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スマートフォンで絵を/「良問」とは何か/読み飛ばしても大丈夫という自信/「壁」を越えて作品を作り続けよう/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年12月4日 Vol.349

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

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スマートフォンで絵を描く話。

最近「3Dモデルを作成してそれを絵画風にする」という活動がお気に入りです。といってもイメージが湧かないと思うので例を挙げますね。

◆追憶。

◆追憶。- Instagram
https://www.instagram.com/p/BpwWDQ7AwnC/

この壺は水彩画っぽいですけれど、紙やリアルの筆記具はいっさい使っていません。iPhoneとアプリだけで作ったものです。結城は絵心があまりないのですが、それにも関わらずこんな画像が作れるなんて感動です。

この絵を作るのに使ったのは、Potteryという「ろくろを回して陶芸作品を作るアプリ」と、Waterlogueという「画像を水彩画風にするアプリ」と、Pixlrという「写真加工するアプリ」の三つです。いずれもiOSで動作するもので、製作時間はわずか20分たらず。しかもごろんと寝転んだままで作ったものです。率直に言いましょう。手軽で楽しい!

◆Pottery(陶芸作品を作るアプリ)
https://www.idreams.pl/ja/our-products/show/product/21-Lets-Create-Pottery

◆Waterlogue(水彩画風の画像処理をするアプリ)
http://www.tinrocket.com/apps/waterlogue/

◆Pixlr mobile(レタッチ&画像加工アプリ)
https://pixlr.com/mobile

Potteryを使うと以下のような画像を数分で作ることができます。もちろん形や大きさは自分のイメージ通りに指先だけで作れます。リアルに見える壺ですね。

◆「追憶。」を作るもとにした3DイメージをPotteryで作る。

この画像をいったん保存しておき、それをWaterlogueに掛けると水彩画風になります。Pixlrでそれを正方形に切り取って自分のサインを入れると一枚の作品ができあがり!

20分足らずという短い時間で、陶芸と水彩画を楽しめるなんてすごい時代ですね。

結城浩のインスタグラムには他にもいろんな「作品」があるので、ぜひご覧下さい。

◆結城浩のインスタグラム
https://www.instagram.com/hyuki0000/

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Dynalistの話。

結城は、アウトライナーとして無料のDynalistを愛用しています。以前はWorkFlowyを使っていたのですが、無料で作れる上限に達してしまったのでDynalistに移行してしまいました。

◆Dynalist
https://dynalist.io

ずっとWeb版を使っていたのですが、あるときふと「Dynalistにアプリケーション版はあるのかな」と思いつきました。結城は「ふと」思いつくことがしばしばあります。

MacのApp Storeでちょっと探して見つからなかったので、TwitterでDynalist公式アカウントにダウンロード場所を教えてもらっちゃいました。考えてみれば公式Webサイトに行けばよかったんですね。

◆公式アカウントに聞いちゃうの図

◆Get Dynalist for macOS
https://dynalist.io/download

Dynalistのように「さっと使い始めたいツール」はアプリになっていると便利です。というのは、HotKeyのようなショートカット設定ツールを使って、キーボードワンタッチで起動することができるからです。Web版でもURLをもとにしてキーボードワンタッチで起動させることはできますが、タブが開いて二重起動になってしまうことが多いんですよね。

Dynalistで何をやっているかというと「いろんなこと」です。本の章立てに使うこともあれば、思いついたアイディアメモに使うこともあれば、Web連載の下書きをすることもあります。

いま現在のDynalistのスクリーンショットを以下に示します。非公開部分はモザイクが掛かっていますが、雰囲気はわかると思います。

◆Web連載準備中(Dynalistのスクリーンショット)

画面の左側にあるのは現在のドキュメント一覧です。Web連載の下書きが何点かと、書籍の章立てが何点か、あとは企画趣旨書打ち合わせ準備資料などが並んでいます。

画面の右側は現在選択されている「第243回のWeb連載」のアウトラインが書かれています。最初からアウトラインになっているわけではなく、数学ガールの登場人物の対話を箇条書きにしていきながら、少しずつ舞台のようすが結城自身に見えてくるので、そのつど加筆していくのです。

企画趣旨書や打ち合わせ資料のような文書の場合には、Dynalistのアウトラインをそのままエクスポートして使います。たとえば編集者にメールで送ったり、プリントアウトして打ち合わせで使ったりするのです。

でも、Web連載の執筆の場合には、Dynalistのアウトラインをごっそりとエクスポートしてテキストを作るわけではありません。何回か試したのですが、あまりそういう「機械的」な作り方はなじまないようです。 Dynalistで作ったアウトラインをちらちらと眺めながら別途新規にVimでLaTeXファイルを編集していくことが多いですね。

思うに、結城にとってテキストをキーボードでタイプするというのは「声に出して話す」ことにかなり近いようです。ですから、対話形式の文章であるWeb連載の場合、タイプするという行為を通して話が進んでいくのでしょう。どこかに作ったテキストをポンとコピーしてしまうと、そこから話を続けるのが難しい。いったんタイプし直すとスムーズに話が流れる。なかなかめんどうな話です。

ツールにエクスポートの機能があるからといって無理に使う必要はありません。あくまで自分がやりたいことをやりたいように進めるための補助をしてくれるのがツールなのですから。

以上、Dynalistについてのお話でした。

◆Dynalist
https://dynalist.io

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数学を学ぶ話。

結城のところにはよく「大学数学をどのように学んだらいいですか」という質問が来ます。もちろん結城は自分に理解できる限りのお答えをしますが、数学科出身でもないし、数学者でもないので自ずから限界もあります。

そんな中、可換環論botさん( @CommAlg_Bot )が「大学数学に憧憬を抱いている高校生」の質問に答えているツイートを見かけました。この答えの冒頭に書かれていた「数学はお好きですか?」と「数学を学びたいですか?」という二つの質問に心動かされたのでリンクにてご紹介します。

◆可換環論botさんのツイート
https://twitter.com/i/web/status/1061264209722261504

質問者は大学数学の習得方法を尋ねているのですが、回答者は習得方法に答える前に「数学はお好きですか?」と「数学を学びたいですか?」という逆質問をしています。結城はこの点はとても大切だなと強く共感しました。

この2つがともにイエスなら、学びようはあるものです」と続く回答は、一見精神論のようにも見えますが、実際にはたいへんプラクティカルな答えだなとも思いました。

「大学数学を学ぶこと」についての回答全体については、上記のリンクからたどってください。

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note(ノート)の話。

結城のnote(ノート)のフォロワーさんが二万二千人を越えていました。ここしばらくフォロワー数をチェックしていなかったので、そんなに増えていたなんてびっくりです! フォローしてくださる方々に感謝です。

◆結城浩のnote(ノート)
https://mm.hyuki.net

Twitterでのフォロワーさんが47000人であることを考えると、noteでのフォロワーさんが22000人という凄みがよくわかると思います。

少し調べてみたところ4年前は約2000人でした。それを考えると22000人というのはすごい増加ですね。きっとこの背後にはnote自体のユーザ数が大きく増えているという要因もあるのでしょう。

ユーザの伸びを考えると「結城メルマガ」をnoteでもホスティングするようにしたのは、なかなか良いチョイスだったとわれながら思います。読者さんにとっては選択肢を増やすという意味で、私にとっては購読者さんを増やすという意味で良いチョイスでした。

結城浩のnote(ノート)は、当初はnote.muドメインでやっていましたが、いまは結城が持っているmm.hyuki.netドメインで運営しています。mm.hyuki.netをnoteにホスティングしてもらっている形ですね。これはnoteの販売機能を自分のドメイン下で運営しておくと何かと便利かもしれないなと思ったからです。

でも、まあ、現在のところ販売機能として使っているのは「結城メルマガ」と「結城浩ミニ文庫」くらいですけれど。

◆結城浩ミニ文庫
http://www.hyuki.com/mini/

将来的にnote(ノート)がSuzuriやBOOTHのような物販を扱わないかなあと期待しています。

* * *

アフリカのことわざの話。

あるときこんなツイートを見かけました。

「アフリカのことわざ」さん(@africakotowaza)のツイートです。

◆「月の動きはゆっくりだけど、かならず町をよこぎります」 ガーナ(アシャンティ人)
https://twitter.com/africakotowaza/status/1060088973261860864

月の動きはゆっくりだけど、かならず町をよこぎります」 というのは短い一文ですが「はっ」とさせられました。納得感とその情景とが相まって、なんともいえない味わいがあります。こういうの、いいですね。

『アフリカのことわざ』は本になっているようですよ。

◆『アフリカのことわざ』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4809415937/hyuki-22/

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ではそんなところで、今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞごゆっくりお読みください。

目次

・「良問」とは何か - 学ぶときの心がけ
・読み飛ばしても大丈夫という自信を身につけたい - 学ぶときの心がけ
・「壁」を越えて作品を作り続けよう - 本を書く心がけ


「良問」とは何か - 学ぶときの心がけ

質問

現在、高校生で受験勉強中です。予備校や参考書(問題集)で「良問」と書いてることがありますが「良問」とはどのような問題のことをいうのでしょうか。

そんなこと気にしている場合じゃないのはわかっていますが、どうしても気になってしまい、誰に聞けばいいのかわからなくて……

回答

「良問」とは「この一問から大切なことが学べるので、しっかりと時間を掛けて取り組む価値がある問題」というものではないでしょうか。

問題に取り組むのは時間が掛かります。せっかく時間を掛けるのだから、得るものが多かったり、よいものを得られる問題にチャレンジしたいですよね。「良問」という名称は「取り組む価値がある問題」に付けられるものだと思いますよ。

逆に「良問じゃない問題」を想像してみます。計算がややこしいだけの問題や、思いつきで作られたような問題や、特殊すぎて応用が利かない問題などは「良問」とはいわれないでしょうね。

言い換えるなら「良問」と言われる問題からは得るものがあるので、解いたあとの振り返りが大事でしょう。問題を解いて、解答を確かめておしまい!じゃなくて「この問題から結局わたしは何を得たのかな」と考えるということです。

基本問題や例題からは得られない応用例となっているのか、公式の意外な使い方を示しているのか、より難しい問題に向かうための技法を解説しているのか……具体的にはわかりませんが「何か」大事なものが語られているはずです。

別の方から「結城先生がこれまで出会った中での最良の問題はなんですか」という質問もいただきましたので、それにも回答しておきます。

受験勉強とは直接関係がないのですが、結城が出会った最高の「良問」というと、中学校に入学して算数が数学になった最初の授業で出会った問題ですね。それは、最初の授業のしょっぱなに先生が発した「1とは何ですか」という問いです。

いま気付いたことがあります。先日刊行した『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の冒頭でユーリが「ねー、お兄ちゃん。ゼロって何?」と尋ねます。もしかしたらこの背後には、いまお話しした「1とは何ですか」という問いの存在があったのかもしれません!

受験勉強お疲れさまです。風邪など引かないようにがんばってくださいね。

読み飛ばしても大丈夫という自信を身につけたい - 学ぶときの心がけ

質問

初学の分野に関する学術書を読むときの話です。

学術書の中で自分に必要なところを読みたいのですが、どうしても1ページ目から順に読まなければならないような気がして、なかなか進まないことがあります。

おそらく内容によるとは思うのですが「読み飛ばしても大丈夫だ」という自信のようなものは、どうしたら身に付くでしょうか。

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