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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年1月9日 Vol.302

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

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『プログラマの数学 第2版』の話。

先週もお伝えしましたが、2018年1月に、

 『プログラマの数学 第2版』

が刊行されます。日頃の応援に感謝して、 恒例の《サイン本無料プレゼント》を行います。 応募〆切は、

 2018年1月10日(水)

です。以下のページをごらんの上、 ぜひご応募ください!

 ◆『プログラマの数学 第2版』《サイン本無料プレゼント》
 https://snap.textfile.org/20171229214054/

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サイン本無料プレゼント企画の話。

結城は新しい本を出すたびに、 《サイン本無料プレゼント》企画を個人的に行っています。

書籍を執筆している人には、 同様の企画をなさることをおすすめします。

どうしてかというと、応募してくる読者さんが、 応募メールに感想を書いてくださるからです。 読者さんの声は貴重ですし、何よりすごく励まされます!

複数の読者さんが以下のようなことを異口同音に書いていました。

 ファンレターを送りたいといつも思っているけれど、
 何もないときにいきなり送るというのは難しい。
 Twitterで話しかけるというのはためらってしまう。
 なので《サイン本無料プレゼント》のような企画で、
 「どんなことでもいいので感想を書いてください」
 と言われると、気軽に感想メールを送れる……

ということで、 本の宣伝にもなり、読者さんもうれしいし、 著者もうれしいという企画といえるでしょう。

ちなみに《サイン本無料プレゼント》の企画をするときには、 ツイートするだけではなく企画ページを作った方がいいです。 そこに応募方法や条件などを明記できるからです。

また、書籍の刊行前に抽選を終えるようにするのがいいでしょう。 刊行後に《サイン本無料プレゼント》の企画を立ち上げると、 刊行直後に急いで買った人ががっかりするからです。

《サイン本無料プレゼント》企画、オススメです!

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Spectreの話。

年明けから、 MeltdownとSpectreという脆弱性が話題になっています。 CPUの設計上の問題なので、 ほとんどすべてのマシンが影響を受ける脆弱性になります。

といっても、一般ユーザができることは、 通常のセキュリティ上の注意を続けることしかありません。 あやしいソフトを動かさない、添付ファイルを開かない、 OSを最新の状態に保つ、セキュリティソフトを更新する…

詳細は以下のページをごらんください。

 ◆Meltdown and Spectre
 https://spectreattack.com

ところで真面目な話はさておきます。

結城が最初にこの脆弱性を知ったのは、 「Spectreのロゴは悪い結城先生みたい」 というお知らせを受け取ったからです。 調べてみると……確かに!

思わず「結城浩とSpectreは違います」 という比較画像を作ってしまいました。

 ◆結城浩とSpectreは違います(画像)

 ◆結城浩とSpectreは違います
 http://www.hyuki.com/icon/#spectre

これで思ったのは、 「広める」という点でロゴやキャラクタ画像は大事ということ。 特に、脆弱性のような「形のないもの」 に形を与えるのは大事なのですね。

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メールアドレスの使い分けの話。

「結城先生は複数のメールアドレスをどう使い分けていますか」 という質問をいただきました。

難しい問題です。

セキュリティや迷惑メールのことを考えると、 複数のメールアドレスを使い分けるのは大事だと思いますが、 あまり多数のメールアドレスを持つと、 メールのチェックやパスワードの管理が大変になってしまいますね。

結城は数個(十個未満)のメールアドレスを持っていて、 おおよそ、以下のような使い分けをしています。

 ・重要な目的に使うメールアドレス
 ・家族とのやりとりに使うメールアドレス
 ・仕事のやりとりに使うメールアドレス
 ・Webサービスに使うメールアドレス
 ・ちょっとお試しに使うメールアドレス

使い分けの観点は何かというと、

 メールアドレスの公開の度合い

になります。そのメールアドレスを知っている人は誰か、 おおよそ何人(何社)になるかということです。

自分のメールアドレスをメール送付に使う場合、 メールの送信者はそれを知っている必要があります(当然)。 ということは、メールの送受信で使う限り、 「他人に知られること」が前提になります。

その一方でメールアドレスは、 WebサービスでログインIDに使われる可能性があります。 この場合には「他人に知られること」 はセキュリティリスクでしかありません。

なので結城は「メールアドレスの公開の度合い」 で使い分けるようにしているのです。

あなたはどうしていますか。

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地震と夢の話。

夜中に大きな地震があり、目が覚めました。

結城は、ちょうどそのとき夢を見ていて、 急に起こされたため、 夢をはっきりと思い出すことができました。

自分が、非常に複雑で鮮明な夢を見ていることを自覚しました。 そのリアリティ(というのも変ですが)の点において、 現実とほとんど違いがありません。 まさにもう一つの世界がそこにあり、 もう一つの人生がそこにあるという趣だったのです。

とはいえもちろん夢の中。 こちらがわの現実世界とは、 物理法則や因果関係の点で違いは大きいです。 しかし「本物らしさ」という点では違いがありません。

そのとき見ていたのは、 新しいリコーダーが届いたので試奏していた夢でした。 木管ではなくプラスチック管だったのですが、 「意外にいい音出るなあ」 と感動しながら吹いていました。

リコーダーの運指はこちらの世界と同じでした。 穴を塞ぐときに指が感じるリズムや、 唇にあたる吹き口の感触なども、 こちらの世界と夢の世界で同じでしたね。

夢の世界は、 こちらの世界と同じような存在があって、 しっかり時間が流れているのかもしれない、 と思うほどしっかりとした現実感がありました。

こちらの世界で目を覚ましているとき、 夢の世界での体験はほとんど覚えていないものです。 それと同じように、夢の世界で生きているとき、 こちらの世界での体験は覚えていないのかも。

そんなことを感じるほど、 リアルな夢の体験でした。 大きな地震の副産物。

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討論番組の話。

私はテレビの「討論番組」が好きではありません。 司会者がきちんと司会をして、 落ち着いた調子でなされるものならいいのですが、 多くの場合は違います。

参加者が我先に言いたいことをいって、 他の人の意見を聞かず、発言をさえぎろうと身構えている。 そういう番組は見ないようにしています。 気持ちが落ち着かず、新たな知見を得ることがないからです。

参加者が、さえぎられる前に言いたいことを言おうとすると、 大声になり、粗雑な表現になり、早口になります。 互いに相手の言葉尻を捕らえるため、 本質的な話になることがありません。

互いに意思疎通ができていないのに、 建設的な討論ができるわけがありません。 ちゃんと発言を聞き合う関係を作らずに、 討論を行うのはナンセンスですね。

相手の意見を「理解すること」と、 その意見に「賛同すること」が混同されているのかもしれませんし、 単に討論の形に似せているだけで、 個人弁論大会なのかもしれません。

もしも「大きな声で相手の発言を封じたら勝ち」 というゲームをやってるなら、 拡声器持ち込んで討論会やればいいんですよ。 アンプのパワー勝負だ! ……などと茶々を入れたくなります。

みんながわーわー言い合っても、 有益な議論がなされるとは限りません。

正しい意見は、 たとえ「ささやき声」であっても正しいのです。

 * * *

数学が苦手な子に数学を教える話。

質問

数学が苦手な子や嫌いな子には、 どのように数学を教えたらいいでしょうか。

回答

これだけの情報をもとにして的確に答える自信はありません。 つまり「このように教えたらいい」という答えはできません。

ですから、少し違う方向から答えてみます。

あなたが接している当人、 つまりあなたが「数学が苦手」や「数学が嫌い」 と認識している本人に尋ねてみたらどうでしょうか。

でもそのとき、 「どうして君は数学が苦手なの?」や、 「どうして君は数学が嫌いなの?」 とその子に聞くのではありません

「苦手」や「嫌い」というのは、あなたの認識ですよね。 しかもかなり大ざっぱな認識です。 ですから、そこを質問の中に折り込んでしまうと、 その子自身の自己認識を誘導しかねません。

その子が数学に対してどのような認識でいるのかを、 できるだけニュートラルなスタンスで聞きたいところです。 あくまで一例ですが、

 数学ってどう思う?

のように。 これだけだと大した返事は期待できませんが、 でも、きっかけは作れます。

子供が「数学はきらーい」や、 「計算がめんどう」や、「先生がキモい」や、 「テストで点数が取れない」のように言ってくれたら、 そこから話を解きほぐしていくのが大事だと思います。

子供が正しく自己認識しているとは限りませんし、 それを的確な言葉で表現してくれる保証もありません。 しかし、あなたが想像している子供の姿を、 現実の子供の姿に近付ける効果はあるはずです。

想像だけで話を進めると、対策を見誤ります。

たとえば、 数学に興味は持っているけど計算練習不足な子に対して、 数学に興味を持たせる読書をさせても効果は低いでしょう。

あるいは、 機械的な計算はこなすけれど、 その計算が持つ意味や、文章を読む力が低い子に対して、 計算ドリルをさせるのも的外れですよね。

代数的な計算や式変形は得意だけれど、 図形の操作や立体を想像する力が足りない子はよくいます。

もしかしたら、 テストの点はちゃんと取れるけれど、 数学の深いところに「もやもや」 を感じている子供だっているでしょう。

「数学」はたった二文字の言葉ですが、 それが内包している世界は多岐にわたります。 いったいどこに引っ掛かっているのか、 何が不足なのか、あるいは何が過剰なのか、 それを見極めることが大事であると思います。

そして、子供の姿が見えてくると、 「数学が苦手な子」や「数学が嫌いな子」 という表現がいかにアバウトであるかがわかるはずです。

「苦手な子」や「嫌いな子」 を総称として使うのが悪いわけではありませんが、 対策を考えるには、より精密な観察が必要になると思います。

あなたと相手との対話が、実り多きものとなりますように。

 * * *

適用可能範囲の話。

論理的に考える人は、 論理的に「扱えること」と「扱えないこと」 その二つの違いを意識しています。

「論理」は「数学」や「科学」 などに置き換えることもできるでしょう。

つまり、道具の適用可能範囲を意識しているということです。

適用可能範囲を意識しないと、 ノコギリで紙を切ろうとしたり、 胃薬で頭痛を治そうとしたりするミスを犯すでしょう。

自分の持っている道具がパワフルであればあるほど、 適用可能範囲を意識することは大切です。

結城は若いとき、 どんな問題でもプログラムを書いて解決したがる時期がありました。 たとえば、本来なら会社の営業と相談して、 納期を変更したり、仕様を相談すべき事項であっても、 自分のプログラミング技術で目の前の問題を解決しよう! と試みてしまったのです。

道具の適用可能範囲、大事です。

 * * *

訃報の話。

訃報(ふほう)とは、人が亡くなった知らせのこと。

享年(きょうねん)とは、人が生きていた年数のこと。

先日、星野仙一監督の訃報を耳にしました(享年70)。

結城は最近、訃報に接したとき享年に注目するようになってきました。 もちろん、自分の現在の年齢と比較するためです。 星野監督は70歳で亡くなりました。 結城は現在54歳なので、引き算すれば16歳違いますね。

たとえばあと16年生きることができたとして、 私は何をするのだろうと考えざるを得ません。

16年だろうが、100年だろうが、 1日の積み重ねなのですけれどね。

 * * *

それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

 はじめに
 自分の理解に関心を持つことは大切 - 教えるときの心がけ
 わけへだてなく学べる社会
 おわりに

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本を書いています。『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。https://link.hyuki.net/mm でメルマガ配信中。https://link.hyuki.net/girlnote でcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

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