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「小さな目標」の「大きな意味」(教えるときの心がけ)

※ほぼ半分を無料公開しているノートです(結城メルマガVol.014より)

こんにちは、結城浩です。

「教えるときの心がけ」のコーナーです。

今日は「小さな目標」というお話をしましょう。

以下の文章では、便宜上「教師」と「生徒」という表現を使いますが、

 「教師」はあなた自身で、
 「生徒」はあなたが教える(指導する、しつける)相手、

だと思ってください。たとえば親が子に教えるなら教師は親、生徒は子にあたります。

「小さな目標」というのは、自分が教える相手に対して「目標を立てて実行させるとき」のコツです。

●目標を立てて実行させる

教師が生徒に何かを教えるとき、しばしば生徒に「何かを実行させる」という局面が発生します。

 ・(学校の教師が)生徒に問題集を解かせる
 ・(親が)子供に部屋を片付けさせる
 ・(会社の上司が)部下に書類を書かせる

こういうことはよくありますね。

教師は、生徒が指示に従って実行し、首尾良く物事が進むこと、あるいは生徒のスキルや経験がアップすることを期待します。

そのような「何かを実行させる」という局面では、

 「目標を立てる」

ということがとても大切になります。

「目標を立てる」というのは、たとえばこういうことです。

 ・(学校の教師が)生徒に問題集を解かせる際に……

  →「30分で5問を解く」という目標を立てる
  →「計算ミスをしないように検算をする」という目標を立てる
  →「前回よりも良い点を取る」という目標を立てる

 ・(親が)子供に部屋を片付けさせる際に……

  →「夕食までに本棚を片付ける」という目標を立てる。
  →「いらない雑誌を全部集めてひもで縛る」という目標を立てる。
  →「二学期以降使わないものは押し入れに入れる」という目標を立てる。

 ・(会社の上司が)部下に書類を書かせる際に……

  →「経緯を網羅したものを書く」という目標を立てる。
  →「明後日の〆切までに書く」という目標を立てる。
  →「ダメ出しが出ないようなものを書く」という目標を立てる。

このように目標の例を書き出してみると、すべて「当たり前じゃないか」と思うようなことばかりです。

しかし、そのような目標を「意識的」かつ「明示的」に立てるのが大切です。可能なら、生徒本人に立てさせることがベターです。

●目標とは?

目標とは、そもそも、

 「達成したかどうかが判定できるもの」

でなければなりません。

どんなに小さなものであっても、達成した/達成できなかったが判定できれば目標になりえます。

たとえば、

 ・目標「前回よりも良い点を取る」

  →前回は80点だったが、今回は85点だった。
   ということは…目標達成できた!

 ・目標「夕食までに本棚を片付ける」

  →夕食の時間になったが、本棚がぐちゃぐちゃのままだった。
   ということは…目標達成できなかった!

 ・目標「明後日の〆切までに書く」

  →〆切までに書けた。
   ということは…目標達成できた!

このようになるでしょう。

●ちょっと待ってよ

もしかしたら、

 ちょっと待ってよ。
 『〆切までに書く』っていうのは当たり前じゃん!
 そんな低レベルなことを「目標」っていうのは抵抗があるなあ…

と思われる方もいるかもしれませんね。

はい、実はそこからが今回の「小さな目標」というお話になります。

目標があるとないとでは、実行させるときの効果や励みが違います。ところでその目標というものは大きく分けて次の三つがあります。

 ・期待した品質が達成できたか?(クオリティ)
 ・期待した手間や費用で達成できたか?(コスト)
 ・期待した時までに達成できたか?(デリバリー、納期)

クオリティ・コスト・デリバリー。Quality-Cost-Delivery. この三つは頭文字をとって「QCD」とよく呼ばれます。

先ほどの「〆切までに書く」というのはデリバリー(納期)に相当しますね。もちろん、指示された書類を〆切までに書くというのは当然のことです。そしてそれを「目標」と呼ぶのは抵抗があるのも理解できます。 でも、

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