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cakesクローズのアナウンス/作業ログからの経験則/良い文章を書く/成績を上げてまわりを驚かせたい/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2022年7月26日 Vol.539


はじめに

こんにちは、結城浩です。

新刊のアナウンスです!

『数学ガールの物理ノート/波の重ね合わせ』が2022年9月に刊行になります!

◆『数学ガールの物理ノート/波の重ね合わせ』(2022年9月刊行)

これは、いまからちょうど一年前になる2021年7月に刊行された『数学ガールの物理ノート/ニュートン力学』に続く、「数学ガールの物理ノート」シリーズの第二作目になります。

◆『数学ガールの物理ノート/ニュートン力学』(2021年7月刊行)

これでようやく「数学ガールの物理ノート」を胸を張って「シリーズ」と呼べます。何しろ一冊だけではちょっとシリーズとは言いにくいですからね。

今回のテーマは「波」で、内容としては高校で学ぶ物理学の範囲が主になりますが、三角関数の基本的な理解を深めたり、最終章ではフーリエ展開の話題に踏み込んだりして、広がりのある内容になっています。どうぞご期待ください!

『波の重ね合わせ』刊行予定をTwitterでアナウンスしたのが2022年7月21日で、たくさんの読者さんから応援メッセージをいただき感謝です。

今回の『波の重ね合わせ』は、結城が執筆した本の「60冊目」になります。1993年以来ずっと本を書き続けてくることができたのは、ひとえに継続して応援してくださる読者さんがいらっしゃるからです。ありがとうございます!

◆結城浩の書いた本一覧(PDF)
https://www.hyuki.com/pub/pubs.pdf

2022年7月23日には『波の重ね合わせ』は、アマゾンの物理学の新着ランキングで第1位になりました。さっそくのご予約&応援に感謝です!

刊行までにやることはまだまだたくさんあります。がんばっていきますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。

* * *

それでは、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。

今回から「数学ガールのお引っ越し」にまつわるあれこれを書きながら「ネットで文章を書いていく」ことについて考えたいと思います。今回は「cakesクローズのアナウンスで考えたこと」です。


目次

  • 作業ログを書いて得られる経験則 - 仕事の心がけ

  • 異性と「オタ活」していると、告白されてしまい困惑

  • 何を読めば良い文章が書けるようになるか - 文章を書く心がけ

  • 誰にも頼らず成績を上げてまわりを驚かせたい - 学ぶときの心がけ

  • cakesクローズのアナウンスで考えたこと - 数学ガールのお引っ越し


作業ログを書いて得られる経験則 - 仕事の心がけ

結城は毎日仕事を進めながら「作業ログ」を書いています。

作業ログを書いていて得られる経験則はたくさんありますが、たとえば次の三点は代表的なものです。

  • 「これは大事な事柄だから絶対忘れない」と思っても、きれいさっぱり忘れる。

  • 「これは簡単な作業だから一瞬でできる」と思っても、一瞬ではできない。

  • 「これは些細な変更だからトラブルにならない」と思っても、トラブルになる。

どれほど大事な事柄でも、きれいさっぱり忘れます。見事に忘れます。ですから、大事な事柄こそちゃんと記録に残さなきゃ失敗します。良い習慣を身につけようと決心しても、その決心そのものを忘れてしまいますから、習慣づけする仕組みを作らなきゃ駄目です。たとえば機械の助けを借りて自分にリマインドする。そうしないと習慣付けは不可能です。

どれほど簡単な作業でも、一瞬ではできません。作業のためにはちゃんと時間を確保しなきゃいけません。またどんなに簡単な作業でもうまくいかない場合があります。そういうときにリカバーする時間や、作業の途中で新たな作業に気付いた場合の時間も考える必要があります。

どんなに些細な変更でも、変更は変更です。変更があるということは、予想外のことが起きるものです。新しいものは、うまく動きません。初めてのことは、時間が掛かります。自分の目には小さな変更に見えても、システムにとってはとんでもなく大きな変更になっていることがあります。

「とほほ……」と言いたくなる三点を一気に書いてきましたが「作業ログ」をつけていると、このような「とほほ」がよく起きることがわかります。

* * *

結城が「作業ログ」を書くときには10分〜2時間くらいの単位で「やったこと」を記録するようにしています。自分の「予定」よりは「実績」を中心に書いています。予定や希望は「忘れないはず」「一瞬でできるはず」「トラブルにならないはず」と考えがちですけれど、実際にはウソになることも多いでしょう。それに対して、実績はウソをつきません。

一時間でここまで進むだろうと思う。でも進まない。一日あればこのくらいできるだろうと思う。でもできない。一週間でこのくらい書けるかなと思う。でも書けない。「実績」という名の作業ログを日々書いていると、自分の現実的な生産性がよくわかります。

* * *

しかしながら、作業ログを通じて自分の「実績」を毎日見ていると、楽観も悲観もしなくなってきます。これだけの時間でここまで進むだろうと思っても、そこまでは進みません。進みませんが、いつもの「実績」くらいは進んでいることが多いものです。自分の期待ほどは進捗しない。でも、自分のふだんの実績ほどは進捗します。本当に、実績はウソをつかないのです。

自分がふだんできるレベルのことは、できる。ふだんの進捗と同じ進捗は、ある。ふだんの実績と同じような実績は、得られる。何しろそれが「ふだんの実績」なのですから。進捗ダメですというのは、自分の期待や希望的観測とずれているだけです。

作業ログを日々書いていると、ウソを付かない自分の「実績」を学びます。自分の「ふだん」を学びます。ですから、期待したほど進まなくてもめげない。希望ほど進まなくてもあせらない。淡々と「実績」を記録し、淡々と時間を確保して作業を続ける。

自分が書く作業ログは重要です。世の中のどんなノウハウ本にも一般的な事項しか書いてありません。でも、自分が書く作業ログを読み返すと、自分の実績が生のままそこに残っています。自分の「ふだん」を知ることで、これから先の「ふだん」の自分に起きることがわかる。自分の過去を見ることで、自分の未来を予測できる。

  • 自分のふだんの実績で、等身大の自分を知ることができる。

それは、作業ログを書いていて得られることのうち、もっとも大切なものの一つです。

「結城浩の作業ログ」は2020年から、ひと月200円で購読できるようになっています。Web連載が新サイトに引っ越してからは、ひと月500円でさらにWeb連載「数学ガールの秘密ノート」読み放題の特典も付きました。いつもご支援ありがとうございます。

◆結城浩の作業ログ



異性と「オタ活」していると、告白されてしまい困惑

質問

私は20代前半の女性です。10代から、友人とよく一緒に「推し」のことを語り合ったり、イベントに参加したりといった「オタ活」をしています。とてもありがたいことに、私とオタ活してくれる友人はたくさんいて、一緒にいてとても楽しいです。

ところで、その友人の中には異性が何人かいたのですが、ここ数年でほぼ全員と疎遠になってしまいました。疎遠になるきっかけは「告白」です。一緒にオタ活しているうちに私のことを好きになってしまったと言われます。こんなことを言うと「私モテますアピール」みたいで嫌なのですけれど、

 「異性の友人ができる」→「何度も共にオタ活をする」→「告白される」

というのがまるでテンプレみたいになってきています。

正直なことを言うと、私は楽しくオタ活できたら誰でもいいんです。性別なんてどうでもいいですし、気にしたこともありません。男女の友情だってあると思っています。

しかしこうなっている以上、今後異性とのオタ活は控えるべきなのでしょうか。告白されるたびにそれを断るのも申し訳ないですし、オタ活友達を失うのも悲しいです。

結城さんのご意見も参考にお聞きしたいです。

回答

詳しく書いてくださったので、あなたの状況はよくわかりました。

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