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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年7月24日 Vol.330

/情報の取捨選択/AI技術が待ち受ける未来に向けてどう学ぶか/打ち合わせの思い出/自分のことをわかってもらいたいが、うまく話せない/

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

あなたはいかがお過ごしでしょうか。

「数学ガールの秘密ノート」シリーズ10作目『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』を現在執筆中です。先週末にようやく第1章から第5章まで、つまり本文の大半を編集部に送ることができました。応援感謝!

◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』(アマゾン)
https://bit.ly/hyuki-matrix

現在は残りの部分、すなわち「プロローグ」「エピローグ」「あとがき」といった周辺部分を書いているところです。レビューアさんからのフィードバックメールを原稿に反映していく作業も残っていますが、ようやくゴールが見えてきました。

もう一息、がんばります!

それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。どうぞごゆっくりお読みください。

目次

本当の幸せとは
どうやって情報を取捨選択するか - 学ぶときの心がけ
発達するAI技術が待ち受ける未来に向けてどう学ぶか - 学ぶときの心がけ
『数学ガール/ポアンカレ予想』打ち合わせの思い出 - 仕事の心がけ
自分のことをわかってもらいたいが、うまく話せない


本当の幸せとは

質問

宮沢賢治の言葉で「本当の幸いって何だろう?」と言うのがずっと頭に引っかかっています。 本当の幸せって何だと思いますか?

個人的には、貧乏でも家族が笑っていれば幸せだったように思います。

回答

ご質問ありがとうございます。

特に答えは書きません(書けません)けれど「本当の幸せとは?」のような大きな質問に対して考えるときに注意していることがあります。それは、明確に考えるためには条件を設定する必要があるということです。当然のことですけれど。

「本当の幸せとは?」という質問を見たときに結城は「とても大きな質問だから、分解して考える必要がある」と思いました。さらに「そのためには考えるための条件設定が必要だ」とも思いました。

条件設定というと難しそうですが、簡単な話です。たとえば「本当の幸せとは?」に対して「《誰》にとっての幸せを考えているのか?」のように対象となる人間に焦点を当てる方法があるでしょう。

私は「本当の幸せ」を考えるときに、誰にとっての幸せを考えるのか。普通に考えれば「自分」になりますが、もしかしたらそれは意味がなくて「自分と自分に関わる人々」について考える必要があるのかもしれません。あなたが書いていた「貧乏でも家族が笑っていれば」というときには暗黙のうちに「自分と家族」についての幸せを考えていますね。

他の条件設定としてはたとえば「どのくらいの《時間幅》での幸せを考えているのか?」というものもあります。

たとえば「一瞬だけ幸せ」というのは本当の幸せといえるでしょうか。「三日間だけ幸せ」「三年間だけ幸せ」「三十年だけ幸せ」「生きている間だけ幸せ」などを考え、比べたくなります。

以上、二つの条件設定について書きました。理屈っぽ過ぎるかもしれませんが、条件設定を行うと考えが広がり、また深まると思います。

たとえば、《誰》を考えると、自分はすぐに「そういえば、あの人はどういうときに幸せなのかを自分は知らないな」ということに気付きます。

また、《時間幅》を考えると「どんな活動も、換言すれば未来の幸福のために行っているのではないか」などと発想が広がります。

そして、自分の場合でいうならば、「いまこの幸せが手に入るなら、未来に苦労してもいいや」とは思いがちですが、「未来に幸せが手に入るなら、いま苦労してもいいや」とはなかなか思えないことにも気付きます。

そもそも「幸せ」というのは自分の客観的状態のことなのでしょうか。それとも幸せだと自分が感じる主観的感覚なのでしょうか。あるとき自分が非常に苦しみ、辛い思いをしても、後から考えると「実はあれは幸せなことだったのだ」と思うことは少なくありません。そんなことを思い始めると、いくらでも時間を使って「本当の幸せとは?」と考えてしまいそうになります。

「本当の幸せとは?」という問いは、答えを求めるためではなく、自分自身が何を大切にしているかという価値観を改めて考え直すための問いなのかもしれませんね。

ご質問ありがとうございました。

どうやって情報を取捨選択するか - 学ぶときの心がけ

質問

本屋に行くと、おもしろそうな本がたくさんあってわくわくします。でも読みたい本を全部読むことは不可能で、それが悩みどころです。

結城先生は、情報の渦の中からどのように自分がインプットする情報を取捨選択していますか。

回答

ご質問ありがとうございます。

おもしろそうな本がたくさんあってわくわくするというのはいいですね!

若いときは、何も考えずにたくさん読んでいました。二十歳くらいから「本を繰り返し読む」のが好きになりました。必然的に読む冊数は減りましたが、繰り返し読むことで、自分自身を理解するのに役立ちました。自分という存在は「こういうのが好きなんだな」と自覚することが多くなりました。

繰り返し読みを始めると同時に、世の中には「繰り返し読み」に耐えられない本がたくさんあることも知りました。一度読んでおもしろくて終わり、というのが悪いわけではありません。でも、繰り返し読める本を繰り返し読むという時間の使い方は大事だぞと思うようになりました。

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結城浩

書籍執筆者。著書に『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。http://bit.ly/hyuki-mm にて「結城メルマガ」をnote配信中。https://bit.ly/girlnote にてcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

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