恋ひ恋ひて稀(まれ)に今宵(こよひ)ぞ逢坂(あふさか)の木綿(ゆふ)付け鳥は鳴かずもあらなむ
読人しらず 古今和歌集634 #jtanka
ずっとずっと恋し続けて、今夜ようやく逢うことができた。逢坂の関にいる木綿付け鳥よ、おまえが鳴いたら私は帰らなければならない。夜が明けてもどうか鳴かないでおくれ。
「恋ひ恋ひて」は「恋ひ恋ひ+て」。「恋ひ恋ひ」は動詞「恋ひ恋ふ」の連用形。「恋ふ」という一つの動詞を重ねると「恋し続ける」という継続の意味になる。「て」は接続助詞。「恋ひ恋ひて」は「恋し続けて」の意味。
「稀に」は形容動詞「稀なり」の連用形で「まれに」「めったになく」の意味。
「今宵ぞ逢ふ……」と言いかけて「……逢坂の」と続く。このために係助詞「ぞ」の結びは流れてしまった形になる。
「逢坂の木綿付け鳥」の「逢坂」は「逢う」に掛けている。「木綿付け鳥」は都の四境の関所で祓えの祭事に使った、木綿を付けた鶏のこと。「逢坂」は「逢う」に掛けている。通常は「逢坂」は「おうさか」と読むが、「あうさか」と読んだ方が「逢う」に掛けて読みやすいと思う。
「鳴かずもあらなむ」は「鳴か+ず+も+あら+なむ」。「ず」は否定の助動詞「ず」の連用形。「も」は強意の係助詞「もまあ」の意味。「あら」は動詞「ある」の未然形。「なむ」は活用語の未然形に付いて他に対する願望を表す終助詞「……てほしい」の意味。「鳴かずもあらなむ」は「どうか鳴かないでほしい」。
こいこいて まれにこよいぞ あうさかの ゆうづけどりは なかずもあらなむ
※Photo by webtreats.
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