして、何事もなく夜が明けてしまったよう!

「名のみ」は「名前だけ、名目だけで実質が伴わない」という意味。

「なりけり」は「なり+けり」。「なり」は断定の助動詞「ぬ」の連用形。「けり」は詠嘆の助動詞「けり」の終止形。「なりけり」は「……だったのだなあ」の意味。ここでの「けり」はいわゆる「気付きの《けり》」で「初めてはっと気がついた」ことを表す。

「逢ふといへば」は「逢ふ+と+いへ+ば」。「逢ふ」は動詞の連体形。「と」は格助詞。「いへ」は「いふ」の已然形で、ここでは特別に「言う」という意味はなく補助動詞のような役目を果たしている。「已然形+ば」は確定順接条件で「……なので」の意味。「逢ふといへば」は「逢うということなので」の意味。

「ことぞともなく」は「こと+ぞ+とも+なく」という連語で「特に何事もなく」の意味。

「明けぬるものを」は「明け+ぬる+ものを」。「明け」は動詞「明く」の連用形。「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形。「ものを」は詠嘆の終助詞。「明けぬるものを」は「明けてしまったのだなあ!」

秋の夜は長いというのが通説だけれども、実際はそんなことはなくて、好きなあの人と逢っているときにはすぐに明けてしまうなあ、
という気持ち。

あきのよも なのみなりけり あうといえば ことぞともなく あけぬるものを

※Photo by webtreats.
https://www.flickr.com/photos/webtreatsetc/5459627931/

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