文章を客観的に見る/リモートで教えているとぶっきらぼうに/大学一年、目標が定まらない/厳しい環境と成長する環境
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文章を客観的に見る/リモートで教えているとぶっきらぼうに/大学一年、目標が定まらない/厳しい環境と成長する環境

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2021年9月28日 Vol.496


目次

・自分の文章を客観的に見るにはどうするか - 文章を書く心がけ
・攻めの睡眠 - ショート
・リモートで教えていると、どうしてもぶっきらぼうな感じになってしまう - 教えるときの心がけ
・理由 - ショート
・大学一年生、目標が定まらず、継続した努力もできず、自分がこれからどう学べばいいのかわからない - 学ぶための心がけ
・駅の階段 - ショート
・厳しい環境と成長する環境


はじめに

結城浩です。

いつもご愛読ありがとうございます。

今回は、読み物のあいだに「ショート」というごく短い文章をいくつか挟んでみました。

Instagramのリール(Reels)、TikTok、それにYouTubeショート(YouTube Shorts)などからの発想です。

* * *

それでは、今週の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。

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自分の文章を客観的に見るにはどうするか - 文章を書く心がけ

質問

結城先生へ。

「文章作成」または「人に伝えること」について質問失礼いたします。

私は大学院生で、自然科学の一分野の研究を行なっています。近頃、ありがたいことに自分の研究を他者に伝える機会が多くなってきました(他者というのは、他分野でありつつも、たとえば「数学」くらいの大きなくくりでは同じ分野の研究者を想定しています)。

私の質問は「他者に自分の考え(具体的には研究内容など)を伝える」ことに関してです。

結城先生の『数学文章作法』を参考にし《読者のことを考える》という原則を守ろうと意識はしているのですが、なかなかうまくいきません。その理由は「自分の書いた文章を客観的に見ることの困難さ」にありそうです。特に、研究内容のように「自分の理解の最前線」にある内容については、ことさらに難しく感じます。

結城先生は文章を執筆する際に、どうやって文章を客観的に見ておられるのでしょうか。特に、内容が高度なものになってしまう際には、どのような工夫をされているのでしょうか。

長文、かつ抽象的な質問で申し訳ありません。

回答

有意義なご質問をありがとうございます。背景情報がきちんと書かれていたので、あなたの状況がたいへんよくわかりました。

あなたがおっしゃるように、自分の書いた文章を客観的に見る(読む)のは難しいことだと思います。同感です。

「文章を客観的に読む」とは、裏返して「文章を主観的に読まない」と表現してもいいでしょう。さらに「主観的に読む」とは「自分が書いた文章として読む」ことに通じます。

ということは「客観的に読む(主観的に読まない)」というのは、事実としてはたとえ自分が書いた文章だとしても、あたかも「どこかの誰かが書いた文章として読む」試みといえそうです。

そのような試みは、結城が『数学文章作法』の中に書いた《読者の帽子をかぶる》というたとえに通じるものがあります。自分はもちろんその文章を書いた著者なのだけど、いったん著者の立場から離れる(つまり、著者の帽子を脱ぐ)。そして、読者の立場に立つ(つまり、読者の帽子をかぶる)。その上で読むのです。

多様な視点

もちろんこれは「言うは易く行うは難し」の典型例といえます。著者の帽子を脱げと言われても、読者の帽子をかぶれと言われても、具体的にどうすればできるのさと言いたくなりますね。

しかしながら、人間とは不思議なものです。実際に《読者の帽子をかぶる》つもりになると、そのようになるのです。つまりですね、比喩としてではなく、身振り手振りで「帽子をかぶる」ジェスチャをするということです。

あるいは実際に、専用の《読者の帽子》を一つ具体的に用意して机のそばに置き、いざ読者の気持ちになって文章を読むときにはその帽子をかぶることにするのです。私自身はそこまでやったことはありませんが、よい試みであると思います。

「帽子を用意する」のが子供じみていると感じられるならば、自分がいつも書いている机や部屋から離れて「ここに座って読むときには読者モード」という特別な椅子や場所を決めておく方法もあります。まあ、いわば推敲部屋でしょうか。読者部屋でしょうか。それを用意しておくのです。

もともと場所を変えたり椅子を変えたり、読むデバイスを変えたりするのは、誤植や文章の乱れを見つける非常にいい方法です。なぜならば、そういったちょっとした変化によって、「少し違う自分」になることができるからです。

文章の品質を向上させるためには推敲して読み返すことが必須ですが、その際には複数の視点を持つことがとても大事になります。複数の視点で読み返すからこそ、思わぬ間違いや、思わぬ誤読の可能性を発見するわけですからね。複数人のレビューを受けるのは、まさにその「複数の視点」を得るためです。

「自分の文章を客観的に読む」というのは、「自分の中に複数の視点を持つ」というのにとても関係の深いことだと思います。自分の文章に大して、技術的な視点から、具体性の点から、網羅性の点から、他の項目との関連性から読むのですから。

熟知があだとなる

多様な視点とは別の話をしましょう。

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結城浩

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本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。