
見えている風景の違い(仕事の心がけ)
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会社に勤めていた時代の、ちょっとした話です。
あるときAさんが、同じ部署のBさんについて愚痴を語りました。
【Aさんの発言】
Bさん、いるでしょ? Bさんがからむ仕事って、いつもやっかいなことになるんですよね。売上的には重要な仕事なのに、ぐだぐだになって「こんなのどうするんだ」みたいな案件になることが多くて……わたしだったら、あんな仕事の仕方はしないなあ。
私は、確かにそうかもしれない、と私は思いました。Bさんが関わる仕事っておおごとになっちゃって、火を噴くことが多い印象がありましたから。
ところが数日後、AさんとBさんの共通の上司から、こんな話を聞きました。
【上司の発言】
Aくんは、コンパクトで手頃な案件ばかり片付けたがる。
Bくんは、難易度が高い重要な案件にも挑んでくれる。Bくんは問題点もすぐにエスカレーションしてくれるから、ほんとうに助かっている。
この話には、とても考えさせられました。
「Aさんの認識」が正しいのか「上司の認識」が正しいのかは、私には分かりません。
ただ「Aさんが見ている仕事の風景」と「上司が見ている仕事の風景」とでは、ずいぶん違いがあるものだな……と思ったのです。
結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年3月7日 Vol.258 より
結城浩はメールマガジンを毎週発行しています。
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本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。