友人に数学を教えてもいいのか(教えるときの心がけ)
質問
高校三年生の男子です。
数学が好きです。よく友人に数学のことについて質問をされます。授業の内容や問題の解き方についてです。
自分が解ける問題については友人に解説をしているのですが、そのたびに「僕は人に教えられるほど数学を極めたのか」と思います。その場はそれで終わってしまうのですが、後からモヤモヤしてきます。
ただ一人の数学好きが相当熟練したわけでもないのに人に数学を教えることについて、どう思いますか。
結城浩のメールマガジン 2019年8月27日 Vol.387 より
回答
ご質問ありがとうございます。
結論から言いますと、そんなこと気にせずにどんどん教えましょう!
あ、いま「そんなこと」と書いてしまいましたが、あなたのモヤモヤする気持ちをないがしろにしているわけではありませんよ。
あなたは高校三年生、まさに数学を学んでいるわけですよね。人に教えるというのは非常に有効な学ぶ方法です。その学ぶチャンスを逃してはいけません。
人に教えるときには、自分がよく理解していなければいけませんよね。しかもそれを相手の理解度に合わせて伝えなければいけません。それは本当に勉強になることです。一回の説明で相手がわからなかったら、別の言い方にしたり、相手がどこで引っかかっているかを確かめたりする必要があるからです。
友人に教えることは、自分が学んでいる数学をいろんな角度から見直すことにつながりますし、その結果として自分の理解の弱いところが見つかることもよくあります。それは、あなたにとって大きな学びになるとは思いませんか。その学ぶチャンスを決して逃してはいけません。
ただし、人に教える際にやってはいけないこともあります。それは《わかったふりをする》ことです。誤解していたり、うっかり間違ったりすることは悪くありませんが、わかっていないことを自覚しながらわかったふりをするのはまずいです。それは注意してください。
教えているときに「そこは自分もわかっていない」や「そこは自分でもうまく説明できない」や「こう思うけれど自信がない」ということをきちんと言えるならば、どんどん教えましょう。
あなたは友人に数学の質問を受けるというのですから、あなたは教え方がうまいのかもしれません。だとしたら、自分の教え方を自覚しながら教えると、さらに効果は高くなるでしょう。あなたが教える効果と、あなた自身が学ぶ効果の両方です。
「十分熟練してから教えよう」という心がけは責められるものではありません。しかしながら、その発想はしばしば「まだダメだ、まだ教えるなんてできない、もっともっと熟練してから…」というまちがった発想に陥ることがあるのです。数学を極めてからではないと教えられないとしたら、誰も教えることはできなくなります。
質問されたならしっかり教える。教えることを自覚して教える。わかったふりをせずに教える。自分の理解を確かめ、さまざまな角度から点検し直すつもりで教える。それは、どれほど大きな学びとなることでしょう!
以上です。ご質問ありがとうございました。
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