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文献を早く読む/勉強ができる子へのケア/noteで書く・本を出版する/人間関係と「無知の知」/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2020年1月14日 Vol.407

目次

・文献を早く読むにはどうするか - 学ぶときの心がけ
・勉強ができる子へのケア - 学ぶときの心がけ
・「noteで書くこと」と「本を出版すること」の落差 - 本を書く心がけ
・人間関係と「無知の知」

はじめに

結城浩です。

いつもご愛読ありがとうございます。

実は、先週木曜日から体調を崩して、三日ほど寝込んでいました。ちょっとした疲労と風邪で、いつものようにのどの痛みが症状の中心でした。

いまはだいぶ治って、咳が少し残るだけです。それにしても、一月は忙しいのに三日もふっとんでしまいましたよ。健康管理は大事ですね……。

* * *

映画音楽の話。

寝込んでいるあいだは、本も読まず動画をいくつか視聴していました。

その中で『すばらしき映画音楽たち』という映画を一気に観てしまいました。「映画音楽を作る」という創造の現場が持つ魅力のためでしょうか。

この映画には、たくさんの名作映画が登場し、その音楽がどのようにして作られたかが描かれています。ET、ロッキー、ロード・オブ・ザ・リング、パイレーツ・オブ・カリビアン、007……タイトルを並べるだけでも、メロディが聞こえてきそうですね。

興味深かったのは映画音楽におけるモチーフの使い方。記憶に残るフレーズを映画中に繰り返し使うことで、観客の無意識に対してメッセージを送り、場面の印象を形作っていくようすが語られていました。作曲家はそんな活動を意識的に行っているのです。わくわくする話題ですね。

視聴者は、完成後の音楽しか聴いていませんから、映画と音楽が不可分のものになっています。ロッキーのテーマや、007のオープニングや、ダースベイダーのテーマなど、他の曲を合わせることなんて想像すらできないでしょう。映画と音楽は不可分。当然ですね。でも、音楽を作っている側はまだ音楽がないところに音楽を作らなくてはいけません。これも当然です。当然なんですが、あまり意識したことがありませんでした。

「新しいものを作る」というのは、そういうことなんだなと改めて思いました。できてしまえば当たり前に見える。それ以外の形なんてありえないように思える。でも、「それ」を作った人は、その形がないときに「それ」を作ったのですね。

2017年の映画ですが、現在Amazon Prime Videoで視聴できます。ぜひご覧下さい。

◆すばらしき映画音楽たち(字幕版)https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B078GX9Q3W/

* * *

PenCakeの話。

PenCakeは、iPhoneやiPadのメモアプリです。メモアプリは無数にあるのですが、PenCakeはシンプルでちょっとおしゃれなのが特徴です。物語を書くような雰囲気で自分の日記やメモを書くことができます。何しろ、大見出しがいきなり「物語」になっていますからね。自分の物語を書き留める……みたいなアプリです。

日常の記録というよりも、たとえば旅行記や、何かの観察日記や、秘密の物語執筆など、テーマを定めて書くのがしっくりくるかもしれませんね。

◆PenCake

* * *

香山哲さんとTakuya Matsuyamaさんの話。

香山哲さん(@kayamatetsu)のことはネットのコミック『ベルリンうわの空』を通して知りました。一風変わった絵柄と、エキゾチックな内容の文章が好きであちこちでフォローしています。noteで定期購読マガジンも購読しています。

◆香山哲『ベルリンうわの空』(ebookjapan)
https://www.ebookjapan.jp/ebj/special/berlin_up_in_the_air/index.asp?dealerid=30077

◆香山哲『ベルリンうわの空』(アマゾン)

先日は香山哲さんの「定期購読マガジンのレポート」という記事を興味深く読みました。

◆定期購読マガジンのレポート(1) - 香山哲

どういうことを考えて定期購読マガジンを始めて、実際はどうなっているか。人数についてどのように考えているか。そもそも自分の作り出すものの講読者数の見積もりをどう考えているか。そういう想定が語られているレポートでした。結城自身がそれをぜんぶ取り入れるわけではありませんが「なるほど、そういう見方はおもしろい」と視野が広がるレポートでした。

そういえば、方向性は違うけれど Takuya Matsuyamaさん(@craftzdog)が書く「個人開発で食っていく話」も結城は大好きです。

◆週休7日で働きたい - Takuya Matsuyama
https://blog.craftz.dog/

Takuyaさんは、MarkdownエディタのInkDropを開発してそれで生計を立てている有名な開発者です。アプリ年間売上が776万円で、課金ユーザ数が1,429人とのこと。すごいですね。

◆2019年の活動成果まとめ・来年やりたいこと - Takuya Matsuyama
https://blog.craftz.dog/thank-you-2019-129c36b9b9de

恐らく結城は、

 (1)個人で何かユニークなものを作ることができて、
 (2)それを気に入ってくれる人がある程度の人数いてくれて、
 (3)それによって自分の生活が成り立つ……

……そんな状況に強く惹かれるのだと思います。

* * *

それでは、今回の結城メルマガもごゆっくりお読みください。

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文献を早く読むにはどうするか - 学ぶときの心がけ

質問

数学書やプログラミング言語のドキュメントなどの「ややこしくてすぐには理解できないような文献」をなるべく早く読まないといけないとき、どうするのがよいでしょうか。

回答

ご質問ありがとうございます。

あなたの質問は「なるべく早く読むにはどうするか」ですけれど、そこには情報がずいぶん欠けています。早く読むこと自体があなたの目的ではないですよね。何かを知るためか、必要な情報を探すためか、何かを書くためか……ともかく本来の目的があるはずです。その目的のために早く読みたい。

また「なるべく早く」とはいいますが、予定した〆切があるはずですよね。多くの場合、時間を掛ければ深くたくさん読めますから、掛けた時間と理解度のあいだにはトレードオフがあります。

品質は、指標が決まらないと評価できません。そのドキュメントを、どんな目的で、いつまでに読む必要があるのかを定めましょう。

大原則として、理解のスピードを上げる方法はありません。ですので、目的を絞るか、時間を稼ぐか、他人を頼ることになるでしょうね。

「目的を絞る」というのは具体的には「何のために読むのか」と自問して、その目的にまっしぐらに向かうことです。たとえば、特定の概念を知るために読むとしたら、目次や索引でまっさきにその概念について読む。そしてわからないところがあったら、そこからさかのぼっていくことになります。「ややこしくてすぐには理解できないような文献」の場合には、概要や目次や索引や用語集など、理解を助けるための表現上の工夫があることが多いですから、それも活用しましょう。

ただ、本を読む場合は「急がば回れ」になることもよくあります。むしろ急がない方がよかったという場合も多いですので、ご注意ください。

「時間を稼ぐ」というのは具体的には「〆切を延ばす」ということです。あるいは一日でそのドキュメントに向かう物理的な時間を増やすことです。そうすれば日数を稼げます。ただし、せっぱつまっても睡眠時間を削るのはやめた方がいいです。

「他人を頼る」というのは具体的には「こういう目的のために、いつまでに○○について知りたい。どこを読めばいい?」と聞くことです。あるいはもっと直接的に「○○ってどういうこと?」と他人に教えてもらうのもいいですね。適切な相手に教えてもらえば、ドキュメントを読む時間を大幅に短縮できます。

私自身の話をします。私の場合、本を急いで読む必要があるときというのは、何かの文章を書く資料にするときが多いですね。その場合「こんな情報が書いてないかな?」という想定のもとで複数の本に当たることが多いです。ですから、最初はあまり深く読まず、期待する情報が書いてあるか否かで本をセレクトし、後から目的の箇所だけをじっくりと読むパターンになります。

あなたも、自分がそのドキュメントを読む目的を明確にすると、方針を立てやすいと思いますよ。

ちなみに、数学書の場合、その内容を深く理解することが目的ならば、あまり早く読むことは望めないと思います。スピードを上げることができない部分、すなわち「理解」の部分がどうしても律速になるからです。

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勉強ができる子へのケア - 学ぶときの心がけ

質問

小学校でも中学校でも、算数や数学がわからない生徒へのケアは厚いのに、わかる子や楽しい子へのケアがなかったり、邪魔者扱いされたりすることが多いようです。

周囲に聞いても「学力の高い高校に入るまで辛かった」という人が多いです。勉強ができることはよくないことではないですよね?

回答

もちろんです。勉強ができることはよくないことではありません。

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結城浩

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書籍執筆者。著書に『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。http://bit.ly/hyuki-mm にて「結城メルマガ」をnote配信中。https://bit.ly/girlnote にてcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。