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恋すれば我が身は影となりにけりさりとて人に添はぬものゆへ

#読人しらず #古今和歌集 528 #jtanka #短歌 #恋

あなたのことを恋い慕うので私は影法師のようになってしまったのですねえ……だからといって恋い慕うあなたに寄り添うものではありませんのに。

「恋すれば」は「恋すれ+ば」。「恋すれ」はサ行変格活用「恋す」の已然形。「ば」は接続助詞。ここでは已然形についているので順接の確定条件となり「恋い慕うので」の意味。もしも「恋すれば」ではなく「恋せば」ならば、「恋せ」が未然形となるので順接の仮定条件となり「もしも恋い慕うならば」の意味になります。

「影」は上の句では恋のためにやせ衰えて影法師のように存在感がなくなってしまうようすを表しています。下の句では「影法師ならば、恋するあの人に寄り添うことができる……といいのですが、そうもいきません」と上の句の影法師を引き取って語っています。

「なりにけり」は「なり+に+けり」。「なり」はラ行四段動詞「なる」の連用形。「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形。「けり」は過去の助動詞「けり」の終止形で、ここでは自分が体験したことをやや第三者的に眺めて気付きや詠嘆を表しています。「なりにけり」は「なってしまったことだなあ」の意味。

「ものゆへ」はここでは逆接で「ものなのに」という意味。

こひすれば わがみはかげと なりにけり さりとてひとに そはぬものゆへ
こいすれば わがみはかげと なりにけり さりとてひとに そわぬものゆえ

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