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振り返る習慣(仕事の心がけ)

私たちは、一日の仕事が終わって「今日はどんな仕事をしただろうか」と振り返ります。

あるいは一週間の仕事が終わって「今週はどんな仕事をしただろうか」と振り返ります。

GTDなどをやっている人は「日次レビュー」や「週次レビュー」を思い浮かべるでしょう。

何にせよ、自分の仕事を折に触れて「振り返る」ことは重要です。振り返ることによって、仕事をよりよい方向に進めていくことができます。

どんな仕事をする人でも、どんな活動をする人でも、よりよい方向に進みたいと願う人は、

 「振り返る習慣」

を身につけることが必須といえます。

それは車の運転にも似ています。自分がどっちに向かっているかをよく見て、自分がほんとうに向かいたい方向にハンドルを調整する。その行為がなければ、向かいたい方向には進めませんよね。

「振り返る習慣」がないというのは、目を閉じて車を運転するようなものです。

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車の運転の例を持ち出して、話を大げさにしてしまいました。でも「振り返る習慣」というのは、ほんのちょっとしたことですし、いますぐにできることです。

たとえばメールを書くこと一つでも「振り返る習慣」は生きます。メールを書き終えた、書き終えたからすぐに送信!ではなく、いったん振り返るのです。書き終えたメールを読み返すこと。これも立派な振り返りですよね。そして振り返ったとき、自然に心に浮かぶ問いがあります。

 「えっと、今回のメールは、これでいいんだっけ?」

自分の心に自然に浮かぶこの問いかけに答えること。これが自分の活動をよりよい方向に向けるきっかけとなります。

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一つの作業から別の作業に移るときも「振り返る習慣」は生きます。

一つの作業を終えました。終えたから次の作業を開始しよう!ではなく、いったん振り返るのです。

 「えっと、今回の作業は、何をやったっけ?」

と自分に問いかけます。そうすると人間の心はそれに答えようとします。それが大事です。

その振り返りを書き留める必要があるかどうか、専用のツールに記録する必要があるかどうか、それは場合によります。書き留めるためには時間も手間も掛かりますからね。

でも、「何したっけ」と考えるだけなら数秒で済みます。お金も掛かりません。手間も掛かりません。大事なのはその「振り返る習慣」です。振り返るという行為そのものがまずは重要なのです。

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余談です。

仕事を「振り返る習慣」という表現は、よく考えてみると比喩の一種ですよね。身体をくるりと動かして振り返るようすを、自分の記憶や記録を見返すことの比喩として使っているわけですから。

比喩ではなく、身体的に「振り返る習慣」というのも大切です。

結城はカフェで仕事をすることがよくあります。席を立って帰るときには必ず「振り返る」ようにしています。それによって忘れ物を防ぐことができるからです(当然ながら)。

もちろん、帰りしたくをするときに、忘れ物のないようにカバンに入れるのは大事です。パソコンは入れた、モバイルルータは入れた、iPhoneも入れた、資料もケーブルも入れた……と忘れないことは大事。でも、いざ席を立って、「振り返る」ことさえすれば、忘れ物をしているかどうかは一目瞭然です。時間も数秒しか使いません。

「振り返る習慣」は重要なのです。

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「振り返る習慣」の話をすると、「確かに大事ですね」という人と「振り返る時間がもったいない」という人がいます。

振り返る時間がもったいない」という人の主張は、「振り返りなんかやっている暇があったら、その時間を少しでも実作業に向けた方がいいんじゃないか。ただでさえ時間がないんだから」ということです。でもそれは、大きな勘違いです。

コンピュータのアルゴリズムで高速化を行うときに行う、「枝刈り」という重要な考え方があります。大量のデータを探索しようというとき、「ここは探索する必要がない」という大きな部分を見つけて、そこをばっさりスキップします。これが枝刈りです。

枝刈りを行うと、掛かる時間が一気に数百分の一になることがあります。掛かる時間が数百分の一になるなら、枝刈りすることができる大きな部分を見つけるために時間を使うのは、決して無駄なことではありません。

実生活でも同じことです。たとえ「振り返る」ための時間が多少掛かったとしても、それによってミスを減らして仕事の品質を向上させたり、将来の無駄な作業を減らすことができたなら、十分にペイするでしょう。

正直いいますと、結城も仕事で焦っているときほど、振り返る時間が惜しくなります。「振り返る時間があったら、作業した方がいい」と考えてしまいがち(そのような状態を「焦っている」というわけですが)。

でも「作業している時間を多少使ったとしても、振り返る時間をきちんと取ったほうがいい」というのが正しい態度です。

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結城メルマガでは何回か、「管理者モード」と「作業者モード」の話をしてきました。「振り返る」というのは、作業者モードから離れ、管理者モードになることに相当するといえるでしょう。

仕事に忙しい人ほど、〆切が厳しい人ほど、振り返りを大切にすることをお勧めします。そして、振り返りを自然に行うには習慣化するのが一番

「振り返る習慣」について、ぜひ考えてみてください。

結城浩のメールマガジン 2017年3月7日 Vol.258 より


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