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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年11月21日 Vol.295

はじめに

おはようございます。結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

何だか、ここ数日で急激に寒くなってきました。

冬、到来ですね。

結城はのどが弱いので、 外出するときにはマフラーとマスクを愛用しています。 マフラーは首を温めるため。 そしてマスクは冷たく乾燥した外気を吸わないようにするため。

あなたも、どうぞ風邪など召しませぬように……

 * * *


新刊の話。

『プログラマの数学 第2版』が2018年1月に刊行になります。

先日アマゾンに商品ページが公開され、 ありがたいことに、 数学の新着ランキングで第1位となりました。 応援ありがとうございます!

 ◆数学ランキング(新着)
 http://amzn.to/2B1rAEF

 ◆数学ランキング(新着スクリーンショット)


現在は初校のゲラ読みをしているところで、 今週は編集部での初校読み合わせがあります。

第2版では書籍全体に細かい語句の修正が入りますが、 メインとなるのは、

 機械学習への第一歩

という付録の加筆になります。

どうぞこの第2版も、 いろんな方を新しい世界へ導くきっかけとなりますように。

応援よろしくお願いいたします。 目次などは、以下のページをご覧ください。

 ◆『プログラマの数学 第2版』(結城のページ)
 http://www.hyuki.com/math/

 ◆『プログラマの数学 第2版』(アマゾン)
 https://bit.ly/hyuki-math

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『数学ガール6』の話。

先週の結城メルマガで、 「ともかく、現在は第7章に集中、集中」 と書いていた『数学ガール6』の執筆。

土曜日に第7章がなんとかまとまり、 残りは第8章、第9章、第10章となりました。 これまでに書いたものをすべてプリントアウトしてみたところ、 「どさっ」という分量の紙の束となりました。

第8章を書き始める前に、 第1章から第7章までを紙で読み返すためです。

大変といえば大変ですが、 むしろ楽しさの方が強いですね。 そのつどがんばって書いている内容なので、 読み返すと自分にとってしっくりくるからです。 もちろんアラは見つかりますが、それはむしろ執筆への力となります。 アラが見つかるとなぜ力になるかというと、

 「ここまで出来ているんだから、もう少し頑張ろう!」

という気持ちになるからです。 自分で自分の目の前に、 ニンジンをぶら下げて走ってるようなものですね。

ともかく、次は第8章!

 * * *


数学を学ぶ人の話。

『数学ガール』の第1巻(いわゆる無印)が刊行されたのは2007年でした。 つまり「数学ガール」シリーズは今年で十年になります。

十年前に中高生で、 『数学ガール』という本を読み始めました、 と言っていた読者さんがいます。

十年経ったいま、そんな読者さんが、

 「結城がさっぱり理解できない難しい数学の話」

をしているのを見かけることがあります。 そのような体験は、率直に言って、すごくうれしいものです!

そのうれしさというのは、 「未来に対する貢献」を自分なりにできたのかも、 といううれしさかもしれません。

十年前に書いていたときには、 「未来に対する貢献」などということ、 まったく考えていなかったのですけれど。

 * * *


ミュートの話。

Twitterには「ミュート」という機能があります。

Twitterアカウントの「ミュート」は、 相手を「ブロック」したり「フォローの解除」をしたりせずに、 相手のツイートがタイムラインに流れなくなるという機能です。

 ◆Twitterアカウントのミュート
 https://support.twitter.com/articles/20171588

結城は、ミュートのことをたいへんいい機能だと思っており、 できるだけブロックせず、気軽にミュートするようにしています (念のため:定期的に見直してミュート解除もしています)。

Twitterは、みんなが自由に書き、 みんなが自由に読めるところが魅力だと考えています。 相手に「こんなことをツイートするな!」と押しつけることはしない。 相手のツイートを読みたくなかったら、 相手を黙らせるのではなく、自分の側で相手をミュートする。 これは、とても平和です。

不愉快なことを言ってくる人はミュート。 みんなリツイートしてくるけれど、 自分はその人のツイートを読みたくないときにはミュート。 とにかく気軽にミュートして、タイムラインを平和に保ちます。

ミュートとブロックはちょっと似ていますが、実はずいぶん違います。

相手をミュートすると、相手のツイートは自分には見えなくなります。 相手をブロックすると、相手のツイートは自分に見えなくなると同時に、 相手がこちらをフォローできなくなります。

ミュートは「私はあなたのツイートを見ませんけれど、 あなたは自由にツイートしてください。それはそれとして、 私のツイートは自由にお読みください」 というもの。

ブロックは「私はあなたのツイートは見ませんけれど、 あなたは自由にツイートしてください。そしてさらに、 私のツイートも読まないでください。また、 私のフォローもしないでください」 というもの。

結城の正直な気持ちとして、 「私のツイートは読まないでください。 私のフォローもしないでください」 となることは、今のところありません。

ブロックは積極的な拒否ですけれど、 現実的には意味がありません。 だって別のアカウント作れば読めるからです。

ミュートは違います。 私が何を読むかは、私のこと。 あなたが何を読むかは、あなたのこと。 このように分けて考えられるので、とても平和。 結城にとってのミュートは、そういう世界を作る機能です。

ミュートする相手は、必ずしも嫌な相手とは限りません。

誰しも、 「最近、じぶんは調子が悪いから、友達の幸福そうなツイートはつらい」 ということがあります。 その友達が嫌だというのでもないし、友達が幸福なのが嫌なわけでもない。 ただ、友達の幸福そうなツイートをいま見せられるのはかなわない…… というタイミングです。

そのような、一時的に距離を置きたいときにブロックで対処していたら、 かえってややこしいことになる場合もあるでしょう。 ここひと月だけミュート。ここ半年だけミュート。 そのような工夫は、SNS時代の心の健康術といえるでしょう。

大切な時間、大切な心を守るために、 ミュートを活用するのはよいことだと思っています。

 * * *


仕事の見極めの話。

結城は個人で仕事をしており、上司はいません。 ですから、 自分の仕事の管理は自分でしなければなりません。

自分の仕事の進め方を振り返ったり、 何か違和感がないか内省したりするのは大切なことです。 この結城メルマガ自体も、そのための一助となっています。 仕事について文章を書こうとすると、 自分の仕事を自然に振り返ることになりますから。

最近、気になっているのは、

 疲れるまで仕事をしがち

という傾向です。

言い換えると、 「今日の仕事をどこまで進めるか」 そして「今日の仕事をどこでやめるか」を判断するときに、

 もう疲れたからやめよう

と考えるということ。それが気になります。

言うまでもなく、疲れたときに無理して仕事を進めるのはよくありません。 疲れても無理して進めなくては!という言いたいのではなく、 自分の心の中に、

 疲れるまで仕事をしなければいけない

という気持ちがある点を問題にしています。

少し考えれば、その背後にある論理も見えてきます。 私は自分に対して「言い訳」をしたいのです。

 こんなに疲れたんだから、
 今日はもう仕事をやめてもいいよね!

と。でも、私はいったい誰に言い訳しているんでしょう。 そして何のために言い訳しているんでしょう。 そこに引っ掛かるのです。

一日の仕事を終える判断には、いくつか選択肢があります。

 (1)定時になったから、仕事を終えます(時間で判断)
 (2)今日のやるべきことを終えたから、仕事を終えます(成果で判断)
 (3)疲れたから、仕事を終えます(疲労で判断)

コンスタントに毎日の仕事を続けるなら、 時間で判断する(1)は無難。 でも、(1)だけを続けていると予定通り進まなくなるかも。

進捗をきっちり出していくなら、 成果で判断する(2)がいい。 でも、成果が出せなかったら無理してしまい、 継続性があやうくなりそうです。

そう考えると、自分の体調を基準にした、 疲労で判断する(3)は安全? 進捗を出しつつも、継続性を保てるから? でも、それは本当でしょうか。

自分の胸に手を当てて考えると、 どうも自分は「仕事がしたくない」ときに、 無意識のうちに「疲れる作業をチョイスする」 という傾向があるようです。

やっても無駄だとうすうすわかっている作業を始めたり、 難しすぎて読みこなせない本を読み始めたりするということです。 それで自分を早めに疲れさせて、

 あー、もー、疲れちゃった。
 こんなに疲れたんだから、
 今日はもう仕事をやめてもいいよね!

と自分に言い訳をしたがっているみたい。

そんなことに気づきました。

人間の心って、何てめんどくさいんでしょう。 いや、単純なのかな?

あなたは、 勉強や仕事の終わりをどう判断していますか。

 * * *

それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

はじめに
意味の深掘り - 数学ガールの執筆メモ
たった一人のために書こう - 本を書く心がけ
おわりに

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