見出し画像

漢字とひらがなを使い分ける(文章を書く心がけ)

こんにちは、結城浩です。

この「文章を書く心がけ」のコーナーでは、文章を書くときに心がけたほうがよいことをピックアップしてご紹介します。

このページをお読みのみなさんの中には、文章を書き慣れていない方から、文章を書くプロの方まで、いろんな方がいらっしゃいます。

ですから、教科書的に一歩一歩進むような内容ではなく、結城が普段気をつけていることを中心にさまざまなトピックをお話ししようと思います。

さて、今日は「漢字とひらがなの使い分け」というお話をしましょう。

結城はときどき、他人の文章を校正することがあるのですが、そのときに思うのは、

 文章に慣れていない人ほど漢字を多用してしまう

ということです。

たとえば、あなたなら次のどちらを使いますか。

 「事」と「こと」
 「時」と「とき」
 「訳」と「わけ」

専門的な文章で表記法が定まっている場合は別として、通常のメールやブログでの文章では、一般的にいって、漢字よりもひらがなを使った方が読みやすくなります。

 彼女に会う時、食事の事を聞かなくては。
 彼女に会うとき、食事のことを聞かなくては。

ただし「事・時・訳にひらがなを使う」というのは、文章を書き慣れていない人に対するアドバイスであって、文章を書き慣れている人はこのことに縛られる必要はありません。

大切なのは、文章を書くときに、

 漢字を使っているか、ひらがなを使っているかを意識する

ところにあります。

漢字とひらがなの配分

結城は漢字とひらがなの配分をとても意識しています。それはなぜかというと、読者の目は漢字の上で留まり、ひらがなの上はさらっと流れていくと思っているからです。目が留まるところでは心も留まります。ですから、心に留めてもらいたい部分は漢字で書き、そうでない部分はひらがなで書くようにしています。

形式的な「こと」や「わけ」や「とき」を、「事」や「訳」や「時」のように漢字で書いてしまうと、そこの上で読者の目が留まってしまいます。それは望ましくない。だから、ひらがなを使うようにしているのです。

たとえば、目がふと留まる部分に「_」というマークを入れてみましょう。

 (1) _彼女に_会う_時、_食事の_事を_聞かなくては。
 (2) _彼女に_会うとき、_食事のことを_聞かなくては。

この二つを比べてみると、私は(2)の方が好ましいと思います。みなさんはどう思いますか。

使い方に悩む「方」

漢字で書いた方がいいのか、ひらがなで書いた方がいいのか、判断が難しい言葉もあります。たとえば、

 「ほう」と「方」

はどちらを使うべきでしょうか。

 仙台のほうへ行くのですか。
 仙台の方へ行くのですか。

これは判断が少し難しいです。

「方」は「ほう」と読む場合と「かた」と読む場合とがありますね。両方の読みが混ざっているとき、漢字を使うと一瞬混乱を起こします。

 待っている方は仙台の方へ行くのですか。
 待っている方は仙台のほうへ行くのですか。
 待っているかたは仙台の方へ行くのですか。
 待っているかたは仙台のほうへ行くのですか。

どちらを使う方が良いのかは、文脈や前後の漢字の密度に依存しそうですね。

統一すべきかどうか

結城は「数学ガール」シリーズという数学読み物を書いています。

シリーズの一冊を書くのに約一年かかりますが、その間ずっと、書く文章に登場するさまざまな単語に対して、

 「これはひらがなにすべきか?」
 「これは漢字にすべきか?」

と自問します。

表記はゆるやかに統一していますけれど、「この単語は絶対に漢字にする」のように厳密には定めていません。文脈と前後の漢字の密度によって変化させて、少しでも読者さんが読みやすいように、少しでも読者さんの誤解を減らすように表記に気を配っています。

私は、統一するかどうかが重要なのではなく、読者に読みやすく、混乱を避けることが重要だと思っています。ルールを統一することで、かえって文章が誤読されるのなら、ルールを少し変えた方がいいと思っています。

(ただし、それは自分の本のすべての表記法を自分で決められる仕事をしているからかもしれません。複数人でマニュアルを作る場合などは、表記法を統一しておかないと収拾がつかなくなるでしょうね)

今日お話しした「漢字とひらがなの使い分け」は、《読者のことを考える》という原則に通じています。

あくまでも「読者さんがどう読むか」に注意するのがいいのです。

今回の「文章を書く心がけ」は、

 「漢字とひらがなを使い分ける」

でした。また次回もお楽しみに!

結城浩のメールマガジン 2012年4月3日 Vol.001 より

※もしも、この文章を気に入ってくださったなら「オススメ」や「スキ」で応援していただければ感謝です。

質問はこちらからどうぞ。

結城浩はメールマガジンを毎週発行しています。

#結城浩 #文章を書く心がけ #執筆 #文章 #漢字とひらがなを使い分ける





いいなと思ったら応援しよう!

結城浩 / Hiroshi Yuki
あなたからいただいたチップは、本やコンピュータを買い、多様なWebサービスに触れ、結城が知見を深める費用として感謝しつつ使わせていただきます! アマゾンに書評を書いてくださることも大きな支援になりますので、よろしくお願いします。 https://amzn.to/2GRquOl