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忠告するときは、まずは本人だけに(コミュニケーションのヒント)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。

こんにちは、結城浩です。

今日はちょっと微妙な話題です。

部下や後輩を「ほめるとき」と「忠告するとき」にどうするか、というお話。

まずは基本。

ほめるときは人前でほめましょう。忠告するときには、ほかの人の前ではなく、まずは本人にだけ伝えましょう。これが基本原則です。いいですか。

もちろん、この基本にあてはまらない場合もたくさんありますが、原則としては「ほめるときは人前で」「忠告するときは、まずは本人だけに」です。

理由は簡単です。人はプライドを持っているからです。ほめる場合はまだしも、忠告・批判・欠点の指摘を他人の前で行うのはきわめて危険であり、逆効果になることもよくあります。

もともと、忠告・批判・欠点の指摘というのは、相手に対して「ここを改善して欲しいな」という改善要求のはずです。相手のプライドをへしおること、侮辱すること、やる気をなくさせることが目的ではありません。ですよね。

忠告・批判・欠点の指摘を「他人の前で行う」というのは、一歩間違うと本人を侮辱する結果になる可能性が高いのです。忠告している側はそう思っていなくても、結果的にそうなる可能性があります。自分が他人の前で叱られている様子を想像してみればよくわかりますよね。自分が辱められていると思うのは不思議ではありません。

たとえ、そのような忠告・批判・欠点の指摘を受けるに値する場合であっても(つまり、めちゃめちゃひどい失敗をした場合であっても)、「こんな人前で言わなくてもいいじゃないか」という反感を持たれる危険性があります。

あるいはまた、「この上司は、なんという、人の心に配慮のない人だろう」と思われてしまう可能性があります。そうなると、せっかくの改善要求がまっすぐ伝わらなくなってしまいますね。

繰り返しになりますが「ほめるときは人前で」「忠告は本人にだけ」というのはあくまで基本原則です。例外もたくさんあることを理解してください。でも少なくとも、ほめる立場・忠告する立場の人は、ほめる対象・忠告する対象とは別の「周りの人の視線」を意識したほうがよいでしょう。

会社の中で「ほめる」や「しかる」ときには、周りの視線を意識して行うべきです。さもないと、ほめることもしかることも全く無意味か逆効果になってしまいますから。

(……もっとも、このWebページをここまで読んでくださるような人には、こういうことは伝えるまでもないんですよね。ほんとに伝えるべきなのは、このような文章を読まない人なのですけれど)

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「どうしてほめるときには人前で?」というご質問をいただいたので加筆します。もちろんこれも一つの考え方ということで、絶対視すべきものではありません。

「ほめる」ときには、その教師が「何を高く評価しているか」が問われることになります。単にほめるのではなく「私は何をもってこの生徒をほめているか」を明示することが大事だと思っています。それはその個人をほめたたえることではなく、「この教室でよしとされる規範」の提示とみなすことができるでしょう。
 
 いいかえると、ほめるというのは一回限りのことや、その場での思いつきで行うことではなく、普段から教師が提示している「よいこと」の再確認なのです。ですから、多くの人が「ああ、あの人がほめられるのは確かにそうだ。普段から先生が言っていたことに合致している」と納得しなければなりません。教師には「ほめる基準」の一貫性が求められるでしょう。

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