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懲りずまに又も無き名は立ちぬべし人憎からぬ世にし住まへば

読人しらず 古今和歌集631 #jtanka  

性懲りもなく、あらぬ恋の噂はまたしても立ってしまうでしょうね。あの人のことを憎からず思ってしまうこの世に私は住んでいるわけですから。

「懲りずまに」は副詞で「性懲りもなく何度も」の意味。「懲りることがないままに」

「無き名」は根拠が定かではない恋愛の噂。「浮き名」と同じ。

「立ちぬべし」は「立ち+ぬ+べし」。「立ち」は動詞「立つ」の連用形。「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形。「べし」は推量の助動詞「べし」の終止形で「……にちがいない」の意味。「立ちぬべし」は「立ってしまうにちがいない」という意味。

「世にし」の「し」は強意を表す副助詞。

「住まへば」は「住まへ+ば」。「住まへ」は動詞「住まふ」の已然形。「已然形+ば」は順接確定条件を表す。「住まへば」は「住んでるので」という意味。もしも「住まはば」なら「未然形+ば」の順接仮定条件となり「もしも住んでいるならば」という意味になる。

「住まふ」はもともとは「住む+ふ」。「ふ」は継続を表す。「住まふ」は「継続して住む」という意味。たとえば、「語らふ」は「語る+ふ」で「継続して語る」という意味。

こりずまに またもなきなは たちぬべし ひとにくからぬ よにしすまえば


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