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「あなたの専門は何ですか」に答えるのが苦手です(Q&A)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです(結城メルマガVol.021より)

こんにちは、結城浩です。

「Q&A」のコーナーです。

読者さんからのご質問にお答えしています。

複数の方からの質問を一つにまとめる場合がありますのでご了承ください。また、質問は結城のほうで適宜編集させていただくこともあります。

●質問

結城先生、こんにちは。結城先生のメルマガはまったりとした内容で、読んでいる間はとても時間が流れるのがゆっくりで心地よい感じです。毎週火曜が楽しみです。

前々から結城先生に聞いてみたいことがあったので質問させてもらいます。

 質問:先生は「あなたの専門は何ですか」と聞かれてなんと答えますか?

実は、いま僕は大学院生でして、そろそろ就職の事を考えて、インターンシップのエントリーシートを書いているのですが、必ず、

 「あなたの専門分野を選んでください」
 (選択肢があってそれを選ぶ)

とか、

 「あなたの普段やっている研究に関して説明してください」

といった設問があります。

でも、僕はこれらに何と答えていいのかわからないです(選択肢の中にない・・・)。今まで、ひたすら自分の興味・関心をもとに首を突っ込んできたので、一体自分の専門がなんであるか自分自身不明です。

きっと、結城先生もそうなはず!と勝手に思い込み、質問させてもらいました。

いや、待てよ。「プログラミング」と「本を書くこと」です。と簡単に答えを返される気もする(汗)

ならば、

 「もっとも勉強した学問はなんですか?」

に質問を変えようかな…

●回答

結城メルマガのご愛読ありがとうございます。また、ご質問も感謝です。

確かにあなたのおっしゃるとおり結城も「自分の興味」のおもむくままに活動してきたので何が専門ですかと訊かれても困るかも。肩書きを尋ねられたりしてもけっこう困るんですよね。

勉強した学問というと、まあコンピュータサイエンスになるんでしょうけれど、コンピュータサイエンスの専門家といったら怒られそうな気もします。

以下、肩書きや専門について思うまま書きます。

専門を尋ねられるとちょっと困る。

では、困ったときにはどうするか。

 「相手のことを考える

という発想に立つと答えが見えてくるかもしれません。

つまりですね、そもそもどうしてこの人(自分に専門を訊いてくる人)は、自分の専門を訊いてくるんだろう、と考えてみる。

 「あなたの専門は何ですか」

この質問は、

 「あなたってどんな人ですか」

という質問を一段階だけ具体化させた質問といえそうです。

だから、相手に応じて答えが変わるのもアリだし、状況に応じて答えが変わるのもアリだと思います。

提示される「専門分野の選択肢」というのは、「あなたってどんな人なんですか」の第0次近似といえるんでしょうね。

その観点から結城を振り返ってみますと、私の「専門」は、

 ・コンピュータサイエンスや数学、
 ・コミュニケーションや教える・学ぶという活動(主に言葉を使うもの)、

が好きで、

 ・文章、特に本を書いて生計を立てている

ということになるんでしょう。

私自身は数学者ではありませんけれど、「数学の読み物や啓蒙書を書いています」とはいえます(事実そうですから!)。

さて、ここから少し一般論になります。

結城が思うに、学者さんの場合は「自分の書いた論文や著書のリスト」がその人の「専門」を物語ることになるでしょう。

学生さんの場合は「自分の読んだ本や論文のリスト」が、その人の「専門」(興味や関心)を物語るでしょうね。

執筆業を営む人の場合は、もちろん「自分の書いた文章(記事や書籍)のリスト」が、その人の「専門」(得意分野)を物語ることになるでしょう。翻訳書なども大切なお仕事ですね。

結城自身、自分の著作リストはとても大切に思っています。プログラミング言語の入門書や、暗号の本や、数学の読み物とばらばらのように見えますけれど、自分の中ではひとつのストーリーが感じられますしね。

そういえば、結城は知り合った方から「私はこういう仕事をしています」として書いたものを渡されることがときどきあります。本や、論文や、論文のプレプリントなどですね。そういうものを拝見すると、その人のお仕事における大切な部分が見えるように思います。名刺よりもその人を物語るのは間違いないでしょう。

あなたが大学院生ならば、「読んでいる(読んできた)論文や本のリスト」があると思います。そのリストは、あなたの「専門」をひとりでに物語っているのではないでしょうか。

「専門」の話とは少し変わりますが、大学院生なら、

 「あなたの普段やっている研究に関して説明してください」

については、ちゃんと答えられなくちゃまずいと思います。

「普段やっている研究」というのは最重要関心事ですよね。それについてはショートバージョン、ミドルバージョン、ロングバージョンの三種類くらいの説明ができるようでなくっちゃ!

ともあれ、インターンシップならびに今後の研究活動、がんばってくださいね。最近しみじみ思うのですが、時間は待ってくれません。時間は夢のように過ぎ去ります。ほんとうです。何年、何十年という時間もあっというまに過ぎ去ります。

「少年老い易く学成り難し」とはよく言ったものだと思います。

「いのち短し恋せよおとめ あかきくちびるあせぬまに」でもいいですが、とにかく貴重な時間を十分に生かしてほしいと思います。

ご質問ありがとうございました!

 * * *

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「あなたの専門は何ですか」に答えるのが苦手です(Q&A)

結城浩

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結城浩

書籍執筆者。著書に『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。http://bit.ly/hyuki-mm にて「結城メルマガ」をnote配信中。https://bit.ly/girlnote にてcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

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結城メルマガに寄せられたQ&Aです。

コメント4件

翻訳家みたいなので「説明家」って職種が欲しい。専門家ほど詳しくないけど、専門家より分かりやすく説明出来る人。
私も「何が専門ですか?」って聞かれて困ることが多いのですが、「相手のことを考える」という視点がストンと腑に落ちました。
RPGではあるまいし、職業が決まっていると決めつけるのもどうなんでしょう? 自分で作った職業名を「○○です」と言っちゃってもいいのではないでしょうか? まぁ、次に「それはどんなお仕事なんですか?」と聞かれるでしょうから、それにきちんと答えられなければいけませんが。それこそ結城さんの言う通り、ショート、ミドル、ロングくらいのバージョンで。
プログラマだと自分が得意な言語やフレームワークを列挙したりしますね。
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