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逢はずして今宵(こよひ)明けなば春の日の長くや人をつらしと思はむ

#源宗于朝臣 (みなもとのむねゆきあそん) #古今和歌集 624 #jtanka #短歌

あなたと逢わないままでこの夜が明けてしまったなら、私は(春の日のように)長いこと、あなたをつれない方だと思うでしょうか。

「逢はずして」は「逢は+ず+して」。「逢は」は動詞「逢ふ」の未然形。「ず」は打ち消しを表す助動詞「ず」の連用形。「して」は接続助詞で「……の状態で」の意味。「逢はずして」は「逢わないという状態で」の意味。

「明けなば」は「明け+な+ば」。「明け」は動詞「明く」の連用形。「な」は完了を表す助動詞「ぬ」の未然形。「ば」は順接の条件を表す接続助詞で「……ならば」の意味。「明けなば」は「明けてしまったならば」の意味。

 「明けなば」の「な」は未然形なので、「ば」は順接仮定条件です。「もしも夜が明けてしまったならば」。つまり、まだ夜は明けていないことがわかります。これだけで「さあ、あの方は逢いにいったい来てくれるのかしら」というどきどき感が違う。「明けぬれば」のように「已然形+ば」だと、「ば」は順接確定条件で「夜が明けてしまったので」となり、まったく違う状況を表すことになります。

「春の日の」は「長く」の枕詞。通常、枕詞は訳出しない。

「長くや」は「長く+や」。「長く」は形容詞「長し」の連用形。「や」は疑問を表す係助詞で連体形で結ぶ(係り結び)。

「つらし」は形容詞「つらし」の終止形で「薄情な」「つれない」の意味。

「思はむ」は「思は+む」。「思は」は動詞「思ふ」の未然形。「む」はここでは推量・意志を表す助動詞「む」の連体形(係り結び)。

あわずして こよいあけなば はるのひの ながくやひとを つらしとおもわん

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