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絵本の読み聞かせと即興で作る物語

子育ての思い出話です。

子供が幼児から幼稚園くらいの頃のこと。

そのころ、いまから眠ろうとする子供といっしょに布団に入り、絵本を読み聞かせたり、即興でお話を作って聞かせたりしていました。

面白エピソードはいろいろあるのですが、その中の一つ。私は「子供が眠くなるような本の読み方」が得意でした。

どういうことかというと、一日仕事をしてきて、大人(私と妻)はゆっくり過ごしたいわけです。だから、子供には早く眠ってほしい。自分は眠りたくない。

そんなとき、私は絶妙の「眠そうなトーン」を出して、本を読みます。たとえば桃太郎なら、こんな感じになります。

むかし、むかあし……
あるところに……
おじいさんと……(ここで間)
おばあさんが……(ここでさらに間)
住んでいました……

まだお話が始まったばかりなのですが、この時点で、子供はあくびを始めます。

おじいさんとおばあさんが 流れてきた桃を切る頃になると、もうすっかり子供は寝入ってしまいます。

よしよし。これからは大人の時間、妻といっしょにゆっくりお茶でも飲みましょう。

と思って、はっと気がつきます。

私が本を読むのをそばで聞いていた妻も、子供と一緒にぐっすり眠っているのです。まるで私の朗読が「すいみんやく」のように効いてしまったのですね。

* * *

子供といっしょのお布団で、即興でお話を作って聞かせることもよくありました。

物語の登場人物は子供にすることが多かったです。お話を聞いている子供が感情移入しやすいですからね。

たとえば「不思議な手品師」というお話は……

子供が道を歩いています。

橋を渡ろうとすると、そこに「不思議な手品師」がいました。

大きな帽子を手に持っています。

「それは、なに?」

「これは《不思議な帽子》なんだ。中から何が出てくると思う?」

……と話は続いていき、帽子から次々に動物が飛び出してくるのです。「うさぎが飛び出してきました!」などと口で言えばいいので、話はどんどん進みます。

まだ小さかった子供は、そんなお話も目をきらきらと輝かせ、夢中になって聞いてくれます。

* * *

いつものキャラクタが登場するお話も作ったことがあります。《まど》という名前のうさぎが登場するお話や、《めえめえさん》という名前のやぎが登場するお話などです。

やぎの《めえめえさん》は紙を食べるのが好きなので、たいへんスリリングな物語になることが多かったですね。《まど》と《めえめえさん》が切符を買って電車に乗るのですが、《めえめえさん》が切符を食べようとしてしまうのです!

食べられないように切符を持って電車の中を逃げる《まど》。それを追いかけて切符を食べようとする《めえめえさん》。

子供は笑い転げながら、そんなたわいもない話を喜んで聞いてくれました。

そんなお話のいくつかは、以下のページで公開しています。

◆むかしむかし、あるところに

記録によれば、このページは1999年ころに作ったもの。ですから、もう18年も前のことなんですね。我が家にとっては貴重な記録です。このころ笑い転げてくれた子供は、大学をもう卒業してしまいました。

* * *

子供が大きくなってしまったら、もう読み聞かせなんかできませんし、いっしょのお布団で眠るなんてこともありません。

お布団に一緒に入って、絵本を読み聞かせする。眠るまで即興でお話を聞かせる。それは人生の中でとても短い期間にしかできない、特別なことだったのですね。

* * *

その頃の「子供に絵本を読み聞かせる」という経験をもとにして、以下の文章を書きました。これもまた、そのときにしか書けない文章の類かもしれませんね。

◆絵本を読むときのパターン・ランゲージ

「絵本を読むときのパターン・ランゲージ」は全文Webで無料で読めますが、電子書籍でも販売していますので、よろしければどうぞ。

◆絵本を読むときのパターン・ランゲージ(Kindle版)

結城浩のメールマガジン 2017年8月8日 Vol.280 より

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