心を動かす文章をめぐって(文章を書く心がけ)
※この文章は結城メルマガVol.306からの抜粋です。
※購入すると電子書籍(epubとPDF)がダウンロードできます。
「文章を書く心がけ」のコーナーです。
今回は、読者さんからダイレクトメッセージでいただいた質問への回答です。
* * *
質問
結城先生へ、こんにちは。
いつもツイートや結城メルマガを楽しみに、また興味深く拝読しています。突然のダイレクトメッセージ失礼します。先生にお聞きしてみたいことがあり、メッセージを送らせていただきました。
私はいま「人にものを伝える」ことが主要な仕事内容で、人前でお話ししたり、文章を書いたりする機会がたびたびあります。
そしてありがたいことに、「わかりやすかった」と言っていただけることが多いです(結城先生の「コミュニケーションの心がけ」などで学んだおかげです!)。
自分自身も、「どんな人でもよくわかるように」を心がけているので、ある意味自然な結果なのかもしれませんが、最近、果たしてこのままでいいのか、と思うことがあります。
それは、聞いている方々からの「わかりやすかった」という感想は、
「内容はわかったけど、心にはそこまで響いていない」
という状態を示しているのではないかと思ったからです。
自分としては、「わかりやすい」だけではなく、「心が動かされた」という反応がともなうような言葉で伝えたいな……と。
「わかりやすかった」という反応があまりにも多いので、内容が単純すぎるのかな、とか、客観的な情報しか伝えられてないのかな?(でも感想を心に秘めてるだけかもしれないし…)と…。
もっと「心に」ちゃんと伝わる文章を書けるようになりたいと思っています。
そこでお聞きしたいことは、
・こういうふうに、聴衆のフィードバックにふりまわされるのは、あまりよくないことでしょうか?
・結城先生自身、自分が書いたものを前向きな意味で評価するとき、何か基準にしていることはありますか?
もしよければ、なんらかの機会に先生のお考えを聞くことができれば幸いです。長文になってしまいましたが、お忙しい中、最後まで読んでくださり感謝します。これからも応援しています!
回答
いつも結城の文章をお読みくださりありがとうございます。また質問も感謝です。
なかなか興味深い質問ですね。しばらく考え込んでしまいました。
・人にものを伝える仕事をしている
・「わかりやすい」と言ってもらえる
・もっと「心に伝わる」ようにしたい
・フィードバックにふりまわされていいのか
・文章の評価基準は?
とピックアップしましたが、これに対する直接の答えではなく、おそらく関連すると思われるお話を書いてみたいと思います。
* * *
まずご質問を読んで最初に思ったのは、
そもそも「わかりやすい」と言ってもらえるのは、とてもとてもすごいことである
という点です。通常の読者(聴衆と読者の両方かもしれませんが、便宜上「読者」とします)は、わかりにくい文章に対して「わかりやすい」とはいいません。ですから、文字通りあなたの文章はわかりやすいのだと思います。
繰り返しになりますが、これはとてもすごいことです。あなたは読者に対して何かをわかりやすく伝える技術を持っている。これは得難いことであり、大事なことであると思います。
(それと同時に、その技術を持っているからには、「責任」が生まれるわけですけれど、それは別の話なのでまたいつか)
* * *
あなたが書いていた、
読者の心には響いていないのではないか。心に伝わる文章を書きたい。
という気持ちは非常によく理解できます。ただそこには非常に微妙な問題が介在してきます。
ここから先は
¥ 200
いただいたサポートは、本やコンピュータを買い、さまざまなWebサービスに触れ、結城が知見を深める費用として感謝しつつ使わせていただきます! アマゾンに書評を書いてくださるのも大きなサポートになりますので、よろしくお願いします。 https://amzn.to/2GRquOl