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2016年の「esa社」訪問記(仕事の心がけ)

※この記事は2016年に書かれたものです。

先日結城は、東京は渋谷にオフィスのあるesa社を訪問しました。

esa社は、結城メルマガでも何回か紹介した「esa.io」というサービスの開発・運営をやっている会社です。

◆esa.io - 「情報を育てる」という視点で作られた、自律的なチームのためのドキュメント共有サービス

今回の訪問は、特にお仕事上の用件があったわけではありません。結城は以前からpplogやesaに注目していたこともあり、応援訪問というか、激励訪問というか、そういう活動の一つになります。

激励訪問などというと「上から目線」っぽいですが、実際には結城の方が若い人の活動からエネルギーをいただく場となりました。

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esa社は、@fukayatsu さんと @ken_c_lo さんの二人が設立した会社です。

◆esa LLC

「社屋」はふつうのワンルームマンションの一室。片方の壁には細長いデスクを設置し、その上に開発マシンを並べてある。esaのマスコットである「トリ」のシールやグッズも置かれている。あとはソファ、キッチンスペースなどなど。何だか「部室」っぽい雰囲気が漂う場でしたね。

結城はふだん仕事中は誰ともリアルではおしゃべりせず、黙々と仕事をしています。また、人と会う機会もそれほど多くありません。イベントや勉強会にもほとんど顔を出しません。でも、esa社のお二人(とアドバイザの @ppworks さん)と話した経験がよかったので、たまにはこういうのもいいな、と思ってしまいました。

esa社のサービスはesa.ioですから、当然esa.ioについての話題が多くなります。結城がとても好感を抱いたのは、しょっちゅう「ユーザ」の話が出てくる点です。esa.ioというサービスの開発に関していつも、「ユーザさんからこういう要望が来て」とか、「この機能はユーザさんの希望で実現しました」という話が多いのです。

サービスによってのユーザは、著者にとっての読者と同じです。結城はいつも《読者のことを考える》原則を大事にしたいと思っているので、何かというと「ユーザさん」の話題が出てくるサービス開発は、とてもよいと思います。

その一方で、決してユーザの言いなりではないのも興味深かったですね。ユーザから要望がやってきて、esa.ioに機能追加をすることは多い。けれども、あえて機能を《入れない》という場合もある。そしてその場合には、いれない理由をユーザさんに説明するとのこと。なるほどです。

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自分たちで会社を興し、自分たちの作りたいものが作れる状況だと、どうしても自分指向で走ってしまい、ユーザを置いてけぼりにしかねない。その一方で、ユーザの声に耳を傾けすぎると、サービスの特徴や良さを失ってしまう可能性もある。そのさじ加減は、何かを作る場面でいつでも問題になるでしょう。

esa社の二人の話を聞きながら、結城は、そのさじ加減はどこにあるのかなあ……などと考えておりました。一つ言えそうなのは、esa社の二人は、esa.ioというサービスがどういうものなのかについて、よくわかっているんだろうな、ということ。あるべき姿が見えている、あるいはよい方向はどっちかという見極めができている。だからこそ、ユーザからの要望を判別できるのでしょう。

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esa.ioは良いユーザにめぐまれているということも知りました。esa.ioというサービスを、「誰かから強制的に使わせられているユーザ」は少ないとも。口コミか何かでesa.ioのことを知り、これはいいぞという「チーム」がesa.ioを使っています。主なユーザは開発関係者やデザイナーで、無料の試用期間も二ヶ月以上あるということで、「本当に使いたいと思って使っているユーザ」が多いようです。だからこそ、よい要望がユーザからやってくるし、また無茶なクレームはほとんどないのでしょうね。

esa.ioでは、サービス拡大のための広告や宣伝を特に行っていません。けれど、ユーザは漸増し、先日黒字化を果たしたとのこと。それもまた、良いユーザをキープできている要因なのかもしれません。

ちなみに、結城とesa社の二人が話している途中で、たまたまユーザさんからのメールが入ってきたようです。その瞬間「ユーザさん対応です」と一言いい、すばやく対応していました。当然ですが、こういうゆるやかな緊張感はいいですね。

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結城は今回、自分アピールはほどほどにし、esa社の話を聞こうと思って臨みました。そのため、三つほど質問を用意しました。

(念のために注意)このやりとりは結城の記憶で書いていますので、不正確な面も多々あると思います。ご了承ください。

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最初の質問は、

 「esa.ioのサービスを仕事にしようと思った瞬間は?」

というもの。もともとesa.ioは最初から仕事になっていたわけではなかったそうなので、いつ「これで行ける、これを仕事にできる」と思ったかを聞きました。

でも、あまりそういう「瞬間」はなく、次第次第に進んで行ったとのこと。会社化をして仕事にする前から、esaのサービスを使ってくれるユーザさんがいたという話を聞きました。esaがまだ会社化してないのに、「ちゃんとした」会社の人がユーザとして使ってくれていることが、後押しになったとも。

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結城からesa社への二つ目の質問は、

 「一つのサービスで飽きないのか」

というもの。一つのサービスでユーザさんがいると、おいそれと「飽きたからやめた」とはできないけれど、そのあたりの気持ちはどうなんだろうと思って聞きました。

答えは「サービスをやっていると、開発だけではなく、メンテナンスやユーザサポートなど、いろんな側面があるため、飽きるという感じにはならない」とのこと。

また、いやにならないようにする方法として、無理をしない。がんばりすぎないように工夫しているとのこと。モチベーションを保つための工夫は、先日のプレゼンテーションにも出てきていました。

◆[WIP] esa.io、その後の話
https://speakerdeck.com/fukayatsu/wip-esa-dot-io-sofalsehou-falsehua

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結城からの最後の質問は、

 「トップレベルのクレド(信条)は何か」

です。何を考え、何を目標にしているか。

答えは「サービスを起ち上げるときに、本当によく考えたけれど、はっきりとは(まだ)決まっていない。まずは作りたいものを作っていく感じ」とのこと。

いまのところは人をやとって会社を大きくするということは考えていない、というお話でした。

「人を雇って会社を大きくするつもりはない」という話を聞いたときにふと結城は、それって「ユーザを急激に増やそうとしていない」のに通じるものがあるな、と感じました。

何か一つ当てて、がーっとユーザ数を多くし、社員を増やし、スケールを上げていくというのではなく、質をキープしつつ「いい感じ」で進んでいる印象を持ちました。

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最後にトリのミニバッグとシールをおみやげにいただき、ネットごしにはできないこと、すなわち「握手」をしてesa社を後にしました。

とてもさわやかな楽しいひとときを、ありがとうございました。

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なお、こちらにesa.ioの@fukayatsu 氏によるプレゼンテーション動画があります。

◆esa.io、その後の話 / fukayatsu / #yapc8oji 7.2 roomC
https://youtu.be/Wdee54vXN4Y

◆[WIP] esa.io、その後の話
https://speakerdeck.com/fukayatsu/wip-esa-dot-io-sofalsehou-falsehua

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以上「仕事の心がけ」のコーナーは「esa社訪問記」でした。

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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年7月19日 Vol.225 より

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#結城浩 #仕事の心がけ #仕事 #esa


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書籍執筆者。著書に『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。http://bit.ly/hyuki-mm にて「結城メルマガ」をnote配信中。https://bit.ly/girlnote にてcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。