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偏差値と自分の将来/環境が変わる不安に対処する/質問が不明瞭に/インクリメンタルな環境改善(5)/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年3月12日 Vol.363

目次

・何を質問したいのか不明瞭になっていくとき
・環境が変わる不安にどう対処するか - 仕事の心がけ
・偏差値は自分の将来にどれほど影響するのか - 学ぶときの心がけ
・インクリメンタルな環境改善(5) - 仕事の心がけ


はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

* * *

レビューア募集の話。

結城は現在「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第11冊目、

 『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』

という本を執筆中です。数学とプログラムの話題が入り交じった対話形式の物語になります。本書の執筆にあたり、この原稿を読んでレビューしてくださる方を募集しています。

以下のリンク先に書かれていることをよくお読みの上、もしもやってみたいというお気持ちがあるならば、ぜひご応募ください。

◆レビューア募集『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』
https://math.hyuki.net/20190301120025/

現在二十数名の応募があるという状況です。先着順や抽選ではありませんが、ご参考まで。

〆切は2019年3月15日(金曜日)になります。

* * *

本を読む話。

今年は意識的に本を読もう」という運動を勝手にやっています。先日は『授業つくり上達法』という本を眺めていました。

◆『授業つくり上達法 だれも語らなかった基礎技術』(大西忠治)
https://www.amazon.co.jp/dp/4838302215/?tag=hyuki-22

この本の中に、シャープペンの話題が出て来ました。生徒がシャープペンを使うのがいいかわるいかという話題。大人の感覚だと、シャープペン使ってもいいじゃないかと思うのですけれど、この本を読んでいて「そうでもないかも」と思えました。

この本の中では「授業中にシャープペンを使うのはいいけれど、授業中にシャープペンの芯の入れ換えをするのは禁止している」という話題が出て来ました。最初は意味がわからなかったのですが、授業のようすを想像してみると「なるほど」と思えます。

どんなに魅力的な授業をしても、シャープペンの芯の入れ換えをしているときの子供の耳には届かないのだそうです。シャープペンの芯を、本体の細いところにスウーッと入れる。注意深くやらないとうまくいかない。その間は確かに先生の声は耳に入らなさそうです。

この本には、授業中の教師は板書のときであっても、黒板に向くのは四割、生徒の方を向くのが六割という「四分六の構え」という話も出てきました。完全に黒板の方を向いてしまうと、生徒の興味がふっと途切れてしまうからでしょう。完全に黒板に向かなくてはいけないときには、生徒に言葉で問いかけをしながら板書するのだとか。いろんな工夫があるものですね。

今回この本を読んだのはたまたまです。以前お話したように、手元のPDFを眺める「シェルフ(本棚)」という仕組みを作ったので、それを使っているときに偶然見つかった本を開いたのです。

「偶然見つかった本」ではあるのですが、そもそもこの本を購入したのは自分なので、まったく興味関心がない本というわけではありません。

本を書くというのは広い意味での教育と言えなくはないので、学校の先生の指導書のような本でも、参考になることが多々あるのですね。

* * *

それでは今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。

何を質問したいのか不明瞭になっていくとき

質問

結城先生に質問してみようと思うことがいくつかあります。

でも、自分の質問を文章にして推敲しているうちに、質問の意図が不明瞭になってくることがあります。

結城先生もそのようなことはありますか。

そういう場合は、どのように対処しますか。

回答

ご質問ありがとうございます。

そうですね。質問の意図が不明瞭になっていくという経験は、なくはないですが、それほど多くはありません。質問しようと思っているときは不明瞭でも、文章化していくうちに明瞭になっていくことが多いと思います。文章化する、言語化するというのは、まさにものごとを明瞭にする効果があるからです。

あっと、もちろん、なかなか文章化できないことはあります。それはたいてい、

 「たくさんのことをいっぺんに考えようとしているとき」

になります。自分は「ひとつのこと」を考えていたつもりなのですが、実は「たくさんのこと」を考えていたのですね。たくさんのことをいっぺんに考えたり、いっぺんに扱おうとすると混乱したり途方にくれたりします。

そういうときはどう対処するか。もちろん分解して整理することになるのですが、質問するための文章を例にとるなら、

・とりあえず知りたいこと
・最も聞きたいこと

に絞るという方法は簡単でしょう。要するに「たくさんのこと」はあきらめて「ひとつのこと」に絞るのです。

それから、これはあなたの状況とは違うかもしれませんが、人になかなか質問できない人の中には、

 「自分の側で回答が用意できないと質問できない」

という人がいます。回答が用意できないと質問できないというのは変な話に聞こえますね。どういうことかというと、自分がよくわかっていない状態なのに、

・自分で原因を特定し、
・自分で解決方法を決定し、
・自分で回答を用意する。


そうしてからでないと気が済まない人がいるのです。答えを用意してから質問しにいくということです。

答えを自分で考えるのは悪いことではありませんが、時間が掛かりすぎて質問できなくなるのは困りますね。質問がうまい人は、自分の状況を相手に詳しく伝えて、そもそもの原因特定のところから相手と協力して進めようとするものです。

あなたの状況とは違うかもしれませんが、うまい質問の仕方についてはこちらもご覧ください。

◆技術系メーリングリストで質問するときのパターン・ランゲージ
http://www.hyuki.com/writing/techask.html

ご質問ありがとうございました。

環境が変わる不安にどう対処するか - 仕事の心がけ

質問

新年度から、今まで住んでいたのとは別の「新しい場所」で働くことになりました。

自分ではそのことを不安だとは意識していませんでした。ところが、新しく住む場所の話題を目にしたときに「これから行くところだ!」と嬉しくなるより先に「なんでこんなところに…」といった反発を覚えてしまうことに気付いたのです。

これは「環境が変わる不安」から来た反発ではないかと思い至りました。移る先は、特に会社などで強制されたわけではありません。あくまで自分で決めたところなのにも関わらず、そんな気持ちになったのです。

頭では楽しみにしているつもりです。また、これから住む「新しい場所」のことを悪く思いたくはありません。しかし、自分の心がまだ追い付いていないのかもしれないと思っています。

結城先生はどう思われますか。

不安を和らげるアドバイスが何かあればお願いします。

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