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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年3月6日 Vol.310

/数学力を向上させる復習法/前提や推論をねじ曲げる人/高校数学でつまずく単元/

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

 * * *

ポイント還元セールの話。

2018年3月8日(木)まで、 SBクリエイティブがキャンペーンを行っています。 アマゾンのKindle本が「50%ポイント還元」とのこと。

 ◆【50%ポイント還元】SBクリエイティブキャンペーン
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結城の本の大半はSBクリエイティブから刊行されており、 今回のキャンペーン対象に入っています。

「数学ガール」と「数学ガールの秘密ノート」シリーズすべて、 『暗号技術入門第3版』、『プログラマの数学第2版』、 『Java言語で学ぶデザインパターン入門』などのKindle本が、 すべて50%ポイント還元になっています。

電子書籍でのご購入を予定している方は、 ぜひこの機会をご利用ください。

『数学文章作法』は筑摩書房からの刊行ですので、 キャンペーン対象ではありません。

対象書籍一覧へのリンクを、 以下のページにまとめてありますのでご利用ください。

 ◆【50%ポイント還元】『数学ガール』『プログラマの数学第2版』など《結城浩のKindle本》多数
 https://bit.ly/2H03Pzh

 * * *

『数学ガール/ポアンカレ予想』の話。

6年ぶりの「数学ガール」シリーズ新作。

ちょうど今日、初校読み合わせがあります。 ここまでで大きな修正はほぼ終わり、 再校に向けてはやや細かい微調整が多くなります。

次第にゲラが滑らかになり、 読み返すのも楽しくなってくる時期ですね。

刊行は2018年4月!

 ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』
 http://www.hyuki.com/girl/poincare.html

 * * *

幾何に取り組む話。

質問

現在中学生で、来年から高校生になります。

代数よりの問題(確率や一次関数のグラフなど) では数を操作しているようで楽しく、 解きやすいと感じます。

でも幾何よりの問題(平面図形や空間図形など) ではとたんに解けなくなります。

幾何の分野では、 「ひらめき」や「感覚」が必要とされている気がして、 どうしても自信が持てません。

考え方や問題への取り組み方のコツはあるでしょうか。

回答

ご質問ありがとうございます。

確かに幾何の問題は、 平面図形にしろ空間図形にしろ、 苦手と感じる人は多いかもしれません。

「ひらめき」や「感覚」あるいは「センス」が必要…… と言いたくなりますが、そこには注意が必要です。 というのは「ひらめき」や「感覚」や「センス」 という言い方をしたとたん、 「生まれ持ったものであり、自分にはどうしようもない」 と勘違いしそうになるからです。

そこから一歩進むと、 言い訳と思考停止につながります。 それは危険な道だと思います。 中学生・高校生の段階では、特にそうです。 「ひらめき」や「感覚」や「センス」 の存在を否定するわけではありませんが……

そのように考えるのではなく、 幾何に関しては、

 ・多種多様な図形をリアルに体験すること
 ・多種多様な図形を見ずに想像すること

の二つを心がけるというのをお勧めします。

たとえば、三角形の図を描くときでも、 一つだけ描くのではなく、できるだけたくさん描いてみる。 しかも同じような三角形ではなく、 できるだけ形の違う三角形を描いてみる。 そしてじっと時間を掛けて眺める。

例として三角形を挙げましたが、 これはもちろん一例に過ぎません。 数学図鑑などでいろんな図形をピックアップして、 しかも複数並べてみたり、接する様子を描いてみたり、 重ねてみたり……たっぷり平面図形を体験するのです。

コンパスや定規を使って描くのもいいですが、 フリーハンドで描くのも非常にいいことです。 これはまさに「体験」になりますね。

立体図形も同様です。 描かれた図形や透視図を見るだけではなく、 実際に粘土や紙工作で作ってみましょう。 作るだけではなく、作った後もじっくり眺めましょう。

数学の勉強だけでなく、 毎日の生活の中で見る形にも注意を向けます。 テレビを見たら縦と横の長さの比を想像したり調べたり。 対角線の長さを当ててみたり。 私たちの周りは形で満ちていますので、 試してみることは無数にありますね。

以上のように、 図形や立体をリアルにたっぷり体験するのです。 図形を100個描いたらテストの点数が10点上がる…… なんていう約束はできませんし、 リアルな体験がどんな効果を上げるかはわかりません。

でも、あなたが「数を操作しているようで楽しい」 といったのと同じ感覚を、 図形や立体に感じる一歩になるかもしれませんよ。

そして、もう一つ。

リアルに体験するだけではなく、 何も見ないで頭の中だけで図形や立体を想像し、 操作する練習もぜひやってみてください。

具体的に列挙したらきりがありませんが…… たとえば、正三角形を想像するのはできますよね。 正方形も簡単に想像できるでしょう。

では、正六角形は? 正六角形のカードを二つ折りする様子は想像できますか。

正方形の折り紙を想像し、 そこから鶴を折る様子を頭の中だけで想像できますか。

立体も同様です。有名な問題ですが、 立方体を平面で切断する様子を想像したとき、 断面にはどんな形があらわれるでしょうか。 何通り想像することができますか。

小さな立方体27個を1個ずつ積み上げて、 3×3×3の大きな立方体を作る様子を、 コマ送りで想像できますか。

鉄棒で自分が大車輪をやったと仮定して、 周りの景色はどんなふうに見えるでしょう。

以上のように、 図形と立体にまつわるリアルな体験と想像を意識して行ってみましょう。 それはなかなかいいと思います。

あなたが代数的な操作が好きなのは、 これまでたくさんやってきて慣れているからかもしれませんよ。 幾何でも、そのような体験をたくさんやってみてください。

Enjoy!

 * * *

理屈で考えすぎてしまう話。

質問

いわゆる「理系的」な思考をしているせいか、 絵を描いたり、文章を書いたりするときに、 「理屈で考えすぎている」 とよく言われます。

確かに考えすぎて筆が進まないときもあります。

理屈に惑わされないようにするには、 どうしたらいいでしょうか。

回答

ご質問の内容は、よくあることです。

理屈で考えた作品は、 つじつまは確かに合っているけれど、 魅力を感じなかったり、 心を揺さぶられる部分や印象に残る部分が少なかったりします。

難しいですよね。

この対策には、有名な言い回しがあります。 それは、

 「説明するな、描写せよ」

というものです。

「説明」というのは理屈で考えて、 つじつまを合わせたり、矛盾をなくしたり、 起きていることに必ず理由を付けたりすることです。

それに対して「描写」というのは、 目で見たものや、耳で聞いたもの、 感じたことをそのまま受け手に伝えようとすることです。

これはこうなってますよと説明するのではなく、 受け手に直接感覚を届けるために描写するのですね。

説明はものごとを対象化してしまいますから、 受け手は安全圏にいて対象を受け取る形になります。 それに対して描写は違います。 適切に描写するならば受け手の中で感覚が直接再現されますので、 その空間に入り込み、 深い体験をしてもらうことが可能になります。

もちろん、それを実際に行うのは技術を必要とする話です。 しかし、 「説明」をなくして「描写」に徹底することを意識するのは、 悪くない取り組みだと思います。

描写に徹底する方法の一つとしては、 自分自身がまずその世界に飛び込むことが挙げられるでしょう。

自分が世界の外にいて、あれはあれだ、これはこれだ、 とやっていると、どうしても説明になってしまいます。 自分が世界の中に飛び込んで、

 いま何が聞こえる? 何が見える? 何を感じる?

と問うのです。

そしてそのためには、 実はリアルなこの世界にいるときも同じように、

 いま何が聞こえる? 何が見える? 何を感じる?

と問うことが大切ではないでしょうか。

 「説明するな、描写せよ」

というのは、言い換えると、

 「対象化するな、体験せよ」

ということなのですね。

ぜひ、試してみてください。

 * * *

それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

今回は受験シーズンから新学期直前のためか、 数学を学ぶことに関するQ&Aが多くなりました。

でも実は「数学」に特化した話ではないかも……と思っています。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

はじめに
数学の問題をまちがったとき、どう復習すれば数学力を向上できますか - Q&A
前提や推論をねじ曲げたがる人について
高校数学で多くの人がつまずく単元は何ですか - Q&A
おわりに

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