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本を届けてください

結城が書いている「数学ガール」には「ポリアの問いかけ」がよく出てきます。これは数学者ポリアが『いかにして問題をとくか』という本に書いた「私たちのリスト」をもとにしているもので、問題を解くための手がかりとなる問いかけや指示のことです。

  • 「定義にかえれ」

  • 「与えられているものは何か」

  • 「求めるものは何か」

このような問いかけは数学の問題を解く際にきわめて有益です。実際、これらは数学に限った話ではなく、考えることの本質に迫る問いかけだと思います。

「ポリアの問いかけ」は「数学ガールの秘密ノート」シリーズに頻繁に登場します。その理由はたくさんあります。

  • この問いかけが学びにとって大事であること。

  • 問いかけと答えが、数学ガールのような「対話」にとって根源的な要素であること。

  • そして、問いかけが、プラクティカルであること。

どんな問題に出会っても、

  • 「定義にかえれ」

  • 「与えられているものは何か」

  • 「求めるものは何か」

という問いかけが無駄になることはありません。たった一人で問題に立ち向かうときでもそうです。この問いかけは、問題に直面している私たち一人一人が「自分」に対して行うもの。自分への問いかけなのです。

数学的な話に限らず、現実的な「悩み」にぶつかったときにも有効です。もやもやと困っているときに、ポリアの問いかけを思い出して、

「いったい私が求めるものは何だろうか」

と問いかけたり、

「うーん。自分に与えられているものはなんだろう」

と問いかけたり。

それは、悩みに対するプラクティカルな方策につながっていくはずです。

私は、だから、現代を生きる人(特に若い人)に向けて、これらの「問いかけ」を送りたいと思っています。ポリアが書いたものであって、私が考えたものではありません。しかし、私は「仲介者」であり「注解者」です。大切なことをわかりやすく伝えるのが私の仕事ですから。

「数学ガール」では、『いかにして問題をとくか』という本の内容を、数学において《実践》しようとしている子たちが描かれています。学ぶこと。知ること。伝えること。困難に出会ったときになんとか対処すること。そのような姿を描こうとしています。

結城はときどき読者さんから、

「この本に、もっと若いころに出会いたかった」

というメールをいただきます。すべてに返信はできないのですが、返信できるときには、

「あなたの最善のタイミングで出会えたのだと思います」

と伝えるように心がけています。

でも、やはり、私の非力も思います。

もしも、あなたのそばに、結城の本を楽しめそうな方、必要としてくださる方がいましたら、ぜひご紹介やご案内をお願いします。結城の本を必ずしも買わなくても構いません。持っている本を貸してあげたり、図書館を紹介したり。

何らかの形で、結城の本が、必要としている人に届くことを願っています

結城は、本を書くときにはいつも「たった一人のあなた」に向けて書きます。自分の書く本が、この本を必要としている「あなた」に届くことを願いながら。

本は手紙です。「あなた」にあてて書いた手紙。残り少ない時間と、できる限りの自分の知恵をかき集め、大切な「あなた」に届ける手紙です。

私には、書くことはできる。でも届けることは難しい。とても難しい。ネットにもつながっておらず、もちろん結城のTwitterアカウントなんて知らない、そのような人に私の本を直接知らせたり届けたりすることはできません。 どんなにがんばっても、結城にはできない。

でも、もしかしたら、あなたにはできるかも。

結城の本を必要としている人に、私の本を伝えるお仕事。

あなたにお任せします。よろしくお願いいたします。

結城浩のメールマガジン 2016年1月26日 Vol.200 より

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