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夢路には足も休めず通へども現に一目見しごとはあらず

小野小町(おののこまち) 古今和歌集658 #jtanka 

夢の通い路では足を休めることなくあなたのところに通っていますけれど、そのような夢の世界での経験は、現実の世界であなたを一目見たときほどすばらしくはありません。

「夢路」はよく恋の歌に出てくる。ここでは「夢」と「現」を対比している。

「通へども」は「通へ+ども」。「通へ」は動詞「通ふ」の已然形。「ども」は活用語の已然形につき逆接確定条件を表す接続助詞で「……だけれども」の意味。「通へども」は「通うけれども」

「一目」は656番の「人目」と同じ音だけど意味は異なる。

「見しごとはあらず」は「見+し+ごと+は+あら+ず」。「見」は動詞「見る」の連用形。「し」は過去を表す助動詞「き」の連体形。「ごと」は比況の助動詞「ごと」の連用形で「……のようだ」「……のごとくだ」の意味。「は」は係助詞。「あら」はラ変補助動詞「あり」の未然形。「ず」は打消の助動詞「ず」の終止形。「見しごとはあらず」は「見たごとくではない」という意味。

助動詞「ごと」の活用は「○|ごと|ごと|○|○|○」。

動詞「見る」の活用は「見|見|見る|見る|見れ|見よ」。

助動詞「き」の活用は「(せ)|○|き|し|しか|○」。

この歌は「夢よりも現実の方がすばらしい」。647番は「現実よりも夢の方がすばらしい」

ゆめぢには あしもやすめず かよへども うつつにひとめ みしごとはあらず
ゆめじには あしもやすめず かよえども うつつにひとめ みしごとはあらず

※Photo by webtreats.
https://www.flickr.com/photos/webtreatsetc/5459627931/

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