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物語とは何だろうか(本を書く心がけ)

ここ数年、結城は「数学ガール」シリーズという本を書いています。数学と物語を融合させたようなシリーズで、登場人物は本の中で数学をやると同時に、ふつうに物語も進めます。

結城は、このシリーズを執筆しているときには、「数学のこと」と「物語のこと」をずっと考えています。結城は文学者ではないので「物語論」というのはよくわからないのですが、素朴な疑問が継続的に心の中に浮かんできます。それは、

 物語とは何だろうか?

という疑問です。

結城浩のメールマガジン 2013年8月6日 Vol.071 より

ヴィーイクル

「数学ガール」シリーズは、数学的内容をそれなりにきちんと書いています。ですから、数学が好きな方(数学ファン)が読んで楽しむのはよく理解できます。でも、もしも、「数学ガール」シリーズが、単に数学に関する読み物というだけであったなら(つまり、物語と融合していなかったなら)、現在のように広い範囲の読者さんには読んでいただけなかったのではないか、と思います。つまり、「数学ガール」シリーズにとって物語とは、

 数学を読者さんに届けるヴィーイクルとしての役割を果たしている

と結城は思っています(ヴィーイクル(vehicle)というのは、乗り物あるいは伝達手段のこと)。

  • 物語の形になっているから、読者さんは手に取ってくれる。

  • 物語の形になっているから、読者さんは読み進めてくれる。

…と、いうことです。

このような、物語が数学を読者さんへ運んでくれる、というところまではすぐにわかるのですが、もう少し考えを深めてみましょう。

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