決めなければ、動けない(コミュニケーションのヒント)
※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。
ディスカッションは大事です。でも、誰かが決めなければ仕事が進まないこともあります。
グループで作業しているとしましょう。
リーダーが他の人の意見をまったく聞かずに突き進むのはまずいですね。でも、「みんなで話し合いましょう」だけでも困ります。
複数人が効率よく動くために、「決める」ことは大切なアクションなのです。
× 誰も決めなかった例
リーダー「今日のミーティングでは来月のデモについて打ち合わせる。自由に意見を言ってほしい」
メンバーA「来月のデモは一般の方がターゲットですから、技術的要素は少なめにして、《楽しさ》や《簡単さ》をアピールしたほうがいいと思うんですよね」
メンバーB「一般の方とはいっても、うちの製品を見に来るのは技術者メインじゃないかな。薄っぺらいデモじゃだめだよ」
リーダー「なるほど、他には?」
メンバーC「予算のこともあるんですよね。先月頑張りすぎたじゃないですか。来月は控えめにしないとまずいと思うんですけれど…」
リーダー「それは確かにそうなんだよ」
メンバーA「控え目にするなら、やっぱりポイントを絞って、そこを重点的にアピールするのがいいよ」
メンバーB「それは違う。うちの技術力も最近注目集めてるんだから、コンスタントにそれをアピールしなくちゃ…」
リーダー「なるほど…」
メンバーC「でも、全体方針が決まらないと、細部までつめられないですよ」
リーダー「それもそうだ…」
メンバーB「技術力をきちんとアピールできなかったらデモの意味ないし」
メンバーC「ない袖はふれないんだけどな。予算が無限にあるわけじゃなし」
リーダー「そうだよね…」
メンバーA「マンネリじゃデモの意味ないよ。新機軸への挑戦だって必要だ」
リーダー「それも確かにそうなんだよね…」
メンバーB「…」
リーダー「確かにね…」
メンバーC「…」
リーダー「そうだよね…」
メンバーA「…」
リーダー「そういう考え方もあるよね…」
メンバーは、それぞれに有意義な意見、一理ある意見を出しています。
リーダーが、みんなの聞き役になるのは大事なことです。しかしながら、グループとして動くためには、どこかで誰かが「決める」というアクションが必要になります。
△ リーダーが「決める」アクションをとった例
リーダー「今日のミーティングでは来月のデモについて打ち合わせる。自由に意見を言ってほしい」
メンバーA「来月のデモは一般の方がターゲットですから、技術的要素は少なめにして、《楽しさ》や《簡単さ》をアピールしたほうがいいと思うんですよね」
メンバーB「一般の方とはいっても、うちの製品を見に来るのは技術者メインじゃないかな。薄っぺらいデモじゃだめだよ」
リーダー「技術的要素をどれだけアピールするかという調整は確かに大切だな。他には?」
メンバーC「予算のこともあるんですよね。先月頑張りすぎたじゃないですか。来月は控えめにしないとまずいと思うんですけれど…」
リーダー「確かにそうなんだよ。先月のデモは、あれはあれで効果はあったんだが」
メンバーA「控え目にするなら、やっぱりポイントを絞って、そこを重点的にアピールするのがいいよ」
メンバーB「それは違う。うちの技術力も最近注目集めてるんだから、コンスタントにそれをアピールしなくちゃ…」
リーダー「AくんとBさんの意見は、さっきと同じで、技術的要素のアピールという観点だよね」
メンバーC「でも、全体方針が決まらないと、細部までつめられないですよ」
リーダー「それもそうだ。これじゃ話が発散しそうだな」
メンバーA「だからやっぱり技術的要素は少なめにするのがいいな」
リーダー「うーん…《じゃ、こうしてみようか》。実は予算の問題はかなり上から言われているんだ。だから、来月は予算を抑える。Aくんの言うような新機軸もいいんだけれど、新しいデモセットを準備する必要がでちゃうよね。だから、できるだけ前回までのセットを使い回すことにする」
メンバーA「そうですかあ…」
メンバーB「来月をのりきったら、Aの方法も検討できるじゃないか」
メンバーC「とりあえず、次、僕たちはどうしたらいいですか」
リーダー「うん、じゃ《予算抑えめで、デモセットはできるだけ使い回し》というのが大方針。その方向で各人が作業項目をリストアップしてくれるかな。それを持ち寄った上で、明日もう一度ディスカッションしよう」
「決める」アクションをとったポイントは、リーダーの《じゃ、こうしてみようか》にありました。メンバーが対等な意見を出し合っている中で、暫定的な方向を示す。第ゼロ近似の方向です。どれだけの強さ、どれだけの時間で「暫定的な方向」を「最終決定」に持っていくべきかは、ケースバイケースでしょうけれど。
大事なのは「だれかが決めなければ、グループとして動くことはできない」ということです。
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※Photo by webtreats.
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