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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年8月7日 Vol.332

/高校三年生の夏休み、予定の組み方/勉強のモチベーション/生徒の叱り方/口下手/

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

前回のVol.331の三角関数に関連した記事中、文字化けがありました。丸囲みの1,2,3という機種依存文字をうっかり使ってしまったからです。おわびいたします。

暑い毎日が続いていますが、あなたはいかがお過ごしでしょうか。夏休みのご計画はどうでしょう。

今回の「結城メルマガ」は、期せずして「学ぶ」話題が非常に多い回になりました。夏休みの予定の話や、勉強のモチベーションの話など。

どうぞごゆっくりお読みください。

目次

■数学オリンピックに歯が立たず本当に悔しい - 学ぶときの心がけ
■勉強のモチベーションを上げる方法 - 学ぶときの心がけ
■高校教師二年目、生徒の叱り方について - 教えるときの心がけ
■口下手で、思ったことを適切な言葉にできない
■高校三年生の夏休み、予定をどう組むか - 学ぶときの心がけ


数学オリンピックに歯が立たず本当に悔しい - 学ぶときの心がけ

質問

高校三年です。

私は昔から数学が大好きで、高校に入るまではただただ数学が好きで楽しんでいました。数学の成績も負けたことがなく、それに誇りを持っていました。

しかし、高校に入って数学オリンピックに参加したところ、全く歯が立たずにプライドもズタズタにされ惨敗しました。悔しくて、一年間頑張りましたが、次の年の数学オリンピックも予選で敗退してしまいました。

そして、最後のリベンジと思って受けた今日の数学コンテストでも思うようにいかず、悔しい結果に終わりました。

この高校生活を振り返って、私に数学の才能が無いということを痛感させられました。もっとセンスを伸ばすには一体どうすれば良かったのでしょうか。本当に悔しいです。教えて下さい。

回答

ご質問ありがとうございます。

「もっとセンスを伸ばすには一体どうすれば良かったのか」というあなたの質問に私は答えられませんし、そもそもこの質問が、適切な質問かどうかも私にはわかりません。私にはわからないことばかりですが、思うところを書きます。

数学オリンピックは競技なので、勝つ人もいれば負ける人もいます。そして「数学オリンピックで負けた人は数学の才能がない」という命題は偽です。

数学オリンピックで敗退したということは、そのときに出された問題をあなたよりもうまく解いた人が存在するということです。それは事実ですけれど、そこからの推論を誤ってはいけません。たとえば「自分に数学の才能がない」というのは典型的な誤った推論であると思います。

数学は、そして学問はあなたが想像するよりもはるかにはるかに広大で豊かなものです。問題を解くことが数学のすべてではありませんし、そもそも数学オリンピックに出される問題が数学における問題のすべてでもありません。しかもあなたは若い。自分の前にある有益な時間を、誤った推論で濁らせないように注意しましょう。

あなたが敗退したということは事実で、それは動きません。もちろん敗退すれば悔しいでしょう。その悔しさの大きさは、あなたの熱意を示しています。自分の悔しさをしっかりと受け止めつつ、あなたは、いまあなたのなすべきことを考えましょう。

あなたが敗退したという過去の事実は動きません。しかし、現在のあなたはこれから大きな活動をしていく存在です。悔しさをしっかり受け止めて、大きく羽ばたいてください。そして未来のあなたが現在を振り返るとき、今回の敗退の意味が変わって感じられるようになるかもしれません。あなたの未来を作るのはあなたです。

応援しています!

勉強のモチベーションを上げる方法 - 学ぶときの心がけ

質問

勉強のモチベーションはどうやって上げればいいのでしょうか。

回答

ご質問ありがとうございます。

モチベーションを上げる方法はよく聞かれます。こまごまとしたコツはあるかもしれませんが、「決定版」となるようなものは思いつきません。

モチベーションを上げる方法は思いつきませんが、モチベーションを下げない方法は思いつきます。

モチベーションを下げない方法、それは「誰かにやらされている感」を減らすように心がけることです。

勉強をやろうかなと思っているけれど、なかなか取りかかれないとき、誰かに「勉強しなさい!」と言われると逆にやりたくなくなりますよね。それは「やらされ感」が増大したからです。誰かにやらされている勉強、特に自分が喜んで指示に従えない人から指示される勉強はモチベーションが下がります。

「やらされ感」を少なくする方法の一つは「勉強しなさい!」といわれないようにすることです。そのために最もいいのは言われる前にとりかかることですが、それは難しいもの。「やるつもりだった」という自分の心の中の予定は他人には見えませんので、それを可視化するのがいい方法です。自分の予定表を「勉強しなさい!」という人に見せておくというのがベストですね。

「勉強しなさい!」と言われないようにすること以外にも「やらされ感」を少なくする方法はあります。「やらされ感」というのはその勉強が「自分のこと」と感じられないという現象ですから、そこを変えるのです。つまり、勉強という活動について「自分なりのひと味」を付けるということ。勉強のパーソナライズ、勉強のカスタマイズです。

具体的には、ノートを自分で選ぶこと。ノートの表紙に自分の好きな絵を描いたり、貼ったりすること。誰かが言った勉強方法や暗記方法であっても「●●流の勉強法」のように自分の名前を付けてしまうこと。そのように「自分に関わること」と勉強の道具や方法を結びつけると「自分のこと」として勉強を考えやすくなります。

先ほど自分の予定表について書きましたが、自分の予定表を自分で作るというのも大事なことですね。他人から「この予定表でやれ」と言われるよりも、自分で考えた予定表の方が動きやすくなります。他人から渡された予定表であっても自分で書き写して「自分の予定表」にしちゃう手もあります。

さて、ここまで書いてきたことは「やらされ感」をなくすための細かい工夫です。「勉強しなさい!」といわれないようにすること、勉強のパーソナライズ、そして予定表を自分で作ること。

でも、それよりもずっと大事なのは「勉強している内容そのものに関心を持つこと」だと思います。いまやっているこの勉強を手早く済ませてしまおうというのもいいのですが、ときには5分でもいいから「これって何を学んでいるんだろうか」と考えることは大切です。機械的に終わらせてしまおうと考えてばかりだと、おもしろくなるはずはなく、モチベーションも下がります。勉強が自分の時間を消費させてしまう悪に見えるからです。

そうではなくて、一歩でいいから、深く考えてみる。

何かのタイミングで、学んでいることのおもしろさを感じたならば、モチベーションを意識的に上げる必要すらなくなるかもしれません。

私は、そんなふうに思っています。

ご質問ありがとうございました。

高校教師二年目、生徒の叱り方について - 教えるときの心がけ

質問

高校教師二年目です。期末テストが先日終わったのですが、とても悪い結果でした。

勤務してる高校は一応進学校なので、テストの結果について叱る必要があると考えていますが、正直叱るのは苦手です。

生徒に怒りの感情をぶつけたところでこちらがストレス溜まるだけですし、なにより生徒の心に響かないと思っています。なので、いつも穏やかにお説教という感じで叱りますが、「あの先生は怒らない」と思われてしまうせいか一部の生徒にしか届きません。

結城先生だったらどのように話をしますか。

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