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教えるときには演出が大事(教えるときの心がけ)

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年5月1日 Vol.005 より

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はじめに

こんにちは、結城浩です。

「教えるときの心がけ」のコーナーです。

「教える」といっても学校の先生だけを想定しているわけではありません。会社で上司が部下に、先輩が後輩に、学校で友人に、家庭で自分の家族に…。いろんな場面で人は「教える」という活動を行いますよね。

その「教える」という活動に焦点をあてて、

 教えるときには、こんなことを心がけたらいいですよ!

とお勧めするのがこのコーナーです。

このコーナーでは、お話を進める都合上、教える人を「教師」、教えられる人(学ぶ人)を「生徒」と呼んでいます。

今回は「教えるときには演出が大事」というお話をしましょう。

演出とは?

「演出が大事」というその「演出」とは何でしょうか。

そもそも演出というのは、表現するときに「大きな効果をあげる工夫」のことです。

たとえば、手品をするマジシャンが手品をする様子を想像してみてください。

 ・マジシャンが舞台に登場する。
 ・ハンカチを取り出して、表と裏をゆっくりと観客に見せる。
 ・そして一呼吸。
 ・ハンカチをさっとひとふりすると、
 ・巨大な花束が現れました!

これがもし、マジシャンが舞台に登場したとたん花束が現れたのでは、マジックは台無しです。

ハンカチをゆっくり見せること。これは、「タネもシカケもありません」というアピールですね。もちろん観客はタネもシカケもあることを知っています。でも何が起きるかは知りませんからドキドキしはじめます。

見せた後で一呼吸置くこと。これで、観客はますますドキドキします。「いったい何が起きるんだろう!」

ハンカチをさっとひとふりすること。観客が「え、なに?」と思った瞬間に巨大な花束が現れてびっくりです。

ハンカチをゆっくり見せる、一呼吸置く、さっとひとふり。

このような視覚的な効果、時間的な間合い、最後に現れる花束。そのすべてがマジックを盛り上げる「演出」になります。

この「演出」があるからこそ、観客はマジックを楽しく思い、「次は何が起きる?」「また見たい!」とひきこまれるわけです。

教えるときの演出とは?

さて、それでは「教えるときの演出」というのは何でしょう。もちろん、マジックのように派手な視覚的効果をやらなくてはいけないというわけではありません。そうではなくて「ただ単に知識を伝える」だけが教えることじゃないよ、という点を理解していただきたいと思います。

教えることは表現であり、表現には効果的な表現方法が必要になります。それが「演出」なのです。

マジックのような大げさな演出はいりませんが、参考になることは多々あります。

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