文章力をつけたい!(本を書く心がけ)
質問
『数学ガール』とても楽しませて貰っております。
ところで、数学の内容はともかく私が気になるのは先生の文章力です。
理系の私は文章力が皆無なのですが、実は本を書いてみたいな〜なんて思うこともあります。
どうしたら文章力がつくのでしょうか。
ちなみに、読書についてはかなりの量をこなしてきました。
結城浩のメールマガジン 2018年5月29日 Vol.322 より
回答
ご質問ありがとうございます。
文章力をつけるというのは大きな話ですから、簡単にお答えしますね。
(1)文章をコンスタントに書きましょう。
(2)そして、書いたものを誰かに読んでもらいましょう。
この二点です。
素朴な方法として、決まった分量でまとまった文章を定期的に書き、自分で何度も読み返す。つまり(1)だけでも悪い方法ではありません。誰かに読んでもらわなくても書く練習にはなります。でも、「これでいいや」という思い込みが強い場合、自力で文章を改善することは難しくなります。ですから、忌憚ない意見を言ってくれる人に文章を読んでもらうという(2)も合わせることをお勧めします。
ブログなどで不特定多数の人に読んでもらうことも悪くありませんけれど、文章力をつけたいなら、書きっぱなしにしない方がいいですね。一つ一つの文章をしっかり読み返し、少しでも良くしたいと考える気持ちを持った方がいいです。ただし、それを厳しくしすぎると継続できませんから、自分で調整することも必要になります。結城が好きな方法は、書いたらまずWebで公開しちゃう!……そして公開したものを何度も読み返して、少しずつ直していく。これだと継続できますし、何度も読み返すことにもなります。
ところであなたは「他人に読んでもらう文章」を書いた経験はありますか。もしも他人に読んでもらった経験が少ないとすると、最初のうちはかなり理想と現実の差に苦しむかもしれません。率直にいうならば「適切な言葉が出てこない!」や「言いたいことがぜんぜん表せない!」に苦しむかもしれないということです。でもそれは誰しも通るところなので、がんばって乗り切ってください。そのためにも誰かに読んでもらうことが有効です。
美味しいフランス料理を味わえることと、美味しいフランス料理を作れることとは別の技能ですから、たくさんの読書をしたからといって文章がすぐにうまく書けるとは限りません。しかしながら、文章の良し悪しを判断できる力を持っているのであれば、それを自分の文章に適用することで文章力を向上させることができるかもしれません。
質問文で「理系の私は」という箇所が少し気になりました。「理系である」ことは「文章力がない」ことの免罪符にはなりません。むしろ現代社会では、いわゆる理系の人こそ、正確で読みやすい文章を書く力が求められているのではないでしょうか。想定した読者に対して、複雑で誤解されがちな事柄を解きほぐし、正確で読みやすい文章によって伝える力は社会にとって重要といえるでしょう。
なお、私の『数学文章作法』では説明文を書くときの基本的なことが載っていますので、ご参考に。以下のサイトには、目次から第一章の終わりまで全文読める《試し読みPDF》が無料でダウンロードできるページへのリンクがあります。
合わせて、こちらのページからたどれる「文章を書く心がけ」もお読みください。
これまでの「結城メルマガ」で配信したもののうち「文章を書く心がけ」に関わる記事はこちらにピックアップしてあります。
こちらには「本を書く心がけ」があります。
あなたが「本を書きたい」という気持ちを持つことは本当に素晴らしいことです。良い本はいつの時代にも求められており、真に価値のある仕事の一つです。それは未来を作る仕事の一つともいえます。
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