
物語とは何だろうか(本を書く心がけ)
※ほぼ半分を無料公開しているノートです(結城メルマガVol.017より)
「本を書く心がけ」のコーナーです。このコーナーでは、結城が本を書くときに心がけていることをお話しします。
今回は、最近結城が考えている「物語とは何だろうか」ということをお話ししようと思います。
ここ数年、結城は「数学ガール」シリーズという本を書いています。数学と物語を融合させたようなシリーズで、登場人物は本の中で数学をやると同時に、ふつうに物語も進めます。
結城は、このシリーズを執筆しているときには、「数学のこと」と「物語のこと」をずっと考えています。結城は文学者ではないので「物語論」というのはよくわからないのですが、素朴な疑問が継続的に心の中に浮かんできます。それは、
物語とは何だろうか?
という疑問です。
●ヴィーイクル
「数学ガール」シリーズは、数学的内容をそれなりにきちんと書いています。ですから、数学が好きな方(数学ファン)が読んで楽しむのはよく理解できます。でも、もしも、「数学ガール」シリーズが、単に数学に関する読み物というだけであったなら(つまり、物語と融合していなかったなら)、現在のように広い範囲の読者さんには読んでいただけなかったのではないか、と思います。つまり、「数学ガール」シリーズにとって物語とは、
数学を読者さんに届けるヴィーイクルとしての役割を果たしている
と結城は思っています(ヴィーイクル(vehicle)というのは、乗り物あるいは伝達手段のこと)。
・物語の形になっているから、読者さんは手に取ってくれる。
・物語の形になっているから、読者さんは読み進めてくれる。
…と、いうことです。
このような、物語が数学を読者さんへ運んでくれる、というところまではすぐにわかるのですが、もう少し考えを深めてみましょう。
●探索の旅
「数学ガール」シリーズにおける物語は、もっと本質的なところでも重要な意味を持っているような気がします。それは数学の成り立ちに関係しています。数学では、
・何らかの「問題」に出会い、
・その問題を追っているうちにそこに構造を「発見」し、
・問題の「解決」に至る。
・そしてそれを他の人に「伝達」する。
ということがよく登場します。
・問題と解決。
・発見と伝達。
そしてこれは、物語ととても親和性がよい。思い切っていうなら、
数学というものは、物語を内包している
と思うのです。
※ここまででおおよそ半分です。もし「おもしろそうだな」と思った方はぜひご購入をお願いします。