パズルゲームで遊ぶときに考えていること
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パズルゲームで遊ぶときに考えていること

結城浩

結城は、パズルゲームが大好きです。

結城メルマガ」でもときどきiPhoneのパズルゲームを紹介しますよね。

最近のお気に入りは「Shoot n Merge」というパズルゲームです。

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1, 2, 4, 8, 16, ... という2の冪乗が書かれた四角いコマをタップして打ち(Shoot)、同じ数が並ぶと融合して数が倍になる(Merge)というパターンのゲームです。

発想は2048やThrees!と似ているのですが、Shoot n Mergeでは次第に上から落ちてくるという時間制約の中でタップする場所を選ぶ必要があります。

なかなかおもしろいゲームです。

ところで、このゲームをプレイしながら気付いたことがあります。それは自分が無意識のうちに「うまくプレイするアルゴリズムについて考えている」ということです。

アルゴリズムといっても、難しい話ではありません。プレイを続けていると、うまくプレイするためにはどうするかという「知見」がしだいに貯まってきますよね。結城は、あたかも自分が機械になったかのようにプレイして、自分の得た知見の有効性を確認します。そういう遊び方を私は好みます。

めんどくさい性格ですね。

たとえばShoot n Mergeの場合「手元の数と同じ数を見つけたらマージするのがいい」という知見Aがあります。そこでその知見Aを「自分という機械」にインストールしてプレイしてみる。そのつど考えるのではなく、機械的に「同じ数を見つけてマージ」というプレイに徹するのです。この知見Aによって、いったいどのくらいまでスコアが伸びるだろうか……これが「自分の得た知見の有効性を確認する」という意味です。

伝わりますかね。

プレイを繰り返すと知見Aだけではまずいことに気付きます。手元の数と同じ数が見当たらない場合があるからです。そこで別の知見Bを得ます。「同じ数がなければ、次善の策として手元の数よりも大きな数のところに移動する」という知見Bです。そしてまた「自分という機械」に知見A+Bをインストールしてプレイ。さてどこまでスコアが伸びるかな。

そのうちに「連鎖が起きやすく、できれば手元の数の二倍のところに移動する」という知見Cや、「できるだけコマが分散するように移動する」という知見Dや、「縦の連鎖だけではなく横の連鎖も使え」という知見Eが得られます。

やがて「次の一手だけではなく、盤面全体を見て判断せよ」という抽象度の高い知見αが得られることもあります。

また、知見のあいだに生じるトレードオフの裁定というメタな知見が得られることもあります。「長い連鎖を作るのは効果的だが、それをやり過ぎるとゲームオーバーになりやすいから、分散させること」のような知見ですね。

知見が増えないと得点は停滞します。固定的な知見だけでプレイを繰り返していると、正確さというスキルが増すので得点はある程度までは伸びますが、大きな成長はないのです。

知見が増えたからといって得点がすぐに伸びるとは限りません。自分としては有効だと思った知見でも、実際に試してみるとまったくうまく行かないことがあるからです。トライ&エラーが必要になります。そしてトライ&エラーしている最中(つまり、知見の有効性を検証しているあいだ)は点数は逆に低下することも多いのです。

しかし、正しい知見が得られると急激に得点は伸びます。それは、一種の「ブレークスルー」と呼ぶにふさわしい現象です。

結城は、自分が得たたくさんの知見を、優先度や重みを考慮しつつ「自分という機械」で実行して楽しみます。ゲームのプレイ自体を楽しむと同時に、新たな知見の発見と、トライ&エラーによって知見の有効性も楽しんでいるようですね。

つまり、「Shoot n Mergeというゲーム」をプレイするだけではなく、「『Shoot n Mergeというゲーム』をプレイする」というゲームをプレイしているのです。メタだ。

やっぱりめんどくさい性格ですなあ。

 * * *

結城はパズルゲームが大好きです。

パズルゲームをプレイするときには、ここまで述べてきたような「知見」を見つけ、確かめ、育てるというメタなゲームをいつも楽しんでいます。結城が、運やタイミングに左右されにくいパズルゲームが好きなのは、知見を検証するときに「再現性」が高いからかもしれません。

ところで、ここまでパズルゲームに関して述べてきたことは、実はどんな学びにも通じるのではないかと気付きました。

たとえば、問題を解く場合を考えます。そのときに、与えられた問題を解けば終わり、解答が出れば終わりというのではありません。「どういう考えに基づいて問題に取り組めば、より有効な手がかりが得られるか」を考えるということです。

本を読む場合でもそうです。本に書かれた知識を自分の頭に入れれば終わりというのではありません。いま得た発想は自分の頭の中にはなかった。「どうすればその発想に自然と導かれていたであろうか」と考えるということです。

このように学ぶ態度は、パズルゲームをメタにプレイしているときの気持ちと非常に似ています。

うん、鍵はここでも「再現性」にありそうです。結城が自分で問題を解けたら終わりではない。結城が自分で知識を得たら終わりではない。「同じ問題を他の人も解けるようにするには何を押さえればいいか」を考える。「同じ発想を他の人も得るためには何を押さえればいいか」を考える。

自分という属人性をできるだけなくすためには、自分が知り得たことをどのような形で表現すればいいだろうか。どうすれば、自分がその場にいなくても、他の人でも同じ問題を解き、同じ発想を得られるだろうか。

結城は、そのように考えるのが大好きなのですね。

結城は、自分が本を書く仕事をしている、その理由のひとつがわかったような気がします。

そしてまた「本を書く仕事は、教える仕事である」という傍証をひとつ得たように思います。

以上、「パズルゲームで遊ぶときに考えていること」というお話でした。

鍵は「再現性」にあるんですよ。うん、これはもっと広がるおもしろい話!

結城浩のメールマガジン 2019年1月22日 Vol.356 より

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結城浩

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結城浩
本を書く生活がもうすぐ30年目。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『暗号技術入門』『数学文章作法』など50冊以上。活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。