会話は二人で作るもの(コミュニケーションのヒント)
質問
人と会話するときには、どんな点を意識して、話したり聞いたりすればいいでしょうか。
回答
ご質問ありがとうございます。
これは難しい質問です。
結城が最初に思ったのはこういうことでした。「会話では、こういう点を意識しましょう」といわれて、すぐにそれができる人というのは、言われるまでもなくそれができている人ではないか、と。あ、でも、あなたの気持ちをくじきたいわけではありませんよ。
私たちはふだん誰かと会話するとき、かなりの部分を無意識に行っています。会話のテーマや、言葉遣いや、声のトーンや、話す時間と聞く時間の割合などを、計算しながら会話してる人は少ないですよね。
そもそも、会話というのはそれだけで高度な情報処理ですから、何か別の意識を持ちながら会話を行うことは、さらに難易度が高そうです。
などと逡巡していてもしょうがないので、話を進めます。
誰かと会話するとき、結城が大事だと思うのは、会話は一人で行うものではないという点です。
スローガンとしては、
「会話は二人で作るもの」
といえるでしょう。
つまり、あなたが一人で何かを意識したからといって、会話が思い通りに進むわけではないということ。会話は一人で行うものではなく、相手との共同作業です。ですから、相手との関係作りが大事になると思います。
会話以前の問題として、自分と相手とのあいだにリラックスした雰囲気や空気があると、いろんなことが解決します。つまり、会話を行う場所、時間帯、美味しい食べ物や飲み物、音楽のようなものを整えるということです。
それらが整った上で、会話において意識した方がいいこととして、
・自然な笑顔
・ゆったりした話し方
・相手の言葉に対する相づち
などは、基本的な会話の技術といえるでしょう。
「自然な笑顔」をするのが難しいという人がときどきいます。自分の顔を操作して、自然な笑顔を作ろうとするとうまくいきません。唇の角度の操作という「自分のこと」に意識を向けるよりも、「相手と過ごす時間を楽しみたいという気持ち」に意識を向けた方が、自然な笑顔になるかもしれませんね。「会話は二人で作るもの」ですから。
「ゆったりした話し方」が難しいという人もいます。ついすごく早口になってしまう。原因は人によってさまざまでしょうけれど、自分の言いたいことを高速に伝えなければという意識が先に立つと、早口になりがちです。悪いことに「相手にうまく伝わってないな」と意識し始めると、早口がさらに早口になり、相手がよけい理解できなくなるという悪循環もよくあります。対策としては「会話は二人で作るもの」を思い出して、自分の言葉だけで会話を進めないように心がけることでしょうか。いっぺんに大量の言葉を早口で渡しても会話が進むわけではないのです。
「相づち」は会話でとても大事です。相手の言葉を繰り返したり、自分の理解の度合いを知らせたりすることで、相手が話しやすくなるからです。必ずしも肯定的な相づちだけでなくてもいいのです。自分がよくわからないときには「そうなの?」という疑問を呈した方が、会話はうまく進むものです。お互いに適切な相づちをはさみながら会話が進むと、一人では作れない豊かな時間が生み出されることがよくあるものです。
会話は、自分だけが意識して作るものではありません。
「会話は二人で作るもの」
ということを心のすみに置いてみてください。
ご質問ありがとうございました。
結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年1月3日 Vol.249 より
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