見出し画像

たくさんの仕事をどう管理する?(Q&A)

質問

結城先生のたくさんの活動をいつも注目しています。
多くの活動をどのように管理しているか興味があります。

私は大学院生で研究のための論文を読んだりゼミの準備をしたり
新しいニュースを追ったりしていますがいつも不十分です。

多くの活動をどのように統合して成果に結びつけているかご教示ください。

結城浩のメールマガジン 2014年9月2日 Vol.127 より

回答

ご質問ありがとうございます。

たくさんの活動をどのように管理しているか、ということですが、私自身も毎日手探り状態です。「統合して成果に結びつける」というようなかっこいい状況ではありませんが、できるだけ書いてみようと思います。

まず、結城の「本流の仕事」は書籍執筆、つまり「本を書くこと」にあります。そして、他のほぼすべての活動はこの本流に流れ着くように、良い影響を与えるように考えています。最初からそのように活動していたわけではなく、次第次第にそのように変化してきました。

たとえば、Web連載として毎週金曜日に「数学ガールの秘密ノート」シリーズをCakesというサイトで更新していますが、これは十回ごとに書籍化するように動いています。毎週金曜日という〆切があることで(自分で〆切を決めたことで)、書籍執筆のベースとなるテキストの蓄積を作っているといえます。

また、結城メルマガは毎週火曜日に配信していますが、これは自分が考えていることを整理したり、新しい本の執筆の場としたり、結城のことを応援してくださる読者さんへ情報を送ったりというメディアになっています。これもまた書籍執筆へ良い影響を与える活動です。Web連載(金曜日)とコンフリクトしないように、配信日を火曜日にしています。

肝心の書籍執筆は、Web連載と結城メルマガのような毎週〆切がやってくる仕事とは別に動いています。同時並行で何冊かがホットになっており、毎日毎日少しずつ進めています。この部分は結城メルマガで何回かご紹介した「色つき星取表」や「YukiTask」という自作ツールを使って管理しています。簡単に言えば「長期的に放置されるプロジェクトを作らない」という方法です。しかしながら、なかなか思い通りにはいかないのが実情です。

あまり細かい話をしてもしようがないので、大きな考え方だけ話しましょう(もちろんこれは結城の考えです。あなたにあてはまるとは限りません)。

ある一つの本が山場を迎えると、他の本が手薄になるのはしょうがないことだと思っています。あまりにもイーブンに力を分散させてしまい、満足いく品質が保てなかったら意味がありませんから、メリハリは必要ですね。

そこで大事なのが「把握」することです。自分がやるべきこと、やったほうがいいこと、やりたいことなどを、どんな形でもいいですから整理してまとめておく方がいいですね。結城は行っていませんが、GTDを参考にしてもいいでしょう。

頭の中で把握しておくことは大事ですが、あえて、何かに「書いて」考えることをお勧めします。多くの活動をしていると、どうしても見落としが発生しますし、それに何より、頭の中だけで考えていると、実際以上にたくさんあると誤解してしまうからです。必ず「書く」こと。

それから「現実」を見据えて「正直」になることも大事です。活動していると、おっくうになって手が着かなくなる作業というのが、どうしても出てくるものです。その作業にたいして、「これからがんばる」とだけ決心するのはあまり意味がありません。なかなか手が着かないというのには理由があるものです。それは根拠のない不安のようなものかもしれませんが、とにかく理由は必ずあります。ですから、やみくもに「これからがんばる」のではなくて、現実的に「どうして手が着かないんだろう」と考える必要があります。

結城は自分が書こうと思っている本のリストを持っていて、少しずつ準備を進めています。ふと思いついたことや、参考書を読んで関連する箇所などをEvernoteに保存したり。そして機が熟したところでぐっと書き進めます。

そのような活動をうまく回すためには、現実を見て、正直に、把握しておくことが大事ですね。ぼんやりと「たくさんやらなくちゃなあ〜」と、頭の中に思っているだけではうまくいきません。頭の中のものをしっかり書いて、書いたものを眺めつつ作業を進めるのです。

大学院にいらっしゃるということですから、これから知的活動・研究活動を長く続けていくわけですね。たくさんの仕事を自分なりのスタイルでこなしていくためには、試行錯誤も必要だと思います。

あなたの現在の「本流の仕事」は何でしょう。論文を書くための準備を進めることでしょうか。もしもそうなら、そこをしっかり押さえておくことは必要でしょうね。つい「あれもこれも」と思ってしまいますが、本流に結びつかないことは、どうしても尻すぼみになったり、散発的になってしまいますから。

とはいえ、最初から全部予定通りきれいになんていきません。まずはいろいろ試してみることをお勧めいたします。失敗もするでしょうけれど、長期的にはそれは失敗ではないと思います。自分の経験値をアップさせたといえるわけですから。

以上あれこれ書きましたので、問いかけの形でまとめます。

 ・あなたの「本流の仕事」は何ですか。
 ・あなたは、《やるべきこと》や《やりたいこと》をちゃんと書いて「把握」していますか。
 ・あなたは、自分の作業に関して「現実」を見据え、「正直」になっていますか。
  やみくもに「これからがんばる」と考えたりしていませんか。

がんばってくださいね。応援しています!

※もしも、この文章を気に入ってくださったなら「オススメ」や「スキ」で応援していただければ感謝です。

質問はこちらからどうぞ。

結城浩はメールマガジンを毎週発行しています。

#結城浩 #結城さんに聞いてみた  

いただいたサポートは、本やコンピュータを買い、さまざまなWebサービスに触れ、結城が知見を深める費用として感謝しつつ使わせていただきます! アマゾンに書評を書いてくださるのも大きなサポートになりますので、よろしくお願いします。 https://amzn.to/2GRquOl