子供に算数を教える(教えるときの心がけ)
小学生の息子に、私が算数を教えたときの話です。
先日、2008年に結城が小学生の息子に向けて作った「たのしい算数ノート」が出てきました。これは自分の息子のために結城が作った問題集です。
実際の画像の一部と共に、どんなことを考えて子供に教えたかをご紹介します。
※結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年3月5日 Vol.049 より
※購入すると電子書籍(epubとPDF)がダウンロードできます。
「たのしい算数ノート」について
最初に「たのしい算数ノート」について簡単にお話しします。
あるとき、家内が言いました。
あなたは読みやすくてわかりやすい数学の本を書く専門家なんでしょう? それなら自分の子供にもきちんと教えてくださいね。
ということで、子供に算数を教えることになり、まずは厚手の無地ノートを買ってきました。
・結城がノートに問題を書きます。
・子供がその問題を解きます。
・子供が解いている様子と解答を見て、結城が質問をします。
・子供が答えます。
そんなやりとりを毎日のように行いました。
このやりとりで、なんと、子供の算数の成績が急上昇しました!…なーんて報告ができれば格好いいのですが、特に目に見えた変化は起きませんでした。
ただ、子供は特に算数(数学)が嫌いになることもなく、成長したいまでも数学は好きで得意なようですね。実は結城はそれでほっと胸をなで下ろしています。「好きで学ぶこと」はとにかく身につきます。一生ものです。「いやいや学んだこと」はとにかく身につきません。
一般論として、親が子に教えるというのはとても、とても難しいことです。親は、他人に教えるよりも忍耐力が必要になりますし、子供もいやがることが多いものです。
さて、そんなところで、実際にノートを見てみましょう。
どんなときに0がつく? − 対話による探査
2008年の10月23日のノートです。
どんなときに0がつく?
ここでは、三つほど例を挙げて、
・どんな2つの数をかけると0がひとつつくのでしょう。
・また、どんな2つの数なら0がふたつつくのでしょう。
という問いかけをしています。
これはずいぶん難しい問いかけだと思います。この問いに対して子供は答えを書くことはできませんでした。
また、結城も(数学的に正確な)答えを書くことができるとも期待していませんでした。
結城がこのような問いかけをした目的は、数というものについて子供がどのような感覚を持っているか、どういうことは理解していて、どういうことは理解していないかを探るためでした。
記録は残っていませんけれど、この一問を使って子供といろいろ「おしゃべり」をしたはずです。
子「0がつくのは10をかけたとき?」
親「でも、2×5では10をかけていないよ」
子「だから、かけたときに10ができればいいんだよ」
親「10ができるってどういうこと?」
子「2とか5をかけたとき」
このようなやりとりをしながら、子供の力を探ろうとしていたようです。たとえば、以下のようなことです。
・基本的な九九ができているかどうか
・掛け算で数を作れるか
・数を掛け算に分解できるか
・素因数分解を(用語は知らなくても)概念として理解しているか
・素因数の個数に意味があることを見抜けるか
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