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書籍をPDFに変換する「自炊」で「失敗した!」ということはありませんか(Q&A)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。

こんにちは、結城浩です。

「Q&A」のコーナーです。

質問の文章は結城が編集する場合があります。また複数人の質問を一つにまとめる場合もあります。ご了承ください。

●質問

結城メルマガで「自炊」についての話題が上がっていました。自炊の体験談は参考になります。

最近、本棚がいっぱいになってきて、手持ちの雑誌だけでも自炊しようかと思案しています。

自炊したファイルをiPhoneやパソコンなどで読む場合、結城さんはどのようなアプリを使っているんでしょうか。紙の雑誌や本を裁断してしまうことに抵抗はありませんか。それから、紙をPDFにしてしまうことで作業効率や理解度はどうでしょう。

PDFにしてしまって「失敗した!」ということはありますか。

●回答

ご質問ありがとうございます。「自炊」についてのいろいろな質問を感謝します。順番にお答えしていきますが、まずは基本的な情報から。

●結城の自炊

結城は数学の本・プログラミングの本・漫画・小説などを主に自炊(裁断しスキャナでPDF化)しています。雑誌も自炊していますが、それほど冊数はありません。

主に自分でScanSnapというスキャナーを使ってPDFに変換し、OCRの処理を行って検索ができるようにしてあります。BOOKSCANという自炊代行サービスでのスキャンは合計179冊で、それを含めて合計約800冊の自炊したPDFを持っています。

 ◆BOOKSCAN
 http://bookscan.co.jp/

●使っているアプリについて

結城は、自炊したPDFを主に以下の二通りの方法で読んでいます。

 ・ノートパソコン(MacBook Air 13インチ)
 ・iPhone 5S

ノートパソコンで読む場合、使っているアプリは以下のもの。

 ・プレビュー.app
  (PDFを読むため、マーカーで印つけるため)
 ・Evernote
  (画面のスクリーンショットをEvernoteに保存するため)
 ・Dropbox
  (スキャンしたPDFはすべてDropboxに入れてあります)

iPhoneで読む場合、使っているアプリは以下のもの。

 ・GoodReader 4
  (iPhoneの定番アプリ。PDFを読んだり、マーカーで印つける)
  (DropboxからPDFを持ってくることもできる)

GoodReaderは非常にスグレモノのアプリです。ほとんどこれ一つで必要なことはできてしまいます。以前はiAnnotateというアプリを使って朱入れをしていたのですが、現在はGoodReaderだけですべてを行います。最近 GoodReader 4にバージョンアップしました。

 ◆GoodReader 4
 https://itunes.apple.com/jp/app/goodreader-4/id777310222?mt=8

●裁断に抵抗はないのか

自炊する場合には、紙の本を裁断する必要があります。結城は手でガシャンとやる裁断機(断裁機)を購入して使っています。便利なのですが、けっこう場所を取るのが難点です。

自分の持っている紙の本を裁断することに最初は非常に抵抗がありました。「こんなこと、やっていいんだろうか」という心理的抵抗ですね。でも、何冊か裁断しているうちにその抵抗はまったくなくなりました。よく読む本、繰り返し読む本ほど、購入して即裁断しています。

確かに、思い出がある本はなかなか裁断できません。悩ましいところなのですが…紙は何年も経つうちに変色してぼろぼろになっていきますよね。でも、スキャンしてPDFになった本はぼろぼろになることはありません。だから、思い切って裁断してしまったほうがある意味「長持ち」するともいえます。判断は難しいです。

●作業効率や理解度

紙とPDFを比較したとき、ぱらぱらっとブラウズするのは、紙のほうが圧倒的に便利です。ぱらぱらっと見て「ああ、だいたいこういうことが書いてあるんだなあ」と全体を把握するのは紙が便利だということです。

それに関連して、最近結城は「PDFを全ページめくる」というワザを試しています。キーを操作し、ペラ・ペラ・ペラ…とすべてのページをめくっていくのです。文章を読むのではなく、リラックスしてただページを眺める。これを行うと、紙をぱらぱらっとめくるのと似た効果があるようです。なんというか…その本の全体像を把握したぞ!という感覚でしょうか。(まだ試行錯誤中です)

一方、紙よりもPDFのほうが便利なことはたくさんあります。

 ・何百冊もの本を常時携帯できる(最大のメリット!)
 ・検索ができる(これも重要!)
 ・自動的に「最後に見てた所」を記録してくれる
  (PDFを開くと自動的に「前回の続き」がさっと読める)
 ・自動的に「最近見た本の一覧」が作れる
  (GoodReaderでPDFを探すときに
  「最近読んだ本」「最近追加した本」などの情報が利用できる)

もともと、結城はディスプレイに向かって文章を読むこと自体には抵抗がないので、ディスプレイで本を読むことにも大きな抵抗はありませんでした。

年齢のせいか、最近目が悪くなってきたので、文字を拡大して読めるPDFのほうが読みやすいくらいですね。

結城は、絶対に紙でなくちゃいけない、というこだわりはあまり意味がないと思っています。紙とPDFはそれぞれに一長一短あるのです。

●失敗したことは?

自炊して失敗した!と思ったことはまだありません。

あ、強いていえば「マンガの見開きページ」を無造作に裁断してしまったため、2ページがうまくつながらなくなってしまったことくらいですかね。見開きの真ん中がなくなっちゃったのです。

心配しているのは、今後、高解像度のデバイスが登場したときに、現在持っているPDFの解像度では荒すぎて「汚い本」になってしまう点ですね。まあ、そのあたりは「とにかく現在PDFでガシガシ読める」こととのトレードオフだと思って割り切っています。

仕事で使う本は、PDF化しておいて良かったと思うことの方が多いです。本が増えれば増えるほど、その思いは強くなります。家の中だろうが、マクドナルドだろうが、自分の仕事の資料に常時アクセスできる魅力には勝てません。

以上、自炊に関して、ご質問にお答えしました。

何かの参考になればいいのですが。

もしも「こういう点はどうですか?」という追加質問がありましたら、お気軽にどうぞ!

 * * *

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※Photo by webtreats.
https://www.flickr.com/photos/webtreatsetc/5972016444/

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