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暗黙の指示(コミュニケーションのヒント)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。

こんにちは、結城浩です。

「コミュニケーションのヒント」のコーナーです。

奥さんが「今日は寒いね」とひとこと言いました。そのとき、窓が開いていたとします。奥さんの発言はどういう意味があったのでしょうか。

 ・単に「寒い」ということを言いたかった。
 ・「窓が開いていて寒いから、窓を閉めてほしい」という「暗黙の指示」だった。

「暗黙の指示」というのは、はっきりと「○○してほしい」と言葉で表さず、受け手が「あ、これは『○○してほしい』という意味なのだな」と察してやらなければならない指示のことです。

家庭内の話なら、暗黙の指示が出されたとしても、あまり大きな問題には発展しません。え、ええと、たまには家庭内の大問題に発展するかもしれませんが…げほげほ。それはまた別の話。

でも、仕事をする上で「暗黙の指示」が出てくるのは危険です。例をいくつか考えてみましょう。

 「このあいだリリースしたプログラム、ちょっと遅いよね」
 →これは「スピードアップせよ」という暗黙の指示でしょうか。

 「あの業者さんは、納期を守らないことが多いよね」
 →これは「あの業者を使うのは、もうやめよう」という暗黙の指示でしょうか。

 「きみが描いたこの画面、全体的に暗いよね」
 →これは「もっと明るくせよ」という暗黙の指示でしょうか。

「これは、暗黙の指示なのかな?」という場面では、いったいどうしたらいいんでしょうか。お仕事だったら当然「確認」することになります。

 「このあいだリリースしたプログラム、ちょっと遅いよね」
 「それでは、スピードアップの項目をTODOに入れましょうか?」

 「あの業者さんは、納期を守らないことが多いよね」
 「それは、あの業者さんを次回は使うなという指示でしょうか?」

 「きみが描いたこの画面、全体的に暗いよね」
 「もっと明るいバージョンを作ってみた方がいいですか?」

「暗黙の指示」らしき発言に対しては、きびきびした「確認」を行えば、トラブルを未然に防げそうです。

ここで一点注意。暗黙のやりとりを排除しすぎてしまうと、仕事場の雰囲気がギシギシしたものになってしまう危険性もあります。暗黙のやりとりが漂うやわらかな雰囲気と、明確な指示が出されるきびきびした場面が、うまく同居できる仕事環境だと良いのでしょうけれど。

冒頭のように奥さんから聞かれたら「本当に寒いね、…窓閉めようか?」と言うでしょうね。これもまた「確認」の一種。

さて、ここから話は二つの方向に発展しますが、それは別の話としてまたいつか。

 (1)改善:「今後、あの人に「暗黙の指示」を避けてもらうにはどうしたらいいだろう」
 (2)反省:「はっ! 自分も「暗黙の指示」と思われる発言で、周りを混乱させていないだろうか」

あなたは最近誰かから「暗黙の指示」らしきものを受け取りましたか。

あなたは最近誰かに「暗黙の指示」らしきものを出したことがありますか。

ちょっと、考えてみてください。

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(Photo by webtreats. https://www.flickr.com/photos/webtreatsetc/4293531423/)

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