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ひと知れず思へばくるし紅のすゑつむ花のいろに出でなむ

#読人しらず #古今和歌集 496 #jtanka #短歌 #恋

人知れず思っているから苦しいのです。紅の末摘花の色のように、私の気持ちも表に出してしまいましょう。

「思へば」は「思へ+ば」。「思へ」はハ行四段活用動詞「思ふ」の已然形。「ば」は接続助詞。ここでは已然形に接続しているので順接の確定条件を表し「思うので」の意味。もしも「思はば」のように未然形に接続していたら順接の仮定条件を表し「思うならば」の意味。

「すゑつむ花」は「紅花」の異名。

「いろ」は「色」と「表情・そぶり・顔色」の二つの意味を掛けています。668も参照。

「出でなむ」は「出で+な+む」。「出で」はダ行下二段活用動詞「出づ」の連用形。活用は〔で・で・づ・づる・づれ・でよ〕。「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形。「む」は推量の助動詞「む」の終止形でここでは意志を表します。「出でなむ」は「出してしまおう」の意。

推量の助動詞「む」がどうして意志を表しうるのかというと、「む」は未確定なことに関する語り手の主張を表すからです。「だろう」と推量することも、「しよう」と意志を表すことも、未確定なことに関する語り手の主張になります。未確定なことに関する主張なので「む」は未然形に接続します。

ひとしれず おもへばくるし くれなゐの すゑつむはなの いろにいでなむ
ひとしれず おもえばくるし くれないの すえつむはなの いろにいでなん

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