いつもと違う選択をする週(仕事の心がけ)
一人で仕事をしていると、煮詰まることがある。
あっと、話を先に進める前にちょっと説明。現在「煮詰まる」というのは意味が揺れている言葉の一つで「議論やアイディアが形になってまとまる」という良い意味と、「うまくいかなくて膠着状態になる」という悪い意味の両方があります。いま書いたのは「膠着状態」の方。
一人で仕事をしていると、煮詰まることがある。
何だか調子がでなくて、どうもうまくいかない。作業は進んでいるのだけれど、思うように進まない。自分が書いていることが全部陳腐なことのように思える。陳腐ならばまだしも大きなまちがいを書いているんじゃないか、とまで思えてくる。
自分の中から新しいものが何も出てこない気分。
うん、確かにそれは煮詰まった状態である。
他人がそばにいると、あーだこーだ話したりして、適度に揺さぶられるので、煮詰まった状態から落ち込む状態になることは少ない。
でも一人で書いていて油断すると、煮詰まった状態から落ち込む状態になる場合がある。とても危険だ。
仕事が忙しくなければ、ぽんといろんなものを放り出してサボるというのは良い手だ。でも、忙しいとそれもちょっと難しい。だからこそ煮詰まるわけだけれど。
そんなとき、最近編み出した技法がある。それは、
「いつもと違う選択をする週」
を設けることである。ふだん通りの生活を送っていてかまわない。ただし、何か選択をする局面になったら、理由はどうでもいいから、可能な限り、
「いつもと違う選択をする」
のである。
選択といってもつまらないことでかまわない。
たとえば、通る道。駅まで歩く道ってたいてい決まっている。ここで曲がってあそこで道路を渡る、みたいに。それを変える。いつもと違う角で曲がり、いつもと違う横断歩道を使う。それだけでいい。
たとえば、食べるもの。「お昼に、あの店でおそばを食べる」みたいな習慣を変える。いままで入ったことのない店に入る。あるいは、いつもと同じ店ならこれまで一度も頼んだことのないメニューにする。それだけでいい。
着る服、見る番組、使うアプリ、仕事の手順、エレベータか階段か……意識すると、自分はいかに毎日多くの選択をやっているか、よくわかる。そしてその大半が「いつもと同じ」選択をしていることも。
それを、変える。
今週は「いつもと違う選択をする週」だから。
遠回りになってもいい、ひどくまずい昼食になってもいい、多少効率が落ちてもかまわない。ともかく、いつもと違う選択をしてみる。
そうすると、何が起きるか。
当然ながら、いつもと違う「何か」が起きる。
先日、結城の「煮詰まった状態」は、この「いつもと違う選択をする週」でほぐれた。いつもと違う選択をし、いつもと違う何かがたくさん起きて、それが、なぜか、自分の心のどこかに作用したみたい。
「煮詰まった状態」が嘘みたいに柔らかくなって、まったく違った局面にするするっと移っていった。
なので、みなさんにもお勧め。
「いつもと違う選択をする週」
いかがかな?
* * *
※結城浩はメールマガジンを毎週発行しています。あなたも購読してみませんか。
https://mm.hyuki.net/m/m73f865053b52
※結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年6月16日 Vol.168より