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レビューアさんはどうやって選ぶ?(本を書く心がけ)

質問

「数学ガール」シリーズの執筆では、複数のレビューアさんに原稿をチェックしてもらっているとお見受けします。ところで、そもそも最初にレビューアさんに見てもらおうと思ったのはなぜでしょう。

また、最初の人選はどうしたか、最初のコンタクトはどうしたか、などが気になります。

結城浩のメールマガジン 2017年10月10日 Vol.289 より

回答

ご質問ありがとうございます。

はい、結城は本を執筆するときに、複数のレビューアさんに原稿を読んでもらっています。レビューアさんに読んでもらった本は、概算になりますが、25〜30冊くらいになります。

一般的な話やレビューを行う際の心がけについては、拙著『数学文章作法 推敲編』で詳しく書きましたので、この記事ではもっと個別的で具体的な話を書きますね。

◆『数学文章作法 推敲編』

レビューを始めた理由

結城が自分の本を「一般の人に読んでもらおう」と思ったのは、ずいぶん昔の話になります。

最初は1998年のこと。『Perlで作るCGI入門 応用編』という本を書く際に、そこに掲載するプログラムを読んでもらおうと思ったのです。つまり、最初は「本を読んでもらう」のではなく、「本に掲載するプログラムを読んでもらう」ためのレビューアさんだったのですね。

一般の人に読んでもらおうと思った理由は当初、

「まちがいを見つけてもらう」

ことに主眼があったと思います。

自分一人で考えて書いているだけだと、まちがっているかもしれない。ですから、他の人に読んでもらうことでまちがいを見つけてもらおう。そのような単純な発想だったと思います。

そのときの感触がとてもよかったので、それ以降、ほとんどの書籍を一般の方にレビューしてもらっています。二冊目からはプログラムだけではなく、原稿の方も読んでもらうようになりました。

その中で、私が考えるレビューの目的も変化してきました。それは、単にまちがいを見つけてもらうことから、

「読者が受ける印象を教えてもらう」

ことへの変化です。

まちがいの指摘はもちろん重要です。でも、それよりも読者が受ける印象、つまり、

  • むずかしいか、やさしいか

  • よみやすいか、よみにくいか

  • 親しみがもてるか、もてないか

といったことを伝えてもらうことも重要です。それらは、書き手としての結城が知り得ない情報だからです。

ここで大事なのは、読者が受ける印象が読者の言葉として現れるとは限らないという点です。レビューアさんは、自分の感じたことを言葉にしてくれますが、著者として結城がそれを読むときには、その向こう側にいる読者のことを注意深く想像します。

具体的には、

  • レビューアが言及しなかったこと

  • 複数のレビューアが言及したこと

  • レビューアが誤解したところ

などに特に注目します。

レビューアの人選とコンタクト

人選の方法は大きく分けて以下の二通りを経験しました。

  • 結城が声を掛ける(一本釣り)

  • ネットで募集する(公募)

最初は「一本釣り」をしました。

つまり、結城が直接レビューアさんにメールなどで声を掛け、「レビューしてもらえませんか」とお願いするということです。

そのときの判断基準は、メールのやりとりをしたことがある中で、

「話が通じる人」

というくらいのゆるい基準でした。

結城が行うレビューは「オンラインレビュー」すなわちネットだけ(しかもメールベース)で行いますから、メールで話が通じる人でないと意味がないからです。

プログラミング技術の本の際には、

「プログラミングについて詳しい人」

や、

「自分の本の読者層にマッチする人」

に声を掛けました。

以上が「一本釣り」の話。

初版の『暗号技術入門』のときには「公募」もしました。

つまり、ネットで「レビューア募集」と看板を掲げて、応募してくださる人を待つという方法です。

これで多くのレビューアさんを獲得することができましたが、その一方でレビューアさんが多すぎるという状況も経験しました。レビューアさんが多すぎると、メールをさばくのが難しくなるので、肝心の執筆に悪影響がありますね。

しかしながら、公募で知り合ったレビューアさんの中には、現在でもレビューをお願いする方もいます。ある程度の数のレビューアさんに読んでもらうことも、波長の合うレビューアさんを見つける上で大事かなと思います。

現在のやり方

現在は、これまでのレビューアさんに声を掛けつつ、ときどき新しいレビューアさんも開拓するという方法をとっています。いつも同じレビューアさんですと、結城が慣れてしまうという弊害があるからです。

全体で25〜30名ほどで、毎回2〜5名くらいメンバーを入れ換え、レビューをお願いする依頼メールを送っています。

結城が、著者としてレビューアさんに対して抱く感情は、ひたすら感謝しかありません。しかし、それはそれとして、レビューの際には、

  • 感謝しつつ敬意を忘れないが、馴れ合わない。

  • 意見には注意深く耳を傾けるが、依存しない。

という態度を保とうと考えています。

著者はレビューアに向けて書いているわけではなく、読者のために書いているわけですから(多くの場合、レビューアさんと読者さんは同一人物になるのですが、まあ、役割として)。

どんな場合も《読者のことを考える》というのが原則なのです。

以上、お答えになっているでしょうか。

またどんなことでもご質問ください!

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