ルーチンワークを創造して、一冊の本を書き上げる(本を書く心がけ)
※ほぼ半分を無料公開しているノートです。
こんにちは、結城浩です。
「本を書く心がけ」のコーナーです。
このコーナーでは結城の書籍執筆経験から大切だと思うことをお話しします。
今日は「ルーチンワークの創造」というお話をしましょう。
ルーチンワーク?
それは、何をやるかが決まっていて、ある程度機械的に進められる作業のことです。
本を書くというのはいわゆる「クリエイティブ」な仕事だと思われていますが、実際には「膨大なルーチンワークのかたまり」と見なすこともできます。
本を書くというのは、要するに「ある程度のまとまりと分量を持った文章」を作り出すことです。図やプログラムや数式や表などもありますが、中心となるのはなんといっても文章(テキスト)です。
書籍一冊だとどのくらいの分量のテキストを書かなければいけないのか。いまちょっと調べてみますね。ええと…
『数学ガール/ガロア理論』のLaTeXソースは約800キロバイト。
『プログラマの数学』の原稿ファイルは約300キロバイト。
完成原稿を作るためのテキストサイズはこれくらいで、実際の執筆ではこれの三倍くらい書いていますから、だいたい1〜3メガバイトというところでしょうか。
これだけのテキストを作り出さなければならないのですから、短距離走のつもりで進むわけにはいきません。途中で倒れないような長距離走の構えが必要になります。それがルーチンワークですね。
少し具体的にルーチンワークについて書きましょう。簡単なことです。
(1)「○○を書こう」と決める。
(2)○○を最もわかりやすく伝えるためには…
(2-a)どこから書き始めるか?
(2-b)どんな例を選ぶか?
(2-c)図や表は必要か?
などを考える。
(3)文章を書く。
(4)読み返す。
(5)直す。
これが少し大きなルーチンワークです。まあ、あたりまえのことですよね。(1)〜(5)までのそれぞれが「機械的」に進める作業になります。
(1)や(2)の「○○」に当てはまるのは、書籍執筆の最初の段階では「本全体」ですが、執筆が進むうちに「第X章」や「第X章第Y節」という小さな単位になります。
要するに、本という「大きなもの」を作り出すために、章や節という「小さな単位」に分割して、それぞれをルーチンワークで片付けることになるのです。まあ、そんなに難しい話ではないですよね。
でも……あれ?
いわゆる「クリエイティブ」な仕事はどこにいったんでしょう。創造性やヒラメキはどこで必要になるんでしょう。
創造性やヒラメキは、
ルーチンワークを創造するところで必要になります。
つまり、こういうことです。
「あれをああして、これをこうして…よし、ここまでくれば、後はいつものルーチンワークだ!」
このように「いつものルーチンワークに落とすところ」に創造性が必要になるんです。たとえは少し変ですが、大きな魚をさばいて定型のパックを作るみたい。
本を書くときはいつもそうです。特に最初のうちは、自分が何をやろうとしているか自分でもよくわからない。どんな題材をどんな切り口でまとめれば一冊の本になるのか見当もつかない。ですから、
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