
世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし(在原業平朝臣)
#在原業平朝臣 (ありわらのなりひらあそん) #古今和歌集 53 #jtanka #短歌
もしも世の中にまったく桜がなかったなら、春を過ごす人の心はどれだけのどかでしょうね。
「たえて」は「まったく」の意味。
「せば……まし」は反実仮想の表現。実際とは異なることを仮定した場合を想像して語る。
「のどけからまし」は「のどけから+まし」。「のどけから」はク活用の形容詞「のどけし」の未然形。「まし」は推量の助動詞「まし」の終止形。ここでは反実仮想を表す。
「世の中に桜がまったくない」というありえない状況を想定し、桜がなかったら「咲いたかな」「もう散るのかな」と思い煩うこともなく穏やかにすごせただろうにと思う。でも実際には桜はあり、何とも悩ましい思いをかき立てている。その複雑な心情を通して桜の魅力、春の悩ましさを描いている。
よのなかに たえてさくらの なかりせば はるのこころは のどけからまし