見出し画像

久方のあまつ空にも住まなくに人はよそにぞ思べらなる(元方)

#元方 (もとかた) #古今和歌集 751 #jtanka #短歌 #恋

あの人は遠く離れた天空に住んでいるわけでもないのに、私のことを自分とまったく無関係な別世界にいると思っているみたい。

久方の」は「天」「光」「月」「都」などにかかる枕詞。

あまつ空(天つ空)」は。「天空」「天上界」で、地上から遠く離れた場所というニュアンス。

「天つ空」の「つ」は格助詞で「天の空」の意になる。
「天つ風(あまつかぜ)」ならば「天の風」のこと。
「天つ神(あまつかみ)」ならば「天の神」のこと。
「天つ印(あまつしるし)」ならば「天の印」で、これは「天の川」のこと。
「天つ袖(あまつそで)」ならば「天人の衣の袖」のこと。
「天つ乙女(あまつおとめ)」は「天女」のこと。

住まなくに」の「なくに」は、活用語の未然形に接続して逆接の確定条件を表す。ここでは接続助詞的に用いられている。「住んでいないのに」。

」は、「私が想っているあの人」のこと。

よそに」は「余所に」で、ナリ活用の形容動詞「よそなり」の終止形「よそに」。「無縁である」「関係がない」「よそよそしい」の意味。

この「よそに」はこの歌でもっとも大切な言葉。あの人は天の上の世界、天空に住んでいるわけでもないのに、私のことを自分とは無関係な存在だと思っている。まるで遠く離れた別の場所にいるかのようによそよそしく思っている。

べらなる」は推量の助動詞「べらなり」の連体形。活用語の終止形に接続する。「ぞ〜べらなる」は強調の係り結び。ここでは「よそに」を強調している。

ひさかたの あまつそらにも すまなくに ひとはよそにぞ おもふべらなる
ひさかたの あまつそらにも すまなくに ひとはよそにぞ おもうべらなる

いただいたサポートは、本やコンピュータを買い、さまざまなWebサービスに触れ、結城が知見を深める費用として感謝しつつ使わせていただきます! アマゾンに書評を書いてくださるのも大きなサポートになりますので、よろしくお願いします。 https://amzn.to/2GRquOl