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「わかりましたか?」の効果的な使い方(教えるときの心がけ)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです(結城メルマガVol.037より)

「教えるときの心がけ」のコーナーです。

学校の先生に限らず、誰かに何かを「教える」という局面は誰にでもありますね。このコーナーではそんなときに役立つヒントを紹介しています。

今回は「わかりましたか?」という確認について。

なお、このコーナーでは、お話を進める都合上、教える人を「教師」、教えられる人(学ぶ人)を「生徒」と呼んでいます。

●わかりましたか?

教師の大事な仕事は、生徒にわかってもらうことです。

単純化していうならば、いま教えたい内容を、生徒がわかってくれたら成功、生徒がわかってくれなかったら失敗です。そうですよね。

複雑な内容を生徒に教えるときには、何段階かのステップを踏んで教えることになりますが、大事なのは各ステップで生徒が必要な理解度に達してくれることです。簡単に言えば、教師が教えている内容にきちんと生徒が「ついてきているか」が大切なのです。

そこで教師は生徒に対して、各ステップごとに、

 「わかりましたか?」

と聞くことになります。

 「こんなふうにすれば方程式が解けます。
  わかりましたか?」
 「このような手順で添付ファイルを送信できます。
  わかりましたか?」

このような「わかりましたか?」という問いかけによって、教師は生徒に対し、

 はい、これでまとまった一つのステップを教えたことになるよ。
 あなたはちゃんと「ついてきて」いますか。

と尋ねていることになります。

●いつ聞くか

教師は生徒に対して「わかりましたか?」といつ聞いたらいいのでしょう。

先ほども話した通り、

 「まとまった一つのステップ」を教えた後

に聞くのが普通ですね。

あまりまとまっていない細かい単位で、「わかりましたか?」「わかりましたか?」「わかりましたか?」としつこく聞くと、生徒がいやになる場合もあります(学習意欲の減退)。

その一方で、大量の情報を生徒に伝えた最後になって「わかりましたか?」と聞いてしまうのもまずいです。実はずっと最初のステップで生徒がわからなくなっていたという危険性があるからです。

それでは「まとまった一つのステップ」というのはいったいどんな大きさだと思えばいいのでしょうか。それは簡単です。それは、

 ・生徒が「何かできる」ようになった大きさ

です。言い換えれば、

 ・生徒が「わかった」ことを確かめられる大きさ

です。プログラミングなら「テスト可能な大きさ」でしょうか。

●どう聞くか

教師が「まとまった一つのステップ」を生徒に伝えて、

 「わかりましたか?」

と言った後、自然な流れは、

 「それでは、ほんとうにわかったかどうか確かめてみましょう」

となります。「まとまった一つのステップ」を伝え、「わかった」ことを確かめられる大きさになっているなら、それを実際に確かめたくなるのは人情です。

ですから教師は「わかりましたか?」と尋ねた後、軽いクイズや問いかけを使って生徒に確かめるのがいいですね。

 「こんなふうにすれば方程式が解けます。
  わかりましたか?
  ではすごく簡単なこの方程式を解いてみましょう」
 「このような手順で添付ファイルを送信できます。
  わかりましたか?
  それじゃ実際にさっき撮影した写真を添付して送信してみましょう」

こういう流れですね。
このようにすれば、生徒は自分が「わかっているか」を確認できることになります。

生徒が「自分はここまでのところがわかっている」と自覚することはとても大切です。「うん、ここまでは大丈夫だ」という安心感を持って次のステップへ進めるからです。次に続く教師の説明も集中して聞けるでしょう(学習意欲の増進)。

●大切なことは何か

「わかりましたか?」という問いかけで大切なことは、

 生徒の反応をしっかり見ること

です。理解の確認は、教師と生徒のあいだのきわめて重要な「対話」です。「わかりましたか?」と聞いていながら、生徒の反応を見ていないとすると、それは一方通行であり、対話とはいえません。

教師が生徒の反応を見ているか見ていないかに対して、生徒はとても敏感です。もしも教師がおざなりな「わかりましたか?」を発したら、生徒は、心の内でこう思います。

 何だ、この教師は。
 「わかりましたか?」と聞いていながらこっちの顔も見やしない。
 結局、自分が教えていることで手一杯で、
 生徒がわかろうがわかるまいがどうでもいいんだな。

生徒がこのように感じてしまったら、教師と生徒のあいだの「魔法の絆」は断ち切られます。そうなってしまうとそれ以降の伝達効率は激減です。

ですから、教師は機械的に「わかりましたか?」と聞くのではなく、生徒の反応をしっかりと見なければならないのです。

●わからないときにはどうするか

教師が「わかりましたか?」の結果、生徒がわかっているなら問題はありません。問題は生徒がわかっていないときにどうするか、です。これはケースバイケースですが、二つほど列挙してみましょう。

1. いま教えているステップ全体が先に進むために必須の場合。

この場合には、ともかくきっちりやり直すしかありません。その際には生徒に対して、

 「ここは次に進む上で必須のステップなんだよ」

という情報を与えてあげるといいでしょう。

そうしないと、生徒の心に「ここはもういいんじゃないの、先に進もうよ先生」という思いがわいてしまうからです。

2. いま教えているステップの一部が先に進むために必須の場合。

この場合には、ステップ全体をやり直すのではなく、適切にダイジェスト(短縮)して、生徒に提示する必要があります。つまり、生徒に対して、

 「全体はわからなくてもいいけれど、
  こことここは押さえよう。
  でないと次にいけないからね」

という情報を生徒に与えるのです。

ここで、教師の前準備が効いてきます。伝える内容を教師がしっかり把握し、深い理解に至っていれば、生徒の反応に合わせて適切なダイジェストが可能です。ここには裏技も何もありません。

●まとめ

今回の「教えるときの心がけ」では「わかりましたか?」をトピックにしました。

 ・教師は「わかりましたか?」で生徒の理解を確認する。
 ・「まとまった一つのステップ」を教えた後で確認する。
 ・「まとまった一つのステップ」とは、生徒が「わかった」ことを確かめられる大きさ。
 ・生徒が「わかった」ことを自分で確かめられると安心して次のステップへ進める。
 ・教師は、生徒の反応をよく見ること。
 ・わからないときには「必須項目」をうまく繰り返す。

以上のようなお話をしました。

今回の「教えるときの心がけ」は以上です。また次回を楽しみに!

 * * *

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結城浩

書籍執筆者。著書に『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。http://bit.ly/hyuki-mm にて「結城メルマガ」をnote配信中。https://bit.ly/girlnote にてcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

教えるときの心がけ

先生が生徒に、上司が部下に、先輩が後輩に、親が子供に「教えるときにはこうしてみては?」という話題をお届けします。

コメント4件

私ごときは、人に何か教えるほどの身分じゃないですからねえ。解説はとても分かりやすかったんですが……w
「わかりましたか?」「わかりました」「いいですか?」「いいです」という漫才の鉄板ネタのように、繰り広げられる機械的な受け答えはもはや死語といっていいくらいのものですが、こっちが急いでいたり、準備不足だったりするほど使ってしまう自分がいます。この文章を読んで大いに反省しました。
たいへんためになりました。心がけようと思います。
教える分かってもらうって難しいですね。とても勉強になったのでフォローしました。これからも勉強させていただきます。
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