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わが恋は虚しき空に満ちぬらし思ひやれども行くかたもなし(読人しらず)

#読人しらず #古今和歌集 488 #jtanka #短歌 #恋

私の恋は、虚空に満ちてしまったらしい。恋心をはるかに伝えようと思うけれど、その気持ちの行く先もないのですから。

「満ちぬらし」は「満ち+ぬ+らし」。「満ち」はタ行四段活用動詞「満つ」の連用形。「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形。「らし」は推量の助動詞「らし」の終止形。

完了の助動詞「ぬ」は自分の意志とは関係がなく何かが起きてしまったときに用います。それに対して完了の助動詞「つ」は自分の意志によって何かを起こしたときに用います。「日、暮れぬ」(日が暮れてしまった)と「日、暮らしつ」(一日を終えた)の違い。

推量の助動詞「らし」は現在の状態をもたらした理由や根拠があり、それをもとに推量しています。それに対して推量の助動詞「らむ」は理由や根拠とは関係がなく推量しています。

「思ひやれども」は「思ひ+やれ+ども」。「思ひ」は「思ふ」の連用形。「やれ」は補助動詞の已然形。「思ひやる」で「はるばると遠くまで思いを馳せる」の意味。「ども」は逆接の接続助詞で「……だけれども」の意味。「ども」は已然形に接続。

「行くかた」は「行くべき方向」のこと。

わがこひは むなしきそらに みちぬらし おもひやれども ゆくかたもなし
わがこいは むなしきそらに みちぬらし おもいやれども ゆくかたもなし

※単語の意味は『全訳読解古語辞典』(三省堂)を参考にしています。


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